初任給
しょにんきゅう
監修:平康慶浩(セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役|グロービス経営大学院客員准教授。人事コンサルタントとして30年以上、等級・報酬・評価制度の設計に携わる)
初任給とは、学校卒業後に初めて就く職務に対して支払われる最初の所定内給与である。 日本では新卒一括採用の慣行の下、学歴別に一律の金額を設定する企業が多く、企業の採用競争力と賃金水準を示す代表的な指標となっている。
背景・時事文脈
人手不足と物価上昇を背景に、初任給の引き上げが続いている。
労務行政研究所「2026年度 新入社員の初任給調査」(東証プライム上場企業対象)によれば、大学卒(一律設定)の初任給は平均265,708円で、85.6%の企業が前年から引き上げた。
引き上げ企業の平均引き上げ額は16,754円に達する。
一方で全学歴引き上げ企業の比率は前年の83.2%から75.6%へ低下しており、引き上げ一巡後の据え置きへの転換もみられる。
人事制度設計上の論点
初任給の引き上げは、単年の採用施策ではなく賃金カーブ全体の再設計問題である。
第一に、新人の給与だけを引き上げると入社数年目の中堅層との差が縮小・逆転する賃金圧縮(ペイ・コンプレッション)が生じるため、若手ゾーン全体の昇給原資をどう確保するかという論点がある。
第二に、原資確保の手法として賞与原資の一部を月例給与へ組み替える「賞与の月給化」などの選択肢があり、年収構成の変更として労使コミュニケーションの設計が必要になる。
第三に、初任給を市場相場に連動させ続けるなら、等級別の給与レンジの下限を毎年見直す運用(範囲給の市場連動)へ移行するかどうかという制度構造の判断が求められる。
単発の初任給対応を繰り返すほど、賃金テーブル全体の整合性は崩れやすくなる。
より深く読む
初任給の昭和・平成・令和の変遷と「生活成立フロア」の考え方については、平康慶浩による論考『【2026年最新】初任給はなぜ急上昇?71%の企業が引き上げた「本当の理由」』で詳しく解説している。