自社調査(2026年6月実施・正社員512名)/監修:平康慶浩(セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役)
公開日:2026年6月29日
御社で生成AIをいちばん使いこなしている社員は、その分きちんと評価されているでしょうか。
私たちセレクションアンドバリエーションは2026年6月、全国の正社員約500名を対象に「生成AI活用と人事評価に関する意識調査」を実施しました。AI活用の推進はどの企業でも経営課題になっていますが、調査からは、普及の壁が意外なところにある様子がうかがえます。
調査結果の分析
生成AIの業務利用は4割超に、週4日以上のヘビーユーザーは15%弱
まず、業務での生成AIの利用状況です。


業務で生成AIを利用している人は合計42.3%でした。週4日以上のヘビーユーザーは14.8%で、およそ7人に1人にあたります。1年ほど前の各種調査では業務利用は3割前後と報告されることが多かったことを踏まえると、職場への浸透が一段進みつつある様子がうかがえます。
効率化しても「評価に反映された実感はない」が61.3%
注目したいのはここからです。生成AIの利用者のうち67.8%は「業務時間が減った」と効率化を実感していました。では、その効率化は人事評価に反映されているのでしょうか。


「評価に反映された実感がある」と答えた人は18.5%にとどまり、61.3%が「反映された実感はない」と回答しました。生産性を上げた社員ほど報われていない可能性がある、いわば生成AI活用と評価の「ねじれ」ともいえる結果です。
背景を探ると、効率化で空いた時間に「別の業務が追加された」という人が47.9%にのぼりました。また、効率化のやり方を「同僚や上司に共有していない」人は44.5%で、共有しない理由の筆頭は「評価につながらないから」でした。頑張って効率化しても、仕事が積み増されるだけで評価は変わらない。それなら自分のノウハウは抱え込んでおく――そうした合理的な行動が、組織全体への普及を妨げている構図がうかがえます。
もっとも、今回の数値はあくまで本人の「実感」であり、実際の評語や昇給額と突き合わせたものではありません。評価されていても本人に伝わっていないだけ、という可能性も残ります。ただ、仮にそうだとしても、評価が「伝わっていない」こと自体が運用上の課題といえそうです。
一方で、「AI活用力が評価や処遇に反映されるなら、もっと積極的に活用したい」と答えた人は78.9%にのぼりました。社員側の意欲は十分にあるとみてよさそうです。足りないのはツールでも研修でもなく、評価の仕組みのほうかもしれません。
調査票の主な項目
本調査では、全国の20〜59歳・正社員512名(従業員数50名以上の企業に勤務)に対し、次の項目を尋ねました。
- 業務での生成AIの利用頻度(Q1)
- 生成AI利用による業務時間の変化(Q2)
- 効率化の人事評価への反映実感(Q3)
- 効率化で空いた時間の使われ方(複数回答)(Q4)
- 効率化ノウハウの共有状況とその理由(Q5・Q6)
- 評価項目におけるAI活用・デジタルスキルの有無(Q7)
- 評価に反映される場合の活用意向(Q8)
- 2027年に向けた活用意向(Q9)
弊社の提言:AI研修の前に、評価の「成果の定義」を見直す
この結果は、私たちがクライアントワークの中で感じてきた体感と、とても近いものでした。
「AI推進室をつくり、研修も導入したのに現場が動かない」というご相談をいただくことが増えています。お話を伺いながら評価制度を拝見すると、評価項目が生成AI以前のまま、というケースが少なくありません。労働時間の長さや作業量が暗黙のうちに「頑張り」として評価される一方で、同じ成果を短時間で出すことには、評価上の置き場所がないのです。
これでは、効率化した社員の時間に仕事が積み増され、報われない構造になってしまいます。社員がノウハウを共有しないのは意欲の問題ではなく、評価制度がそうさせていると捉えたほうが、実態に合うように思います。
実際、評価項目に「業務改善・ノウハウ共有」を明記し、削減できた時間の一部を本人の裁量や育成に充てるルールをセットにしたクライアント企業では、AIの利用率や提案件数が目に見えて増えていきました。ツールへの投資より先に、評価の整備が効いた例です。
着手しやすい打ち手を3つ挙げるとすれば、次のようになります。第一に、「時間あたり成果」を評価の前提に据え、同じ成果を短時間で出すことが不利にならないようにすること。第二に、効率化ノウハウの共有を行動評価の項目として明記すること。第三に、削減時間の使い道をあらかじめ決めておき、単純な業務の積み増しにしないことです。
生成AIの普及を妨げているのが評価制度なのだとすれば、それを解けるのも人事です。AI時代の人材戦略は、研修ではなく評価の設計から始めてみてはいかがでしょうか。
調査概要
- 調査名:生成AI活用と人事評価に関する意識調査
- 調査主体:セレクションアンドバリエーション株式会社
- 調査方法:インターネット調査
- 調査時期:2026年6月
- 調査対象:全国の20〜59歳の正社員(従業員数50名以上の企業に勤務)512名
※本調査は、セレクションアンドバリエーション株式会社「働く人の本音調査」シリーズとして継続実施しています。
※本調査結果の引用・転載の際は「セレクションアンドバリエーション株式会社調べ」と出典を明記のうえご利用ください。
監修者

平康 慶浩(ひらやす よしひろ)
セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役。人事コンサルタントとして30年以上、400社超の人事制度改革を支援。著書に『決定版 7日で作る人事考課』(明日香出版社)、『出世する人は人事評価を気にしない』(日本経済新聞出版)など多数。
関連サービス
- 新時代の人材戦略:スキルベースの制度設計や「問いの力」研修など、生成AI時代に必要な組織能力の可視化と育成を支援します。本稿で取り上げたAI活用力の評価への組み込みもこの領域です。
- 人事戦略・制度設計:等級・評価・報酬をグランドデザインから再構築します。「時間あたり成果」を前提とした成果定義の見直しから着手できます。
- 管理職・評価者研修:効率化や業務改善を適切に評価し、部下に説明できる評価者を育てます。新しい評価項目を現場で機能させる要は一次評価者です。
本稿に関するお問い合わせ、AI時代の評価制度・人材戦略に関するご相談は、セレクションアンドバリエーション株式会社までお気軽にお寄せください。

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