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人的資本開示(開示府令)

人的資本開示(開示府令)

じんてきしほんかいじ(かいじふれい)

監修:平康慶浩(セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役|グロービス経営大学院客員准教授。人事コンサルタントとして30年以上、等級・報酬・評価制度の設計に携わる)

人的資本開示(開示府令)とは、有価証券報告書等において企業の人材に関する方針や指標の記載を求める、金融庁の「企業内容等の開示に関する内閣府令」に基づく開示制度である。 サステナビリティ情報としての記載に加え、「従業員の状況等」における記載事項が定められている。

背景・時事文脈

2023年3月期の開示から、人材育成方針・社内環境整備方針、および女性管理職比率・男性育児休業取得率・男女間賃金差異が記載対象とされてきた。

2026年2月20日、金融庁は開示府令等の改正を公布し、①経営方針・経営戦略等と関連付けた連結ベースの人材戦略、②その人材戦略を踏まえた従業員の給与等の額および内容の決定に関する方針、③平均年間給与の対前事業年度増減率、の3項目を新たに義務化した。

いずれもサステナビリティ情報とは別に「従業員の状況等」へ記載する。

適用は2026年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等からとされている。

人事制度設計上の論点

第一に、報酬決定方針の言語化である。

「給与等の額および内容の決定に関する方針」の記載は、等級制度と賃金テーブルの設計思想を、外部の読み手に説明できる形へ整理することを求める。

第二に、経営戦略と人材戦略の接続である。

目指す人材ポートフォリオを等級構成や要員計画に落とし込めていなければ、開示は理念の列挙にとどまる。

第三に、平均年間給与の増減率が毎期の外部指標となる点である。

賃上げ原資の配分判断が開示と連動するため、総額人件費の管理方針と、基本給・賞与への配分の考え方を、開示上の説明と矛盾しない形で設計する検討が必要になる。

加えて、連結ベースでの記載が求められることから、国内外のグループ会社で等級体系や報酬水準が分かれている場合、どの範囲を一体の人材戦略として語るのかという整理も要する。

開示の単位と人事制度の適用単位が食い違えば、記載内容の説得力は下がる。

より深く読む

開示指標の背景にある取締役会・経営層の多様性については、平康慶浩による論考『女性活躍の歴史から考える取締役会ダイバーシティ』で詳しく解説している。