複線型人事制度(コース別)
ふくせんがたじんじせいど(こーすべつ)
監修:平康慶浩(セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役|グロービス経営大学院客員准教授。人事コンサルタントとして30年以上、等級・報酬・評価制度の設計に携わる)
複線型人事制度とは、従業員のキャリアを複数のコースに区分し、コースごとに等級体系・報酬水準・異動範囲を分けて設計する人事制度である。 コース別人事制度とも呼ばれる。総合職と一般職、マネジメント職と専門職、全国転勤型と地域限定型といった区分が代表例であり、コース間の転換ルールの設計が制度の生命線となる。
背景・時事文脈
単一の等級体系では、担う職責も異動の範囲も異なる働き方を同じ物差しで処遇することになり、賃金差の説明が難しくなる。
この課題への対応としてコース区分による設計が広く用いられてきた。
近年は、育児・介護との両立や共働き世帯の増加により勤務地を限定する働き方への需要が高まる一方、男女間賃金差異の情報公表が求められるなかで、コース区分そのものが処遇差の説明要因として問われる場面も増えている。
人事制度設計上の論点
第一に、コース間の処遇差の合理的根拠である。
転勤の可能性に対して払っているのか、職責の大きさに対してなのか、成果責任の重さに対してなのかを特定できなければ、等級と報酬水準の差は説明できない。
第二に、コース転換のルールである。
転換の要件・審査の頻度・転換後の不可逆性をあらかじめ定めておかなければ、区分は入社時の属性で固定されてしまう。
第三に、総合職と一般職の区分が男女間賃金差異の説明要因になりうるという論点がある。
区分ごとの人員構成に偏りがある場合、差異の要因分析においてコース制度自体の妥当性が問われる。
第四に、コース別の等級と全社共通の評価制度の接続である。
評価基準は共通としつつ昇給・賞与への反映をコースごとに変えるのか、基準自体を分けるのかで運用負荷と納得性は大きく変わる。
地域限定コースと地域手当の関係整理も併せて必要になる。
より深く読む
コース区分とキャリア設計の考え方については、平康慶浩による論考『ゼネラリスト vs スペシャリストはもう古い ― 勝つのは「第三の人材」』で詳しく解説している。