育成就労制度
いくせいしゅうろうせいど
監修:平康慶浩(セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役|グロービス経営大学院客員准教授。人事コンサルタントとして30年以上、等級・報酬・評価制度の設計に携わる)
育成就労制度とは、技能実習制度に代わるものとして創設された、外国人材の受入れに関する新たな在留制度である。出入国管理及び難民認定法および外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の改正によって創設され、一部の規定を除き2027年(令和9年)4月1日から施行される。
背景・時事文脈
制度の根拠法は2024年(令和6年)6月21日に法律第60号として公布された。
施行日は一部の規定を除き2027年(令和9年)4月1日とされている(出入国在留管理庁「育成就労制度の制度概要・関係法令」)。
制度の運用に関する詳細は、基本方針・分野別運用方針・運用要領として順次示される(出入国在留管理庁「育成就労制度」、育成就労制度Q&A)。
技能実習制度が国際貢献を目的として位置づけられていたのに対し、育成就労制度は人材の育成と確保を制度の目的として明確にした点が、実務上の最も大きな変化である。
受入れの建前と実態の乖離が解消されることで、外国人材を人事制度の中にどう位置づけるかという問いが正面から問われることになる。
人事制度設計上の論点
この制度を「外国人材の受入れ手続き」の問題として法務・総務部門に閉じると、人事制度の側で必ず不整合が生じる。
第一に、等級制度への格付けである。
技能実習制度の下では、実習生を等級体系の外に置いて別立ての処遇とする運用が広く行われてきた。
人材の育成と確保が制度の目的として明示された以上、育成の到達水準を等級要件に照らして定義しないと、育成計画そのものが評価不能になる。
職能資格制度を採用しているなら能力の到達段階として、役割等級制度なら担う役割として、どちらかに接続させる必要がある。
第二に、同一労働同一賃金との整合である。
同一の職務に従事する日本人従業員との待遇差については、職務の内容と責任の程度、配置の変更の範囲、その他の事情に照らして説明できる状態にしておく必要がある。
在留資格の違いそのものは、待遇差を正当化する理由にならない。
第三に、人事評価制度の適用である。
育成の進捗を測る仕組みが評価制度と別建てになっていると、二重の運用負荷が生じるうえ、育成の成果が処遇に反映されない。
既存の評価制度を、言語と評価者訓練の面で適用可能な形に調整するほうが、長期的には運用が安定する。
第四に、定着と離職率の管理である。
制度上、一定の要件の下で本人の意向による転籍が想定されている。
受入れ企業から見れば、育成した人材が他社へ移る可能性を前提に、処遇と育成の設計を組む必要が生じる。
これは企業特殊的人的資本をどこまで蓄積させるかという設計判断と同じ構造の問題である。
なお、在留資格の要件、転籍の可否、分野別の運用方針の適用については、確定した情報を出入国在留管理庁の公表資料で確認するとともに、個別の判定は専門家への確認が必要である。
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技能の蓄積に対して正当な対価をどう設計するかについては、平康慶浩による論考『なぜブルーカラービリオネアが日本で生まれづらいのか―誠実な仕事に、正当な対価を』で詳しく解説している。