歩合給
ぶあいきゅう
監修:平康慶浩(セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役|グロービス経営大学院客員准教授。人事コンサルタントとして30年以上、等級・報酬・評価制度の設計に携わる)
歩合給とは、売上高や契約件数などの成果に応じて支給額が決まる賃金である。労働基準法上は出来高払制その他の請負制に該当し、成果が少ない期間についても一定額の賃金を保障する義務が使用者に課される。固定給と組み合わせて用いられることが多く、営業職や運送業などで採用されている。
背景・時事文脈
歩合給には労働基準法上の制約がある。
茨城労働局「労働基準法のあらまし(賃金支払いの原則、出来高払制)」が示すとおり、「使用者は、出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、労働時間に応じ、一定額の賃金の保障をしなければならない」とされている。
あわせて、賃金は通貨で、全額を、直接本人に、毎月1回以上、一定の支払日を決めて支払うという原則が適用される。
保障給の水準と実務上の留意点は、厚生労働省「歩合給制とはどのような制度ですか?」(スタートアップ労働条件)に整理されている。
同ページは歩合給制を「売上高や契約成立件数等の一定の成果に対して、定められた金額を支払う賃金制度」と説明したうえで、保障給は「通常の実収賃金と余りへだたらない程度の収入が保障されるように」定めるものとし、最低でも平均賃金の6割程度を保障することが妥当としている。
最低賃金についても、1時間あたりに換算した賃金額が下回らないようにしなければならないとされ、割増賃金の単価は「算定期間内に支払われた歩合給の総額を同期間の総労働時間で除して算出」するものとされている。
人事制度設計上の論点
第一に、固定部分と歩合部分の比率である。
歩合の比率を高めるほど成果への動機づけは強まるが、収入の変動が大きくなり、生活の安定を損なう。
前述の保障給の考え方は、変動幅に下限を設けることを制度として求めているとも読める。
採用時の提示額が歩合込みの見込み額になっていると、入社後の実収との差が離職の原因になりやすい。
第二に、何を成果とするかである。
売上高に連動させると、値引き販売や採算の悪い受注が増えることがある。
粗利に連動させれば採算は守られるが、算定が複雑になり本人が計算できなくなる。
賞与(業績連動賞与)との役割分担を決めたうえで、歩合給で報いる範囲を限定するほうが運用は安定する。
第三に、等級制度との整合である。
歩合給の比率が高い職種を等級制度のどこに位置づけるかを決めていないと、同じ等級でも年収が大きく異なる状態が生じる。
複線型人事制度(コース別)として別体系に分けるか、範囲給の幅を職種ごとに変えるかという選択になる。
法令上の判断については専門家への確認が必要である。
より深く読む
成果に連動する報酬の設計については、平康慶浩による論考『営業インセンティブ設計の見直し方』で詳しく解説している。