自社調査(2026年5月実施・正社員489名)/監修:平康慶浩(セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役)
公開日:2026年6月15日
御社で最近退職した社員の「本当の理由」はなんでしょうか。
私たちセレクションアンドバリエーションは2026年5月、全国の正社員約500名を対象に「離職検討と人事評価に関する意識調査」を実施しました。直近1年以内に離職を検討した人は42.4%。その理由を見ていくと、人事の常識が少しずつ変わりつつある様子がうかがえます。
調査結果の分析
離職検討理由の最多は「評価に納得できない」38.7%
離職を検討した理由(複数回答)の上位は次の通りです。


最も多かったのは「評価に納得できない」の38.7%でした。次いで「求められる成果が重すぎる」が33.5%で、「給与水準への不満」の31.6%をわずかに上回っています。一方、かつて離職理由の定番とされた「労働時間が長い」は14.2%、「休日・休暇が取りにくい」は9.9%にとどまりました。
働き方改革を経て労働時間の問題が一定程度改善された結果、社員の不満の中心が「時間」から「評価と成果」へ移りつつある――そうした傾向がみてとれます。残業対策が一巡した企業にとって、次の論点は「働いた分がどう評価され、どう報われるか」に移っているのではないでしょうか。
年代別に見ると、20代では「評価に納得できない」が44.1%とやや高くなりました。転職が当たり前になった世代ほど、評価への違和感を我慢せずに行動へ移しやすいのかもしれません。
フィードバック面談の「時間」と離職意向に関連がみられる
評価への納得感は何と関係しているのでしょうか。今回の調査では、評価フィードバック面談の「時間」との間に興味深い関連がみられました。


面談を受けていない社員の離職意向は48.6%。面談10分未満では41.5%、10〜30分未満では29.3%、30分以上では17.8%と、面談時間が長い層ほど離職意向が低い傾向が表れています。その差は約2.7倍です。
もちろん「評価が低かった人ほど面談を避けられているだけ」という可能性もあります。そこで評価結果別に確認したところ、評価が「期待を下回った」社員でも、30分以上の説明を受けた層の離職意向は22.1%にとどまりました。逆に、評価が「期待通り以上」でも面談がなかった層では39.4%でした。
因果関係まで断定することはできませんが、少なくとも今回のデータからは、離職意向を左右しているのは評価の「結果」そのものよりも、「説明を受けたかどうか」というプロセスである可能性が示唆されます。
調査票の主な項目
本調査では、全国の20〜59歳・正社員500名(従業員数50名以上の企業に勤務)に対し、次の項目を尋ねました。
- 直近1年以内の離職検討の有無(Q1)
- 離職を検討した理由(複数回答・最大の理由)(Q2・Q3)
- 直近の人事評価結果への期待との比較(Q4)
- 評価フィードバック面談の有無と所要時間(Q5)
- 面談での評価理由の説明と納得感(Q6)
- 評価結果の処遇(給与・賞与・昇格)への反映に関する理解(Q7)
- 現在の離職意向(Q8)
- 納得できる説明があった場合の勤続意向(Q9)
弊社の提言:評価制度を変える前に、評価の「運用」から
この結果は、私たちが日々のクライアントワークの中で感じてきた体感と、とても近いものでした。
人事コンサルティングの現場では、「制度を変えれば納得感が上がるはずだ」というご相談をよくいただきます。そのお気持ちはよくわかります。ただ、実際にプロジェクトをご一緒すると、納得感を左右しているのは制度の精緻さよりも、「誰が、どれだけの時間をかけて、どう説明するか」という運用の質であるケースが少なくありません。
私がかねて感じてきたのは、日本企業の評価の課題は制度そのものより一次評価者の環境にある、ということです。評価者である課長たちは、プレイヤー業務を抱えたまま10名前後の部下を評価しています。面談に30分かけたくても、物理的にかけられない。これは管理職個人の怠慢というより、組織設計の問題と捉えたほうが実態に合うように思います。
実際、制度はそのままに評価者研修とフィードバック面談の定着を先行させたところ、若手の離職率が落ち着いていったクライアント企業もあります。今回の調査結果は、そうした現場の手応えを数字の面から裏づけてくれるものでした。
そのうえで、まず着手しやすい打ち手を3つ挙げるとすれば、次のようになります。第一に、評価フィードバック面談の時間の目安(たとえば30分)を社内で明文化すること。第二に、結果だけでなく「理由」と「次の期待」を伝える面談の型を評価者に共有すること。第三に、評価が処遇にどうつながるかを社員に開示することです。
いずれも制度改定を待たずに始められる施策です。社員が辞める本当の理由が「評価」にあるのだとすれば、打ち手もまた、評価の現場にあるのではないでしょうか。
調査概要
- 調査名:離職検討と人事評価に関する意識調査
- 調査主体:セレクションアンドバリエーション株式会社
- 調査方法:インターネット調査
- 調査時期:2026年5月
- 調査対象:全国の20〜59歳の正社員(従業員数50名以上の企業に勤務)500名
※本調査は、セレクションアンドバリエーション株式会社「働く人の本音調査」シリーズとして継続実施しています。
※本調査結果の引用・転載の際は「セレクションアンドバリエーション株式会社調べ」と出典を明記のうえご利用ください。
監修者

平康 慶浩(ひらやす よしひろ)
セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役。人事コンサルタントとして30年以上、400社超の人事制度改革を支援。著書に『決定版 7日で作る人事考課』(明日香出版社)、『出世する人は人事評価を気にしない』(日本経済新聞出版)など多数。
関連サービス
- 人材育成・定着支援:評価者研修やフィードバック面談の定着支援を通じて、本稿で取り上げた「評価の運用の質」を高め、社員が定着する組織づくりをお手伝いします。
- 管理職・評価者研修:評価理由の伝え方や面談の進め方など、一次評価者が「納得感のある説明」をできるようになるための実践的な研修プログラムです。
- 人事戦略・制度設計:運用改善で課題が見えてきた段階で、等級・評価・報酬の全体をグランドデザインから再構築します。評価と処遇のつながりを社員に説明できる制度をつくります。
本稿に関するお問い合わせ、評価制度の運用改善・評価者研修に関するご相談は、セレクションアンドバリエーション株式会社までお気軽にお寄せください。

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