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在職老齢年金

在職老齢年金

ざいしょくろうれいねんきん

監修:平康慶浩(セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役|グロービス経営大学院客員准教授。人事コンサルタントとして30年以上、等級・報酬・評価制度の設計に携わる)

在職老齢年金とは、厚生年金に加入して働きながら老齢厚生年金を受給する場合に、賃金(総報酬月額相当額)と年金(基本月額)の合計額が基準額を超えると、超えた分の半額の年金が支給停止される仕組みである。 2026年4月から基準額(支給停止調整額)は月62万円に引き上げられた。

背景・時事文脈

年金の支給停止を避けるためにシニア層が就業時間や報酬を抑える「働き控え」の一因として、在職老齢年金は見直しの対象となってきた。

2025年6月成立の年金制度改正法により、基準額は従来の月50万円から62万円へ引き上げられ、2026年4月に施行された。

この見直しにより支給停止の対象者は大きく減少するとされており、企業にとっては、年金の支給停止を理由とした報酬抑制の必要性が薄れ、シニア人材に成果に応じた報酬を提示しやすい環境が生まれている。

人事制度設計上の論点

基準額の引き上げは、定年後再雇用の処遇設計を見直す好機となる。

第一に、再雇用時の賃金水準の論点である。

多くの企業では定年前の5〜7割程度へ一律に引き下げる設計が慣行化してきたが、その根拠の一つだった「年金が止まらない水準への調整」は説得力を失いつつある。

役割と成果に基づく再雇用者の等級・報酬設計への転換が検討課題となる。

第二に、同一労働同一賃金の観点から、職務内容が変わらないままの大幅な賃金引き下げは待遇差の説明可能性という論点を持つ。

役割の再定義(職務の変更・責任の限定)と報酬の対応関係を明示できる制度が求められる。

第三に、60歳以降の賃金カーブを、年金・高年齢雇用継続給付等の公的給付と組み合わせた手取りベースでどう設計するかという論点がある。

給付制度は改正が続いているため、個別の支給額・停止額の判断は専門家への確認が必要である。

より深く読む

退職金を含めたシニア期の報酬戦略の再定義については、平康慶浩による論考『給与項目の今昔「退職金」 — 長く勤めた証から、人生設計と報酬戦略の再定義へ』で詳しく解説している。