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106万円の壁(社会保険適用拡大)

106万円の壁(社会保険適用拡大)

ひゃくろくまんえんのかべ(しゃかいほけんてきようかくだい)

監修:平康慶浩(セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役|グロービス経営大学院客員准教授。人事コンサルタントとして30年以上、等級・報酬・評価制度の設計に携わる)

106万円の壁とは、短時間労働者が厚生年金・健康保険の加入対象となる賃金基準(月額8.8万円・年収換算約106万円)を指す通称である。 2025年成立の年金制度改正法によりこの賃金要件は撤廃され、2026年10月からは、対象企業で週20時間以上働く短時間労働者は年収にかかわらず原則として社会保険に加入する。

背景・時事文脈

配偶者の扶養の範囲内で働くパートタイマー等が、社会保険料の発生を避けて就業時間を抑える「就業調整」の一因として、106万円の壁は長く問題視されてきた。

2025年6月成立の年金制度改正法は賃金要件を撤廃し、企業規模要件(現行51人以上)も段階的に縮小して2035年10月にすべての企業を対象とする。

厚生労働省の試算では約200万人が新たに加入対象となる見込みである。

2026年10月の施行を前に、労使双方で保険料負担と手取りへの影響の試算が進んでいる。

人事制度設計上の論点

適用拡大は、扶養を前提としてきた報酬設計全体の見直しを迫る。

第一に、家族手当の論点である。

配偶者の収入基準を支給要件とする配偶者手当は、就業調整の誘因として機能してきた面があり、子ども対象への再配分や廃止を含めた再設計の検討対象となる。

第二に、パート・アルバイトの賃金制度である。

社会保険料の本人負担で手取りが減る層に対し、労働時間の延長と処遇改善(時給・等級制度の整備)をセットで提示できるかが、人手確保の分岐点となる。

短時間労働者にも等級と昇給の仕組みを持つ企業ほど、加入をキャリア形成の入口として説明しやすい。

第三に、事業主負担の保険料増を織り込んだ要員計画・人件費計画の見直しが必要になる。

個別の加入判定や保険料の扱いについては専門家への確認が必要である。

より深く読む

扶養モデルを前提とした手当設計の見直しについては、平康慶浩による論考『給与項目の今昔「家族手当」 — 扶養モデル終焉後の、公正性の設計』で詳しく解説している。