ジョブ型人事制度
じょぶがたじんじせいど
監修:平康慶浩(セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役|グロービス経営大学院客員准教授。人事コンサルタントとして30年以上、等級・報酬・評価制度の設計に携わる)
ジョブ型人事制度とは、職務(ジョブ)を基準として等級・報酬・評価の仕組みを設計する人事制度である。 職務記述書(ジョブディスクリプション)により職務内容と要件を定義し、人の属性ではなく職務の価値に基づいて処遇を決定する。人を基準に処遇を決めるメンバーシップ型と対置される。
背景・時事文脈
専門人材の獲得競争と年功的賃金の見直しを背景に、大企業を中心に導入が広がっている。
政府も労働市場改革の一環として職務給の導入を促しており、2024年8月には導入企業の事例を整理した「ジョブ型人事指針」が公表された(出典:内閣官房・三位一体の労働市場改革)。
一方、日本企業の多くは欧米型の職務限定雇用をそのまま導入するのではなく、異動や新卒採用と両立させたハイブリッド型を採用しており、「ジョブ型」の内実は企業によって大きく異なる。
人事制度設計上の論点
ジョブ型導入の成否は、目的の明確化と運用設計で決まる。
第一に、導入目的の整理である。
専門人材の市場価格対応、年功是正、グローバル共通基盤の構築など、目的によって設計すべき範囲(全社か一部職種か、等級だけか報酬・評価までか)は変わる。
目的を曖昧にした「ジョブ型」の看板だけの導入は、既存制度との矛盾を増やす。
第二に、職務記述書の粒度と保守の論点がある。
細かすぎる定義は組織変更のたびに改訂負荷を生み、粗すぎる定義は処遇根拠として機能しない。
第三に、報酬面では「ジョブ型にすると昇給がなくなる」という誤解への対応として、職務等級ごとの給与レンジ内で習熟・成果により昇給できる設計が検討される。
第四に、既存社員の移行措置である。
現給与が新等級のレンジを超える社員の扱い(調整給・移行期間)は、労使コミュニケーションの中心論点となる。
より深く読む
ジョブ型人事制度の作り方の全体像は、ジョブ型人事制度の作り方(連載カテゴリ)を参照。昇給と両立させる設計論については、論考『「ジョブ型=昇給しない」は本当か―昇給のあるジョブ型総合人事制度という選択肢』で詳しく解説している。