メリトクラシー(能力主義)
めりとくらしー
監修:平康慶浩(セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役|グロービス経営大学院客員准教授。人事コンサルタントとして30年以上、等級・報酬・評価制度の設計に携わる)
メリトクラシーとは、家柄や年齢、勤続年数ではなく、本人の能力と実績によって地位と処遇を配分すべきだという考え方である。能力主義・業績主義と訳される。人事制度では、等級の格付け基準をどこに置くか、昇格の判断を何によって行うかという形で具体化され、年功序列と対比される概念として用いられる。
背景・時事文脈
能力と実績によって処遇するという原則は、公務においては法令に定められている。
人事院「人事評価と評価結果の活用」によれば、人事評価は「任用、給与、分限その他の人事管理の基礎とするために、職員がその職務を遂行する際に発揮した能力及び挙げた業績を把握した上で行われる勤務成績の評価」と定義されている(国家公務員法第18条の2第1項)。
評価は発揮した能力を見る能力評価と、明確化された役割に基づく業績評価の二つで構成され、いずれも絶対評価で実施される。
同時に、能力主義は選別のためだけの仕組みとはされていない。
内閣人事局「人事評価」は、人事評価が「人材育成の意義も有」し、「評価者と被評価者との間のコミュニケーションを通じて、組織内の意識の共有化や業務改善等にも寄与」すると説明している。
能力を測ることと、能力を伸ばすことが同じ制度のなかに置かれている点は、民間企業の制度設計でも前提となる。
人事制度設計上の論点
最大の論点は、何をもって「能力」とするかである。
能力主義は、測定できるものにしか働かない。
職務遂行能力を基準とすれば職能資格制度に、職務の価値を基準とすれば職務等級制度に、役割の大きさを基準とすれば役割等級制度になる。
いずれも能力主義を名乗り得るが、誰が有利になるかは大きく異なる。
「当社は能力主義である」という宣言だけでは制度は決まらない。
第二の論点は、能力主義が年功序列と完全に背反するわけではないという点である。
職能資格制度は本来能力を基準とする仕組みだが、能力の伸長を勤続年数の代理指標で判断する運用に流れると、結果として年功的になる。
制度の名称ではなく、昇格の実績が何と相関しているかを確認しなければ、実態は判定できない。
第三に、納得の問題がある。
能力で処遇を分けるということは、差がついた理由を説明する責任が会社側に生じるということでもある。
絶対評価と相対評価のどちらを採るか、昇格と昇進の違いを社員に説明できているかは、能力主義が機能するかどうかを左右する。
説明のない差は、能力による差ではなく恣意による差として受け取られる。
より深く読む
能力主義が人の感情にどう作用するかについては、平康慶浩による論考『転生系マンガを世界5,000万部にした「メリトクラシーの正体」』で詳しく解説している。