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ベースアップ/定期昇給

ベースアップ/定期昇給

べーすあっぷ/ていきしょうきゅう

監修:平康慶浩(セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役|グロービス経営大学院客員准教授。人事コンサルタントとして30年以上、等級・報酬・評価制度の設計に携わる)

ベースアップ(ベア)とは、賃金表(賃金水準)そのものを引き上げる賃金改定であり、定期昇給(定昇)とは、既存の賃金表の枠内で年齢・勤続・評価に応じて個人の賃金が定期的に上がる昇給である。 前者は全体の水準の底上げ、後者は個人の位置の移動であり、両者は昇給原資の性格が異なる。

背景・時事文脈

物価上昇を背景に、日本の春闘は高い賃上げ水準が続いている。

連合の2026年春季生活闘争の最終集計では、定昇相当分を含む賃上げ率は加重平均5.01%(月額16,400円)と3年連続で5%を超え、300人未満の中小組合でも4.69%となった(出典:連合・2026年7月発表)。

春闘の「賃上げ率」は定昇分とベア分の合算で語られることが多く、実際の水準底上げ(ベア)分がどれだけかを区別して読む必要がある。

ベアの定着に伴い、賃金表を毎年書き換える運用負荷や、一律ベアが低評価者にも及ぶ構造への問題意識も広がっている。

人事制度設計上の論点

ベアと定昇の「二本立て」は、インフレ下で構造的な限界を迎えつつある。

第一に、一律ベアの論点である。

ベアは評価にかかわらず全員に適用されるため、ベア額が大きくなるほど高評価者と低評価者の昇給差は相対的に縮小し、評価と報酬の連動が薄まる。

第二に、原資決定の論点である。

ベア率を世間相場の「率」で先に決めるのではなく、市場水準・物価・業績から昇給原資の総額を決め、評価と給与水準の位置に応じて個人へ配分する一本化された年次給与改定(メリットマトリクス型)への移行が検討される。

第三に、定昇の中身の点検である。

定昇が年齢・勤続に強く連動している場合、それは年功カーブの自動再生産であり、等級・評価に基づく昇給への組み替えが賃金カーブ再設計の中心となる。

第四に、春闘相場への対応を毎年の判断とせず、初任給・最低賃金・市場相場と連動した等級レンジの更新ルールとして制度化するという論点がある。

より深く読む

賃上げの基準を率で決めることの問題と原資配分の設計については、平康慶浩による論考『賃上げの基準を「率」で決めてはいけない|原資と配分の経営判断』で詳しく解説している。