「あの人は忍耐力がある」
「これからはレジリエンスが必要だ」
職場ではレジリエンスと忍耐力が、どちらも似た意味合いで語られています。
この2つのニュアンスの違いを知っておくと、育成の場面で見立てがしやすくなります。まずは、それぞれが何を指すのかを捉えてみましょう。
- 忍耐力とレジリエンスがそれぞれ何を指すのか
- 忍耐力は評価されやすい力、レジリエンスは育てる力という捉え方の違い
- 「若手は忍耐力がない」と言われる背景と、仕組みで支える育成の方向性
- 部下や若手の育成に関わる管理職の方
- 人材育成や組織開発を担う人事担当者
- 忍耐力とレジリエンスの違いを整理して考えたい方
忍耐力とは、その場に踏みとどまる力

忍耐力は、つらい状況の最中に、その場に踏みとどまって耐える力です。
厳しい環境や理不尽な出来事に直面しても、投げ出さずに持ちこたえる。日本の職場では長く美徳とされ、我慢強さや粘り強さと重ねて語られてきました。
スポ根漫画の、歯を食いしばる特訓シーン
イメージしやすいのは、スポ根漫画の特訓シーンです。
たとえば『巨人の星』の星飛雄馬は、大リーグボール養成ギプスを身につけたまま、来る日も来る日も過酷なトレーニングに耐え続けます。歯を食いしばって苦しさに踏みとどまる、あの姿。
いわゆる根性で耐え抜く力が、ここでいう忍耐力にあたります。だいたいこのイメージで捉えていただければ、大きくは外れません。
そして忍耐力は、耐えている姿が外から見えるぶん、評価や判定の対象になりやすい力でもあります。
「あの人は忍耐力がある」「あの若手は忍耐力がない」というように、第三者が外から口にしやすい。スポ根漫画で、観客が主人公の頑張りに「根性がある」と声援を送るのと同じ構図です。
レジリエンスとは、落ち込みから立ち直る力

レジリエンスは、ダメージを受けたあとに、落ち込みから立ち直る力です。
もともとは弾力や回復力を意味する言葉で、心理学では逆境やストレスから回復し、適応していく力を指します。
忍耐力が耐える局面の力だとすれば、レジリエンスは立ち直る局面の力です。うまくいかずに落ち込んでも、そこから元の状態へ戻り、また前へ進んでいく。折れないことよりも、折れても立て直せることに価値があります。
レジリエンスのもう一つの特徴は、繰り返し働くという点です。一度で終わりではなく、落ち込むたびに何度でも発揮されます。さらに、逆境の経験を糧にして、以前より強くなることさえあります。失敗や挫折が、その人を成長させる材料に変わっていくのです。
「ある・ない」で測るより、育てて伸ばす力
一方でレジリエンスは、「ある・ない」で測って裁くよりも、育てて伸ばす対象として捉えるほうが合う力です。
立ち直る力は、生まれ持った性格ではなく、後から育てられるものだからです。「あの人はレジリエンスが足りない」と判定するより、「どうすれば立ち直りを支えられるか」と考えるほうが、ずっと実りがあります。
近年レジリエンスが注目されるのは、変化が速く、思いどおりにいかない出来事が増えているからです。耐えるだけでは追いつかない場面で、立ち直り、適応していく力が求められています。
忍耐力とレジリエンスのニュアンスの違い
ここまで見てきた2つのニュアンスの違いは、次のように整理できます。
| 忍耐力 | レジリエンス | |
|---|---|---|
| 使う場面 | つらい状況の最中 | ダメージを受けたあと |
| 力の向き | その場に踏みとどまる | 落ち込みから元に戻す |
| 一言でいうと | こらえる | 立ち直る |
| 捉えられ方 | あるかないかで評価されやすい | 育てて伸ばすものとして捉える |
どちらが優れているという話ではありません。大切なのは、それぞれの力がどんな場面で働きやすいかを掴んでおくことです。じっと耐えた経験から大きな学びを得て、前へ進む人も少なくありません。
そして、この2つは別々の人に備わっているわけではありません。同じ人の中でも、状況によって両方を行き来しています。だからこそ、どちらか一方だけで人を判断すると、その人の別の側面を見落としてしまいます。
なぜ若手は忍耐力がないと言われるのか

「今の若手は」という嘆きは、昔から繰り返されてきた
「今どきの若手は忍耐力がない」。こうした声は、多くの職場で繰り返し聞かれます。
ただ、この嘆き自体は今に始まったものではありません。年長の世代が若い世代を評して同じことを言う光景は、はるか昔から続いてきました。その意味では、若手そのものが大きく変わったわけではないとも言えます。
あの特訓に耐えられたのは、目的があったから
ここで、先ほどの星飛雄馬を思い出してみましょう。彼があの過酷なギプス特訓に耐えられたのは、一流の投手になるという強烈な目的があったからです。もし目的が何もないまま、ただ「ギプスをつけて走り込め」とだけ言われたら、あんなふうには踏ん張れません。
同じことは、忍耐力を問われる場面全般にあてはまります。「今の若手は忍耐力がない」と言う人に、こう問い返してみたいのです。あなたが耐えられたのも、その先に成し遂げたいものがあったからではないでしょうか。
耐えること自体が得意だったのではなく、耐えてでも手にしたい何かがあったからではないでしょうか。
だとすれば、目の前の若手に同じものがあるとは限りません。あったとしても、それがあなたの持っていたものと同じとは限りません。しかも、耐えた末に報われた人ほど「耐えれば報われる」と語りやすいものです。
報われなかった人や途中で折れた人は、助言をする側には残っていません。だから「耐えろ」という言葉は、うまくいった側から見た景色に偏りがちになります。
変わったのは、耐える目的の出どころ
そもそも、目的のない忍耐が長続きしないのは、今も昔も変わりません。耐える先に何もなければ、忍耐はただの消耗になり、いずれ折れるか、その場を離れることになります。
変わったのは、目的の出どころです。かつては、生活の必要や、会社が成長すれば自分も報われるという物語が、耐える目的を外から与えてくれました。本人が目的をつくらなくても、耐える理由が周囲にそろっていたのです。
今は、その外側の支えが弱くなりました。情報も選択肢も見え、他の生き方も目に入ります。他に道がないから耐えるという前提は崩れました。その結果、耐えるための目的は、一人ひとりが自分で持つしかなくなっています。そして、その軸がまだ育っていない人が増えているのです。
つまり若手は忍耐力がないのではなく、耐える目的を共有しにくい時代になった、と捉えるほうが実態に近いと言えます。
忍耐力を求める組織から、レジリエンスを育てる組織へ
耐える目的を一律に共有させにくい以上、耐えさせる方向だけに頼る育成には限界があります。耐える理由が本人になければ、いくら忍耐を求めても、消耗を招くだけで終わりかねません。
本人自身の目的が定まりきっていない段階でも支えになるのは、レジリエンスのほうです。
目的やすり合わせは、仕組みで支えられる
ここで、目的を二つに分けて考える必要があります。
一つは、これまで述べてきた「耐える目的」。何のために頑張るのかという、本人の中にある動機です。これは本人が持つしかありません。
もう一つは「仕事の目的」です。その仕事が何のために存在し、何を目指すのか。これは、あらかじめ組織の側で決まっているものです。
前者はいわば主観的な目的、後者はいわば客観的な目的ともいえます。
前者の目的が無くとも、後者の目的は決まっているはずであり、きちんと上司と部下で把握しておく必要があります。
決まっているからこそ、上司と部下でていねいにすり合わせれば、「この仕事はここにつながっている」という一定の納得は得られます。目標設定をていねいに行い、その運用の質を評価者研修で底上げする。これは、耐える理由そのものを押しつけるのではなく、納得の手がかりを組織の側から差し出す営みです。
なお、私たちセレクションアンドバリエーション株式会社では評価者研修も実施しております。評価者こそが、レジリエンスを高めるカギとなっています
耐えさせるから、立て直せる人を育てるへ
これからの育成は、耐えさせるから、立て直せる人を育てるへと軸足を移していくことが求められます。振り返りを通じて経験を学びに変える機会を用意し、立ち直りを支える関わりを重ねる。こうした支援が、変化の速い時代に人を伸ばしていきます。
そして、こうして培われた忍耐力やレジリエンスは、やがて長い目標を最後までやり抜く力へとつながっていきます。目の前の困難を耐え、また立ち直る。その積み重ねが、遠いゴールへ向かう粘り強さの土台になります。
忍耐力を否定する必要はありません。目的が定まった人にとって、忍耐力は今も大きな力です。ただ、その目的を一律に押しつけられない時代には、まずレジリエンスを育て、立ち直りながら前へ進める人を増やすこと。それが、これからの組織にとって現実的な選択になります。
よくある質問
Q. 忍耐力とレジリエンスは、どちらを優先して育てるべきですか?
A. どちらが上ということはなく、局面によって役割が異なります。ただし、目的や軸がまだ定まっていない段階では、立ち直りながら前へ進めるレジリエンスのほうが支えになりやすいと言えます。目的が明確な人には、忍耐力が力を発揮します。
Q. レジリエンスは後から育てられるのですか?
A. はい。レジリエンスは生まれ持った性格ではなく、後から高められる力だと考えられています。失敗を経験に変える振り返りや、安心して立ち直れる環境、周囲の支援などによって育てることができます。
Q. 忍耐力を求めること自体が、もう時代遅れなのでしょうか?
A. そうではありません。目的を持つ人にとって、忍耐力は今も欠かせない力です。問題は、耐える目的を一律に共有しにくくなったことにあります。目的を押しつけるのではなく、本人の中に目的が育つのを支えることが大切です。
まとめ
本稿では、レジリエンスと忍耐力の違いと、これからの育成の方向性を整理しました。
- 忍耐力は、つらい状況の最中に踏みとどまって耐える力
- レジリエンスは、ダメージを受けたあとに立ち直る力
- 忍耐力は外から評価されやすい力、レジリエンスは育てて伸ばす力
- 忍耐力やレジリエンスの積み重ねが、長くやり抜く力の土台になる
- 「若手は忍耐力がない」のではなく、耐える目的を共有しにくい時代になった
- 目的やすり合わせは、目標設定や評価者研修など仕組みで支えられる
- レジリエンスは本人次第の部分が残るが、育つ環境は組織が用意できる
- これからの育成は、耐えさせるから、立て直せる人を育てるへ
まずは、目の前の相手がどの局面にいるのかを見分けることから始めてみましょう。耐えるべき場面なのか、立ち直りを支える場面なのか。その見極めが、育成の質を大きく変えていきます。
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