ブルーカラービリオネア
ぶるーからーびりおねあ
監修:平康慶浩(セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役|グロービス経営大学院客員准教授。人事コンサルタントとして30年以上、等級・報酬・評価制度の設計に携わる)
ブルーカラービリオネアとは、テック起業家ではなく、水道工事・建設・物流・電気整備といった現場の仕事によって高い報酬と豊かな生活を実現する人々を指す、米国発の呼称である。 文字どおりの億万長者に限らず、エッセンシャルワークの価格上昇を背景に裕福になった現場職を広く指す。日本におけるこの概念の議論は、セレクションアンドバリエーション(代表・平康慶浩)の連載論考が展開している。
背景・時事文脈
米国では、現場サービスの価格高騰と技能プレミアムの拡大により、現場職が高収入を得る事例が注目を集めてきた。
対して日本では、誠実に働く現場職ほど報われにくい構造が残る。
連載論考は、その原因を個人の努力ではなく社会の構造に求め、価格決定権の偏り、品質の不可視性、制度の歪みという三つの壁を指摘する。
米国には公共工事の賃金を守る法制度や国家資格による技能の可視化など「質が価格を決める」仕組みがあるのに対し、日本では「誠実さ」と「安さ」が結びついたまま価格転嫁が進みにくい。
人手不足と最低賃金の上昇が続く現在、現場職の報酬構造は経営課題として再浮上している。
人事制度設計上の論点
ブルーカラービリオネアの議論は、現場人材の等級・報酬設計に具体的な問いを立てる。
第一に、技能の可視化である。
技能・資格・品質実績(再修理率・安全記録等)を等級要件として明文化し、技能の高さが賃金に反映される構造をつくるという論点がある。
第二に、賃金カーブの設計である。
現場職の賃金が早期に頭打ちになるテーブルでは、熟練の価値が制度上否定される。
熟練技能者が管理職にならずとも昇給し続けられる専門職コースの設計が検討対象となる。
第三に、生産性向上の成果配分である。
人事部門が主導する多能工化・工程改善の成果を、価格転嫁と処遇改善へ接続する仕組み(利益配分・技能手当)まで設計して初めて、「誠実な仕事に正当な対価」が制度として成立する。
より深く読む
日本でブルーカラービリオネアが生まれづらい構造と処方箋については、平康慶浩による連載『なぜブルーカラービリオネアが日本で生まれづらいのか― 誠実な仕事に、正当な対価を』『日本でブルーカラービリオネアを生む道筋―人事部主導の生産性革命が、価格転嫁を可能にする』で詳しく解説している。