人的資本可視化指針
じんてきしほんかしかししん
監修:平康慶浩(セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役|グロービス経営大学院客員准教授。人事コンサルタントとして30年以上、等級・報酬・評価制度の設計に携わる)
人的資本可視化指針とは、人的資本に関する情報開示のあり方について、内閣官房・金融庁・経済産業省が示す実務指針である。 開示項目を一律に定める基準ではなく、経営戦略と人材戦略の関連付けをどのように投資家へ説明するかという考え方と枠組みを整理したものである。
背景・時事文脈
初版は2022年8月、内閣官房の非財務情報可視化研究会が公表した。
その後、2026年3月期からの経営戦略と関連付けた人的資本開示の義務化を受け、2026年3月23日に内閣官房・金融庁・経済産業省が「人的資本可視化指針(改訂版)」を公表した。
改訂版は、経営戦略と人材戦略・人的資本投資の連携について、国際的な基準を踏まえた考え方を示すものである。
併せて、戦略的な人的資本開示に関する補足資料と、経営戦略と人材戦略を関連付けた開示の事例が公表された。
人事制度設計上の論点
第一に、指針は開示のための指針であって制度設計の手順書ではないという理解である。
可視化の要請から逆算して指標を並べると、自社の戦略と無関係な数値管理が増えるおそれがある。
第二に、指標と等級・評価制度の接続である。
人材育成や次世代リーダーの確保を開示上の重点に置くのであれば、等級要件や昇格基準の側に育成の道筋が定義されていなければ、開示指標は実態を伴わない。
第三に、人的資本投資の額を開示する場合、教育研修費や採用費をどこまで人件費に含めて捉えるかという定義の問題が生じ、総額人件費管理の枠組みと整合させる検討が必要になる。
第四に、指標の継続性である。
可視化した指標は年度をまたいで比較されるため、途中で定義や集計範囲を変えると改善の有無を説明できなくなる。
人事情報システムからどの粒度でデータを取り出せるかを先に確認し、等級別・職種別・年齢層別といった内訳で継続的に追える形へ整えておくことが、開示と制度運用の双方にとって現実的な出発点となる。
より深く読む
人的資本情報の国際規格に沿った開示の考え方については、平康慶浩による連載『ISO30414導入の基礎知識』で詳しく解説している。