つながらない権利
つながらないけんり
監修:平康慶浩(セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役|グロービス経営大学院客員准教授。人事コンサルタントとして30年以上、等級・報酬・評価制度の設計に携わる)
つながらない権利(right to disconnect)とは、勤務時間外や休日に、電子メール・チャット等による業務上の連絡への対応を拒否できる、または対応しないことで不利益を受けないという労働者の権利の考え方である。 日本では法制化されておらず、労働基準法改正論議の論点の一つとして検討が続いている。
背景・時事文脈
フランスが2017年に企業への労使協議義務を法制化したほか、各国で立法化の動きが広がってきた。
日本では、テレワークの定着とチャットツールの普及により勤務時間外の連絡が常態化しやすくなったことを背景に、厚生労働省の研究会報告や労働政策審議会の審議において、時間外の連絡を制限するルールのあり方(ガイドラインによる対応等)が検討されている。
義務化の是非・方法は審議中であり、確定した制度ではない。
緊急時を除き連絡を控える、返信しないことによる不利益取り扱いを禁じる、といった方向性が議論されている。
人事制度設計上の論点
法制化を待たず、時間外連絡のルールは組織として設計できる。
第一に、連絡ルールの明文化である。
緊急の定義、時間外連絡の手段(緊急は電話・それ以外は翌営業日対応でよい旨の明示)、返信不要の原則を服務規律や運用ガイドラインとして定める論点がある。
第二に、管理職の行動基準への組み込みである。
時間外の連絡を控えることを管理職の行動評価・役割定義に位置づけなければ、ルールは上司個人の習慣に負ける。
予約送信機能の活用などの具体行動まで示すことが実効性を左右する。
第三に、評価との関係である。
即応性を暗黙に高評価としてきた組織では、応答の速さではなく業務の成果で評価する基準への転換が前提となる。
第四に、グローバル拠点や顧客対応など時間外対応が構造的に必要な職務については、対応当番の設定と手当・代休の設計で「特定の人の善意」に依存しない仕組みをつくるという論点がある。
より深く読む
部下との対話・マネジメント行動の設計については、論考『『管理』から『自律支援』へ—1on1の最初の10秒が、部下の思考モードを変える』で詳しく解説している。