最低賃金1,500円
さいていちんぎんせんごひゃくえん
監修:平康慶浩(セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役|グロービス経営大学院客員准教授。人事コンサルタントとして30年以上、等級・報酬・評価制度の設計に携わる)
最低賃金1,500円とは、地域別最低賃金の全国加重平均を2020年代に1,500円へ引き上げるという政府目標を指す。 最低賃金は最低賃金法に基づき都道府県ごとに定められ、毎年度、中央最低賃金審議会の目安を踏まえて改定される。
背景・時事文脈
2025年度の改定では全国加重平均が前年度から66円増の1,121円となり、引き上げ額・率(6.3%)とも過去最大で、初めて全47都道府県で1,000円を超えた(出典:厚生労働省・労働政策研究・研修機構)。
目安を上回る引き上げを行う県が相次ぎ、発効時期を翌年に繰り下げる県が生じるなど、地方の対応力が課題として顕在化している。
1,500円の目標達成には今後も年7%前後の引き上げが必要とされ、例年7〜8月の目安答申、10月前後の発効という改定サイクルのたびに、企業の賃金テーブルへの影響が論点となる。
人事制度設計上の論点
最低賃金の継続的な上昇は、パート時給の改定にとどまらず、賃金構造全体を圧迫する。
第一に、賃金テーブルの下限管理である。
地域別最低賃金の上昇率が初任層の昇給率を上回ると、等級間・年次間の差が下から圧縮される(賃金圧縮)。
最低賃金への対応を毎年の場当たり的な時給改定で行うのではなく、等級レンジの下限を最低賃金の予測値に連動させて更新する設計が求められる。
第二に、正社員初任給との逆転リスクである。
時給換算した正社員初任層の水準が最低賃金に接近すると、雇用形態間の処遇バランスの説明が難しくなるため、月給者を含めた総点検が必要になる。
第三に、地域間の論点である。
地域別最低賃金の差が縮小する一方、都市部の引き上げ額は大きく、多拠点企業では地域手当・地域別時給の設計を毎年見直す運用負荷が高まっている。
人件費増を吸収する生産性向上・価格転嫁の計画と一体で、中期の賃金カーブを設計することが経営課題となる。
より深く読む
現場人材の処遇と生産性の関係については、平康慶浩による論考『なぜブルーカラービリオネアが日本で生まれづらいのか― 誠実な仕事に、正当な対価を』で詳しく解説している。