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副業・兼業の労働時間通算

副業・兼業の労働時間通算

ふくぎょう・けんぎょうのろうどうじかんつうさん

監修:平康慶浩(セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役|グロービス経営大学院客員准教授。人事コンサルタントとして30年以上、等級・報酬・評価制度の設計に携わる)

副業・兼業の労働時間通算とは、労働者が複数の事業場で雇用されて働く場合に、それぞれの労働時間を合算して労働基準法の労働時間規制を適用する仕組みである。 労働基準法第38条に基づく現行ルールでは、通算により法定労働時間を超える部分について割増賃金の支払義務が生じうる。

背景・時事文脈

現行の通算ルールは、後から雇用契約を結んだ使用者が割増賃金を負担する扱いを基本とし、他社での労働時間の把握を自己申告に依存するなど、実務負荷の高さが副業容認の障壁と指摘されてきた。

厚生労働省の研究会報告を受けた労働政策審議会の審議では、健康確保のための労働時間の通算・把握は維持しつつ、割増賃金の算定については通算を見直す方向が論点となっている。

見直しの内容・施行時期は審議中であり、確定した改正ではない。

現行実務では、通算管理を簡素化する「管理モデル」が厚生労働省のガイドラインで示されている。

人事制度設計上の論点

通算ルールの見直し動向は、副業ポリシー全体の再設計と一体で捉える必要がある。

第一に、自社従業員の副業容認の設計である。

許可制か届出制か、競業・情報管理の制限範囲、健康確保のための労働時間申告の仕組みを、通算ルールの改正動向を踏まえて更新するという論点がある。

第二に、副業人材の受け入れ側の設計である。

割増賃金の通算が見直されれば、他社の正社員を短時間の副業で受け入れるコストと手続きの障壁が下がる可能性があり、専門人材の獲得手段として副業受け入れを組み込む要員計画が検討対象となる。

第三に、報酬制度との整合である。

副業を認める場合、自社の時間外労働の抑制と副業時間の把握をセットで運用しなければ健康配慮義務の観点で問題が残る。

勤務間インターバルの確保を含め、総労働時間の管理を制度としてどう担保するかが実務の中心論点となる。

個別の通算・割増賃金の判断は専門家への確認が必要である。

より深く読む

割増賃金と手当設計の歴史的変遷については、平康慶浩による論考『残業見合をやめた会社が、採用で勝ち始めた理由—それでも続けたい会社で考えるべき「5つの見直しポイント」』で詳しく解説している。