労働基準法の抜本改正(検討)
ろうどうきじゅんほうのばっぽんかいせい
監修:平康慶浩(セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役|グロービス経営大学院客員准教授。人事コンサルタントとして30年以上、等級・報酬・評価制度の設計に携わる)
労働基準法の抜本改正とは、厚生労働省の労働基準関係法制研究会がとりまとめた報告書を受けて、労働政策審議会で審議されている労働時間規制等の見直しの検討を指す。連続勤務日数の上限、法定休日の特定、勤務間インターバル、副業・兼業における割増賃金の通算、テレワーク等の柔軟な働き方への対応などが検討項目として挙げられている。いずれも法案として成立した段階にはなく、施行時期も定まっていない。
背景・時事文脈
出発点は労働基準関係法制研究会である。
同研究会は報告書において、時間外・休日労働時間の上限規制の見直し、休憩・休日・勤務間インターバル・つながらない権利・年次有給休暇といった「労働からの解放に関する規制」、副業・兼業の場合を含む割増賃金規制、テレワーク等の柔軟な働き方への対応を検討対象として整理した。
あわせて、労働基準関係法制における「事業」の概念についても将来的な検討が必要であるとしている。
報告書はあくまで研究し報告することを目的とした文書であり、法改正の内容を確定させるものではない。
実際の制度化は労働政策審議会労働条件分科会における審議を経ることになる。
報道では連続勤務14日以上の禁止や勤務間インターバルの義務化といった項目が個別に取り上げられているが、審議中の事項と確定した事項を区別して受け止める必要がある。
人事制度設計上の論点
改正の内容が確定していない段階で人事制度を作り替えるのは合理的ではない。
一方で、検討項目のいくつかは改正の成否にかかわらず、制度側で先に整えておく価値がある。
第一に、法定休日の特定である。
就業規則で週のどの日を法定休日とするかを定めていない企業は少なくない。
特定されていないと、35%以上の割増率が適用される割増賃金の対象範囲が事後的に争われる余地が残る。
これは改正の有無と無関係に整備すべき事項である。
第二に、勤務間インターバルの実態把握である。
仮に義務化された場合、対応の可否は勤務シフトの組み方と要員数に依存する。
現状で何時間の休息が確保できているかを職種別に把握しておかなければ、義務化された時点で要員計画の見直しが必要になるかどうかも判断できない。
第三に、副業・兼業の労働時間通算である。
通算ルールが見直された場合、副業を認める範囲の設計が変わりうる。
現行ルールを前提に副業規程を精緻に作り込むより、見直しの方向を注視しつつ運用で対応する余地を残しておくほうが実務的である。
第四に、つながらない権利である。
仮にガイドラインが策定される場合、管理職の行動が対象となる。
これは人事評価制度における管理職の評価項目や役割等級制度の役割定義に接続する論点である。
なお、個別の法改正動向と自社への適用については、専門家への確認が必要である。
より深く読む
労働時間規制の変化が管理職の役割設計にどう跳ね返るかについては、平康慶浩による論考『自律的に考える社員とは何か?社員の四つの型と、次期経営者に必要な要素を解説』で詳しく解説している。