役職定年
やくしょくていねん
監修:平康慶浩(セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役|グロービス経営大学院客員准教授。人事コンサルタントとして30年以上、等級・報酬・評価制度の設計に携わる)
役職定年とは、一定の年齢に達した管理職が、定年を迎える前にその役職から離れる仕組みである。 役職離任後は専門職や一般職として在籍を続け、多くの場合は役職手当の消滅を伴って報酬水準が下がる。就業規則や人事制度上のルールとして各社が定めるものであり、法令に基づく制度ではない。
背景・時事文脈
1986年の高年齢者雇用安定法(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)による定年年齢引上げの流れのなかで、役職の新陳代謝を確保する仕組みとして導入が広がった経緯がある。
2025年4月1日には同法の経過措置が終了し、すべての企業で希望者全員を65歳まで継続雇用することが義務化された(厚生労働省)。
65歳までの高年齢者雇用確保措置は、定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年制の廃止のいずれかによる。
就業期間が延びるなか、近年は役職定年を廃止する企業の動きも報じられている。
人事制度設計上の論点
第一に、役職を降りた後の等級と報酬をどう設計するかである。
役割等級制度であれば担う役割の変更として説明できるが、人の能力に等級を付す職能資格制度では、能力が下がっていないのに処遇が下がる理由を説明しにくい。
第二に、一律の年齢による運用は、本人の貢献と切り離して年齢を理由に処遇を引き下げるものと受け止められやすいという論点がある。
第三に、役職定年を廃止する場合には、代替として任期制・再任審査・降格ルールの整備が必要になる。
年齢による自動的な交代をやめるのであれば、役割と成果に基づいて役職を解く仕組みがなければポストは滞留する。
第四に、60歳以降の賃金カーブと、在職老齢年金や退職金の設計との接続である。
役職定年時の減額幅、定年後再雇用時の水準、退職金の算定基礎の扱いを一体で見なければ、生涯を通じた処遇として整合しない。
より深く読む
役職定年に至る前段の評価運用の問題については、平康慶浩による論考『40代以上の処遇が「割高」になるのは、評価を伝えてこなかったツケである』で詳しく解説している。