企業ロゴ画像
企業ロゴ画像

木質内装建材メーカーの制度定着支援|評価者研修と評価調整会議の3年

製造業

評価判断の現場に入り込み、新人事制度の運用を定着させる3年間の浸透支援

設立1950年代

従業員約830名(連結)

売上約280億円

提供サービス浸透支援・評価者教育

実施期間24ヶ月以上

支援時期2024年〜2026年

対象層・対象人数管理職、取締役・執行役員

事例サマリー

近畿地方の木質内装建材メーカー(従業員800名規模)が、新しい人事制度を現場の運用として定着させた事例である。セレクションアンドバリエーションが、制度設計に続く後続フェイズとして、評価者研修・被評価者研修の実施と、評価調整会議への継続参画を担っている。

制度改定直後は、評価基準の解釈が本部ごとに異なり、目標の難易度設定にもばらつきがあった。3年にわたり評価調整会議に第三者として参画し、毎回の観察を対応推奨事項として提示し続けた結果、成果評価と行動評価の使い分けが評価者間で整理されてきている。

背景

近畿地方の木質内装建材メーカーである同社は、30年以上運用してきた年功序列型の人事制度を全面改定し、2024年4月から新制度の運用を開始した。管理職には職務等級制度、一般社員には職種別の複線型専門職等級を適用し、あわせて行動評価を新設している。

新制度は、評価の考え方を大きく変えるものであった。保有している能力ではなく発揮している行動を見る、行動評価は昇給と昇格に、成果評価は賞与に反映する、評価は査定ではなく成長支援の場とする。いずれも従来の運用とは前提が異なる。

制度設計段階から、経営層の合意は比較的早期に得られる一方、現場への浸透には時間を要することが見込まれていた。設計フェイズの終盤には、プロジェクトメンバーが全拠点を回り、制度説明会を計20回実施している。

それでも、制度の考え方が評価者一人ひとりの判断に落ちるまでには、実際の評価サイクルを複数回まわす必要がある。本支援は、その期間を対象としたものである。

課題(Before)

近畿地方の木質内装建材メーカーである同社において、新制度の運用開始後に確認された課題は次のとおりである。評価調整会議への参画を通じて、当社が毎期観察したものである。

1.目標の難易度設定の基準が、本部ごとに異なっていた。日常反復業務であっても相応の専門知識を要する業務をどう位置づけるかの判断が分かれ、部門間で評価の重みが揃わない状態を招いていた。

2.期初の目標設定そのものが甘く、達成のレベル感が本部ごとにずれていた。期末の評価調整で議論すべき点が、実は期初の設定に起因していた。

3.管理職の目標にルーティン業務が設定される例があった。現状維持を目標に置くことは、環境が変化する局面では実質的な後退を意味する。

4.評価段階の使い分けが揃っていなかった。特に「目標を完全に達成した」段階と、その一段下の段階の境界の解釈が評価者ごとに異なっていた。

5.評価ランクに対する受け止めが硬直していた。標準評価を「できていない」と捉える意識が残り、フィードバック面談の運用にも影響していた。

6.副本部長・次長といった、役割が曖昧になりやすい階層の管掌が本部ごとに整理されていなかった。管掌が定まらなければ、目標も評価基準も定まらない。

7.人材育成を成果目標に組み込むかどうかの扱いが、本部ごとに分かれていた。生産部門では設定され、営業部門では設定されていないという状態であった。

8.行動評価において、評点と評価理由の記述が整合しない例が見られた。高い評点を付けながら、理由欄には不足への対応を期待する内容が記載されるといったケースである。

9.高度専門職に何を求め、何ができれば評価されるのかが定義しきれていなかった。所管外の本部長が評価の妥当性を判断できるのかという論点も生じていた。

目的と設計方針

セレクションアンドバリエーションは、近畿地方の木質内装建材メーカーである同社の定着支援にあたり、研修の実施回数を増やすことではなく、評価者の判断が実際に行われる場に入ることを方針とした。

設計方針の第1は、評価調整会議に第三者として継続参画することである。研修は評価者が学ぶ場だが、評価調整会議は評価者が判断を下す場である。実際の判断のばらつきは、判断の現場でしか観察できない。

設計方針の第2は、観察を対応推奨事項として毎期文書化し、ルール化すべきものと研修で扱うべきものに分けることである。すべてを研修で解決しようとすると、評価者の負担だけが増え、判断の基準は揃わない。

設計方針の第3は、翌期の研修テーマを、その期の評価調整会議での観察から決めることである。汎用的な評価者研修ではなく、その組織で実際に起きているずれを扱う。

設計方針の第4は、制度の積み残し課題を並行して処理することである。諸手当や再雇用制度など、制度改定時に検討を先送りした領域を、内外環境を踏まえて整理する。

実際に構築した制度のポイント

近畿地方の木質内装建材メーカーである同社で構築した運用の仕組みは、次のとおりである。

1.評価者研修を年3回のサイクルで設計した。期初前、半期末前、年度末前の3タイミングに置き、評価サイクルの節目ごとに必要な知識を提供する構成である。

2.評価者研修は各回とも対面で、1回あたり30名程度の4グループに分けて実施した。ワークショップを成立させるための人数設計である。

3.研修内容を評価実務の流れに沿って配置した。第1回は新制度と評価の目的の理解および目標設定、第2回は日々の部下とのコミュニケーション、第3回は期末評価とフィードバック面談を扱う。

4.被評価者研修を非管理職層に対して実施した。評価される側が制度の目的を理解していなければ、面談は成立しない。

5.役員層に対するマネジメント研修を実施した。評価の考え方を経営層から共有することで、現場の運用に一貫性を持たせるためである。

6.評価調整会議に、当社コンサルタントが第三者として参画する運用を設けた。議論の内容と評価者の判断傾向を記録し、当日の所見としてまとめる。

7.評価調整会議の所見を、対応推奨事項として整理する形式を定めた。各論点について、社内統一的なルールの明記が必要か、評価者研修や広報を通じた運用の徹底で対応するかを区分して提示する。

8.対応推奨事項を期をまたいで継続管理する形式とした。前回提示分について、対応済み・未対応・今後対応のいずれであるかを次回の会議で再提示する。論点を積み残さないための仕組みである。

9.評価調整会議での観察を、翌年度の評価者研修のテーマ設定に直結させた。目標設定のばらつきが最大の論点であった年度には、研修を目標設定に特化させ、本部長役・部長役・課長役・係長役の順で目標をブレイクダウンするロールプレイを中心に構成した。

10.研修中の質問に講師がその場で回答する形式とした。評価者が抱える具体的な迷いを、持ち帰らせずに解消するためである。

11.制度改定時の積み残し課題として、生活関連手当を含む諸手当の目的・対象・支給額を見直した。

12.同じく積み残し課題として、再雇用制度を整理した。社会情勢と今後の人員構成を踏まえ、シニア層の処遇のあり方を労使双方の観点から検討した。

導入後の変化

近畿地方の木質内装建材メーカーである同社では、2024年の新制度稼働以降、複数回の評価サイクルを経ている。以下は、当社が評価調整会議に継続参画するなかで直接観察した事実と、同社が公開している情報に基づく。

1.評価調整会議の議論の質が回を追って変化した。初回は評価段階の刻み方そのものに議論が集中していたが、次回には相対調整を基本としつつ貢献の大きさに踏み込んだ議論が行われるようになった。評価基準の理解が進まなければ、貢献の中身を議論する段階には入れない。

2.成果評価と行動評価の使い分けが整理された。当期の目標とそのためのパフォーマンスを成果で、行動の再現性を行動で見るという区分が、評価者間で共有されつつある。両者を分けて処遇に接続した設計が、運用の言語として定着してきている。

3.組織成果への意識が高まった。個人が努力したかどうかではなく、結果として組織にどのような貢献をもたらしたかという観点から評価理由が語られるようになった。行動評価を昇給・昇格に接続する設計は、組織への貢献を見る視点を要求する。

4.結果が伴わなかった場合に、プロセス面をどう評価するかという議論が生じるようになった。評価を査定から成長支援へ転換するという制度の目的が、評価者の言葉として現れている。

5.階層を踏まえた目標設定の意識が高まった。全員に同じ目標を課すのではなく、階層定義に照らして、どの等級以上に何を求めるかを議論する運用へと変わっている。管理職に職務等級制度を採用し、階層ごとの職責を定義した設計が前提として働いている。

6.積み残しの論点が可視化された。副本部長・次長層の管掌整理や、高度専門職の定義といった、制度設計時に確定しきれなかった論点が、毎期の対応推奨事項として継続的に俎上に載っている。運用のなかで論点が消えずに残る状態そのものが、仕組みとして機能している証左である。

7.同社は2025年度も評価者研修を継続している。制度稼働から2年以上が経過してなお研修を続けているのは、制度が完成物ではなく運用の対象として扱われているためである。

8.同社の人事部門は、継続的な評価者研修と教育体系の整備を今後の課題として掲げている。支援の主体が、外部から社内へ移りつつある。

人事制度が現場で機能するかどうかは、設計の精度ではなく、評価者が判断に迷ったときに立ち返る基準があるかどうかで決まる。セレクションアンドバリエーションは、同社の評価調整会議に第三者として入り続けることで、その基準を毎期言語化してきた。

本プロジェクトの特徴

1.研修ではなく、評価が決まる場に入った。

一般的には、制度導入後の定着支援は評価者研修の実施が中心となる。研修は成果物が明確で、実施回数として管理しやすいためである。本案件では、研修に加えて評価調整会議への継続参画を支援の柱に据えた。判断のばらつきは、評価者が実際に評点を決める場でしか観察できないためである。研修で「基準を揃えましょう」と伝えることと、実際にどの発言でどの評点が動いたかを見ることは、得られる情報の精度が違う。

2.観察を、ルール化と研修に振り分けた。

一般的には、運用上の課題は「評価者教育の徹底」として一括りに処理されがちである。本案件では、毎期の観察を対応推奨事項として文書化し、各論点について社内統一的なルールの明記が必要か、研修や広報での運用徹底で足りるかを区分して提示した。難易度設定の基準のように、判断の余地を残すこと自体が不揃いを生む論点は、ルールとして書かなければ揃わない。教育で解ける問題と、設計で解くべき問題を分けることが必要である。

3.前期の論点を、次期の会議で再提示した。

一般的には、運用改善の提言は年度ごとに独立して行われ、翌年には別の論点に置き換わる。本案件では、前回提示した対応推奨事項について、対応済み・未対応・今後対応の別を次回の会議で改めて提示する形式を採った。論点が消えずに残ることで、組織として何を先送りしているかが可視化される。定着支援は、指摘の新しさではなく、同じ指摘を続けられるかで成果が決まる。

4.研修テーマを、その組織で起きているずれから決めた。

一般的には、評価者研修は評価エラーの類型や面談技法といった汎用カリキュラムで構成される。本案件では、評価調整会議で目標設定のばらつきが最大の論点として浮かび上がった年度に、研修を目標設定に特化させた。さらに、当年度の全社方針を題材とし、本部長役から係長役まで階層を追って目標をブレイクダウンするロールプレイを中心に置いた。汎用的な正しさより、その組織で実際に揃っていない一点に時間を使うほうが、翌期の評価は変わる。

担当コンサルタント: 柳瀬 大地瓜阪 彰悟平康 慶浩

評価調整会議に第三者として入り続けるかどうかは、ご提案時に迷った点でした。研修のほうが成果物としてはわかりやすいためです。それでも会議への参画をお願いしたのは、評価者の判断が揺れる瞬間は、その場でしか見えないからです。毎回の所見を対応推奨事項としてお渡しし、前回分の進捗も併せてご提示するようにしています。同じ論点を何度でもお伝えできる関係が、定着支援では最も大切だと考えています。

よくあるご質問

Q1. 人事制度を改定したあと、評価者研修は何回くらい必要か。

年間3回を1サイクルとし、複数年継続することを推奨している。評価は年間を通じた業務であり、期初の目標設定、期中のフォロー、期末の評価とフィードバックでは、評価者が必要とする知識が異なるためである。本事例では、期初前・半期末前・年度末前の3タイミングで実施し、制度稼働から2年以上が経過した年度も継続している。1回で終える研修は、制度の説明会と変わらない。

Q2. なぜ評価者研修だけでなく、評価調整会議への参画まで行うのか。

研修だけでは、評価者の判断がどこでずれているかを特定できないためである。研修は評価者が学ぶ場であり、評価調整会議は評価者が判断を下す場である。本事例では、コンサルタントが評価調整会議に第三者として参画し、どの論点で議論が分かれ、どの発言で評点が動いたかを記録して、対応推奨事項として提示している。ずれの実物を見なければ、翌期の研修テーマは決められない。

Q3. 評価のばらつきは、評価者教育で解決できるのか。

すべては解決できない。ばらつきには、評価者の理解不足に起因するものと、制度上の判断余地に起因するものがある。前者は研修で扱えるが、後者はルールとして明記しなければ揃わない。本事例では、目標の難易度設定の基準のように、判断余地が不揃いを生んでいた論点については社内統一ルールの明記を推奨し、評価段階の使い分けのように解釈の共有で足りる論点は研修で扱うという振り分けを行った。

Q4. 期末の評価がばらつく最大の原因は何か。

期初の目標設定である。期末に評価がばらつく場合、その多くは、目標の水準と難易度が期初の時点で本部ごとに揃っていないことに起因する。本事例でも、評価調整会議での議論を通じてこの構造が明らかになったため、翌年度の評価者研修を目標設定に特化させ、当年度の全社方針を題材に、本部長から係長まで階層を追って目標をブレイクダウンするロールプレイを実施した。期末の評価をそろえたければ、期初に投資する。

Q5. 標準評価を「ダメ」と受け取る風土は、どう変えられるのか。

評点の定義を変えるだけでは変わらず、フィードバック面談の運用と併せて扱う必要がある。標準評価が期待どおりの遂行を意味することは制度上明記できるが、受け止め方は上司がどう伝えるかで決まる。本事例では、評価ランクに対する意識改革を対応推奨事項として継続的に提示し、面談でのフィードバックを通じて認識を変えていく方針を採った。あわせて期初・期末に加え四半期ごとのフォロー面談を制度化し、評価が年1回の通告にならない運用としている。

Q6. 高度専門職や、役割が曖昧な中間階層は、どう評価すればよいか。

期待役割を個別に明文化し、社内で合意することが先である。評価基準を先に作っても、何を求めるポジションなのかが定まっていなければ運用できない。本事例では、副本部長・次長といった管掌が曖昧になりやすい階層について本部ごとの管掌整理を推奨し、高度専門職については、役割をこなすのではなく生み出すことが求められるポジションである旨を整理したうえで、在職者ごとに期待を明文化して社内で合意・伝達することを提案している。