通勤手当
つうきんてあて
監修:平康慶浩(セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役|グロービス経営大学院客員准教授。人事コンサルタントとして30年以上、等級・報酬・評価制度の設計に携わる)
通勤手当とは、従業員の通勤に要する費用を補助する目的で支給される手当である。 労働基準法上の支給義務はなく、就業規則等の定めに基づき支給される。日本では慣行として広く普及しており、諸外国と比べても導入率が高い給与項目である。
背景・時事文脈
厚生労働省「令和2年就労条件総合調査」によれば、通勤手当・精皆勤手当などの制度がある企業の割合は92.3%に達し、諸手当の中で最も高い。
税制上は、公共交通機関を利用する場合は月15万円まで非課税とされている(国税庁、2026年7月時点)。
リモートワーク・ハイブリッド勤務の定着に伴い、定期券代の一律支給から出社日数に応じた実費精算へ切り替える企業が増え、通勤手当のあり方そのものが問われている。
人事制度設計上の論点
通勤手当の見直しは、単なる経費削減ではなく報酬制度全体の再配分の入口となる。
第一に、実費精算化で生じた原資をリモートワーク手当や基本給へ再配分するか、削減として扱うかという判断がある。
原資の行き先を示さない削減は、従業員には実質的な不利益変更と受け止められやすい。
第二に、通勤手当は社会保険の標準報酬月額の算定に含まれるため、支給方法の変更は保険料と将来の年金額に影響しうるという論点がある。
具体的な影響は個別条件によるため専門家への確認が必要である。
第三に、居住地の自由度を高める人事施策(フルリモート勤務・遠隔地居住の容認)を進める場合、月15万円の非課税枠を前提とした新幹線通勤の容認範囲など、働く場所に関するポリシーと通勤手当の支給ルールを一体で設計する必要がある。
より深く読む
通勤手当の歴史とリモート時代の設計論については、平康慶浩による論考『通勤手当は交通費ではなかった?—リモート/ハイブリッド時代にエンゲージメントが上がる会社の1つの共通点』で詳しく解説している。