自律性の四つの型(統合型・主張型・同調型・沈黙型)
じりつせいのよっつのかた
監修:平康慶浩(セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役|グロービス経営大学院客員准教授。人事コンサルタントとして30年以上、等級・報酬・評価制度の設計に携わる)
自律性の四つの型とは、社員が自ら考えて行動する度合いを、統合型・主張型・同調型・沈黙型の四つの類型で捉える、セレクションアンドバリエーションが提唱する枠組みである。自律性を「ある/ない」の二分法ではなく、自ら判断する度合いと、その判断を他者と統合する度合いの組み合わせとして捉える点に特徴があり、次期経営者に求められる要素を識別する際の視点として用いられる。
背景・時事文脈
自律的な人材の育成は、人的資本開示の文脈でも人材育成方針の中核に置かれることが多い。
内閣官房・金融庁・経済産業省による人的資本可視化指針(改訂版)は、経営戦略と人材戦略の連動を説明する形での開示を求めており、「自律的人材の育成」を掲げる企業は多い。
ただし、自律性を測る枠組みを持たないまま方針だけを掲げると、施策の効果を検証できない。
四つの型は、この検証を可能にするための識別の道具として位置づけられる。
厚生労働省『令和元年版 労働経済の分析』第Ⅱ部第3章が示すとおり、自発性や役割外パフォーマンスはワークエンゲージメントと正の相関を持つが、その発現の仕方には個人差がある。
人事制度設計上の論点
この枠組みを制度に接続するうえで重要なのは、四つの型を優劣の序列として扱わないことである。
序列として運用すると、単なる能力評価の別名になり、識別の道具としての価値が失われる。
第一に、評価制度に型を持ち込まないことである。
型は行動の傾向を理解するための枠組みであり、評価の対象は行動と成果である。
型そのものを評価項目とすると、人物類型による判定という性格を帯び、考課者エラーを招く。
用いる場面は、育成方針の設計と配置の検討に限定するのが適切である。
第二に、上位等級の要件定義への反映である。
判断の複雑さが増す上位等級では、自ら判断するだけでなく、異なる立場の判断を統合する力が要求される。
等級制度の等級定義書において、上位等級の要件を「自ら判断する」から「判断を統合する」へと段階的に記述することで、この枠組みは制度に接続する。
第三に、サクセッションプランにおける候補者の見立てである。
次期経営者の要件として自律性が挙げられることは多いが、どの型を求めているかが言語化されていない場合が多い。
主張する力と統合する力を分けて見立てることで、候補者の育成課題が具体化する。
第四に、沈黙型を生む組織側の要因である。
個人の類型として固定的に捉えると、組織の側の要因が見えなくなる。
発言が処遇に反映されない構造や、承認の需給ギャップが放置されている状態は、自律的に振る舞う動機そのものを失わせる。
型は個人の属性であると同時に、組織との相互作用の結果でもある。
より深く読む
四つの型それぞれの特徴と、次期経営者に必要な要素については、平康慶浩による論考『自律的に考える社員とは何か?社員の四つの型と、次期経営者に必要な要素を解説』で詳しく解説している。