東京都を中心に全国で給食事業を展開されるHITOWAフードサービス株式会社が、セレクションアンドバリエーションの支援により実現した評価制度改革と、その成果を紹介します。
制度改定に至るまでの過程や現状、人事コンサルタントたちへの満足度について、嘉村浩社長、人事部向井真史氏、鈴木涼氏に話を聞きました。
私たちの会社は人が財産。従業員の成果を公正に評価する企業風土を作りたい。
—まずどういうことを目的として制度改革を進めようとしたのかお聞かせ下さい。
向井氏:
優秀な人材の確保、管理職であるエリアマネージャーの課題解決能力の向上、総額人件費の管理を一定に保つこと、評価基準、目標、達成度の明確化が当時の課題でした。採用力の向上と各等級に求められることをはっきりする、と。 新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、制度自体の導入が1年後ろ倒しになり、この春から本格的に動き出している状況です。 従業員への説明を終え、新人事制度の給与や等級への置き換えを進めており、正式に運用を開始するのは今年の10月からですが、評価制度については先行して導入しました。
—新しい制度への落とし込みをする際、従業員から新しい仕組みについて説明してほしいなどの声は上がっていましたか?
鈴木氏:
従業員がこの制度を十分理解し、定着するまでには一定の時間がかかるということは想定していました。 そのため、セレクションアンドバリエーションの人事コンサルタントとともに、丁寧な説明会を開催するとともにん、FAQなども作成し、公開してきました。
—人事制度の基本方針設計、詳細設計、制度浸透と、制度の導入に向けて段階を踏んでいく中で苦労された点や意識された点はありますか?
向井氏:
従業員への制度浸透のところでしっかりと時間をかけて説明し、理解の度合いを確認しながら進めることが難しかったというのが正直な印象です。 導入初期は「自分の給与がどう変わるのか」「なぜ評価項目が増えるのか」という率直な疑問も多くありました。 当初はエリアごとに対面で説明する場を設けていましたが、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、リモートでの説明にシフトしました。 オンラインでは参加者の表情や反応を見て説明を加えたり、説明の合間に質問を受けたりすることが難しかったので、今後もアンケート調査やヒアリングなどを通じてフォローを続けていきます。
制度設計の舞台裏 ― シミュレーションと現場感の両立
—制度設計の面においてはいかがでしょうか?
嘉村社長:
制度設計において最も難しかったのは、「理論的に正しい制度」と「現場にフィットする制度」の両立です。 等級別の報酬設計を行う際、課長職を現行等級に当てはめると給与が上昇しすぎるケースがあり、慎重な調整が求められました。 「正しい制度設計」と「組織の現実」の間には、必ずズレが生まれる。そこを経営としてどう吸収するかがポイントでした。 また、制度を導入した瞬間から“人の評価”が変わるわけではありません。 むしろ重要なのは、制度を通じて「評価する人の意識」が変わること。 上司自身が「何を基準に判断するのか」を言語化できるようになってはじめて、公正な評価が実現するのだと思います。
向井氏:
全体でのシミュレーションは行っていましたが、後になって「個別レベルでの検証(バイネーム対応)」が足りなかったと痛感しました。 人事制度改革は、結局“個の現実”に落とし込んでこそ意味があります。 今後は、評価結果と人件費の動向を連動させ、経営指標との整合性を常に検証していきたいと思います。
決め手は課題解決につながる提案
—人事制度改革をする上で、なぜ当社をコンサルタントとして選んだのでしょう?
向井氏:
人事制度の改定を決定してから、多くのコンサルタント会社からご提案をいただきました。実際にお話を聞く中で多かったのが、新しい制度の導入により「定着率の向上」や「段階的な昇給」を実現するというご提案でした。 一方、セレクションアンドバリエーション様からは「人材の循環」に関する仕組みを作るというご提案をいただきました。基準に基づいて人材を公正に評価し、その結果昇給もあれば降給もある、と。 “昇給も降給もある評価”という難しいテーマを正面から扱い、「人を甘やかさず、しかし見捨てない制度」を設計してくれました。 まさにこれは当社が求めていたことでした。適切な評価は、従業員の満足度やモチベーションにつながります。総額人件費の部分にも入り込んでご提案いただけたのが、選定のポイントでした。
—ありがとうございます。優秀な人は適切な処遇によってさらに活躍してもらう一方、残念ながら結果を出せていない人に対しては給料を下げることもある、と。この点は、お伺いしていた課題の解決につながる仕組みとして、当社としてもご提案のポイントとしていた部分でした。
成果 ― 公正な評価が生んだ「納得」と「挑戦の連鎖」
— 改革後、組織にはどのような変化がありましたか?
嘉村社長:
新制度の導入から半年ほどで、社内の空気が明らかに変わりました。 評価面談の回数が増え、上司と部下の会話が具体的になったのです。 「なぜ評価されたのか」「どこを改善すればよいのか」が言語化され、部下の行動が変わっていきました。
ある若手社員は、評価面談後にこう言いました。 「上司から“この半年で君が何を変えたか”を初めて聞けた気がします。」 制度が“会話のきっかけ”になっている──それが最大の成果でした。 一方で、課題もありました。評価を受け入れきれず、一時的にモチベーションを落とす社員もいました。 しかし、その社員が半年後に再評価を受け、「今度は結果で見返します」と笑っていた姿を見て、この制度が正しく機能していると確信しました。「公平」よりも「公正」な会社を目指したい
—人事制度を変えて今後は人材の力が高まっていくと思いますが、御社としての展望をお聞かせください。
嘉村社長:
基本的には、中期計画に基づき連続成長を達成していきます。現在、「食」にかかわる業界を取り巻く経済環境は厳しく、困難を伴う状況でもあります。 そうした中で、労働集約型ビジネスを根幹とする当社が成長していくために、制度改革による人材競争力の向上を武器にしていきたい。一方、超高齢社会に向けて、高齢者福祉での給食事業では労働集約型とは違う事業モデルも考えていきます。
—たしかに高齢化する社会においては高齢者福祉での給食事業は市場規模も広がり、社会への貢献度も高いサービスですね。今後のビジネス展開の中で人材の面でお悩みの点があればいつでもご相談ください。最後に、弊社への感想や要望をお願いします。
向井氏:
スピード感をもって対応していただけたというのが率直な感想です。短期間で「これを出してほしい」「ここは試算してほしい」と、設計段階でお願いした部分に関して、スムーズに対応していただきました。 制度設計上も、従業員の頑張りの有無が明確に評価に反映できるのは、弊社のニーズにそった制度設計になっていると思います。
鈴木氏:
制度設計は裏側の作業が多い中で、レスポンスが早く、「こういう風にしたい」という要望に対し当方の意図を汲んで素早く形にしていただけたので頼もしい存在でした。 課題を解決するスピード感と、弊社への理解度の深さも助かりました。検討段階からプロジェクトを前進させていく過程で全面的にサポートしていただき、非常にやりやすかったです。
嘉村社長:
私たちの会社は人が財産。従業員の力で事業が成り立っています。そのことを大切にし、従業員が努力の結果出した成果を公正に認める企業風土を作ってゆきます。 期待した成果が出せなかった人にはその結果に見合った評価になることを明確にせざるを得ない。「公平」より「公正」にしたいからです。きちんとしたルールがあり、「だからこうなんだよ」と明言してゆきます。 人を扱う会社の人事制度改革という一大プロジェクトに携わっていただき感謝しています。 移行に伴う課題もこれから出てくるはずで、満を持してスタートした後もニーズとマッチしない何かが出てくることも考えられるでしょう。 そのようなギャップがあればその都度修正していけばいいと思います。新人事制度に対する従業員の期待もある中、公正な評価によってモチベーションが高まり、一人ひとりの成長につながるような制度としてしっかり運用してゆけるよう頑張ります。
—ありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。
※所属・肩書等は 取材当時のものを記載しております。
- 企業名
- HITOWAフードサービス株式会社
- 発足
- 1962年(昭和37年)10月
- 資本金
- 1,500万円
- 社員数
- −
- 事業内容
- 高齢者福祉施設・社会福祉施設・学校・保育園・幼稚園・病院・社員食堂での給食/食堂運営