ノーレイティング
のーれいてぃんぐ
監修:平康慶浩(セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役|グロービス経営大学院客員准教授。人事コンサルタントとして30年以上、等級・報酬・評価制度の設計に携わる)
ノーレイティング(no rating)とは、従業員をS・A・Bといった記号や点数で年次に格付けするレーティングを廃止し、高頻度の1on1や継続的なフィードバックを通じて育成と処遇を運用する評価アプローチである。 評価行為そのものや処遇の差をなくす仕組みではない点に注意が必要である。
背景・時事文脈
2010年代半ばに米国の大手企業が年次評価の格付け廃止を相次いで打ち出したことで世界的に注目され、日本でも導入検討が広がった。
背景には、年1回の格付けでは変化の速い業務の実態を捉えられないこと、格付けの通知が従業員の納得感やモチベーションをかえって損なうことへの問題意識がある。
もっとも、格付けを廃止しても昇給・賞与の原資配分は必要であり、多くの導入企業では上司の裁量的な配分やキャリブレーション(調整会議)が格付けの機能を代替している。
人事制度設計上の論点
ノーレイティングの導入判断は、格付けが担っていた機能をどこで代替するかの設計問題である。
第一に、処遇決定の透明性の論点がある。
記号による格付けは粗い反面、処遇差の根拠を従業員に示す装置でもあった。
廃止する場合、昇給・賞与の配分理由を個別に説明する責任がマネジャーに移るため、その説明スキルと原資配分の権限設計が前提条件となる。
第二に、等級制度との接続である。
昇格判定には何らかの序列情報が必要であり、ノーレイティング下での昇格候補者の特定方法(推薦・アセスメント等)を別途設計しなければ、昇格運用が属人化する。
第三に、全面導入ではなく、育成目的の評価から格付けを外し、処遇決定は簡素な区分で行う部分導入も現実解となる。
評価の頻度と質を高める運用力が伴わないままの格付け廃止は、単なる評価の放棄に陥りやすい。
より深く読む
評価への納得感が離職に与える影響については、調査記事『【働く人の本音調査2026 #1】社員が辞めた本当の理由――離職検討理由の1位は「評価への納得感」【正社員500名規模調査】』で詳しく解説している。