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メンター制度

メンター制度

めんたーせいど

監修:平康慶浩(セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役|グロービス経営大学院客員准教授。人事コンサルタントとして30年以上、等級・報酬・評価制度の設計に携わる)

メンター制度とは、豊富な知識と職業経験を持つ社内の先輩社員(メンター)が、直属の上司以外の立場から後輩社員(メンティ)のキャリア形成上の課題解決や職場適応を継続的に支援する仕組みである。職務・業務の指示命令と人事評価をともなわない「斜めからの支援」である点が、上司によるマネジメントやOJT指導との違いである。

背景・時事文脈

日本企業への導入を後押ししたのは、厚生労働省がポジティブ・アクション展開事業(平成24年度委託事業)として作成した『メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル』である。

同マニュアルはメンター制度を「豊富な知識と職業経験を有した社内の先輩社員(メンター)が、後輩社員(メンティ)に対して行う個別支援活動」と定義し、「職域拡大」「管理職登用」「継続就業」の三つのテーマに特に効果があるとしている。

制度の必要性を高めているのは女性活躍推進法の改正である。

2026年4月1日施行の改正により、情報公表の義務は常時雇用労働者301人以上から101人以上の企業へ拡大され、あわせてえるぼしプラス認定・プラチナえるぼしプラス認定が創設された(厚生労働省栃木労働局「2026年4月1日 女性活躍推進法が改正されました!」)。

女性管理職比率を高めるうえでロールモデルの不在がボトルネックになっている企業にとって、メンター制度は数値を動かす手段として再評価されている。

人事制度設計上の論点

メンター制度が形骸化する典型的な原因は、メンターの側に何の位置づけも与えていないことである。

第一の論点は、メンター活動を等級・評価のどこに置くかである。

管理職層の役割等級制度における役割記述に「次世代の育成」を明記し、メンター活動をその具体的な行動として位置づける方法が整合的である。

逆に、メンター活動を評価項目として点数化すると、面談回数の消化が目的化しやすい。

行動の有無ではなく、役割の一部として当然に含まれるものとして扱うほうが機能する。

第二に、1on1との役割分担である。

1on1は直属の上司が業務の進捗と課題を扱う場であり、評価に接続する。

メンタリングは評価から切り離された場であり、上司には話しにくい事柄を扱うことに意味がある。

この違いを制度上で明示せず、両者を同じ趣旨の面談として運用すると、メンタリングの存在意義が消える。

第三に、メンターの選定である。

同一部門内の上位者を充てると利害関係が持ち込まれ、評価から切り離された関係が成立しない。

マニュアルが「利害関係のない異なる職場の先輩社員」を想定しているのはこの理由による。

第四に、サクセッションプランとの接続である。

管理職候補の要件としてメンター経験を置けば、育成の担い手を確保する仕組みと後継者育成の仕組みが同時に回る。

制度を単独の福利施策として運用するか等級要件に組み込むかが、定着を左右する分岐点になる。

より深く読む

支援を受ける側が自律的に考える状態に至る経路については、平康慶浩による論考『自律的に考える社員とは何か?社員の四つの型と、次期経営者に必要な要素を解説』で詳しく解説している。

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