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生損保代理店の早期人材育成|営業研修体系構築とマニュアル化、運用の実践

金融・保険業

単月黒字達成のための業務改革プロジェクト(キャリアパス構築と教育体系構築)

設立非公開

従業員非公開

売上非公開

提供サービス教育体系構築

実施期間4ヶ月

支援時期2013年

対象層・対象人数全社

事例サマリー

各種損害保険・生命保険の総合販売代理店(支援当時 従業員約50名)に対し、セレクションアンドバリエーションが新入社員の早期戦力化を目的とした教育体系を構築した。同社はその後120名規模へ拡大している。

背景

各種損害保険および生命保険を扱う総合販売代理店であり、電話を起点とした営業活動を主力としていた。支援当時の従業員規模は約50名である。

同社は営業人員を短期間で倍増以上に増やす計画を持っていた。事業側の計画は明確であり、採用も継続していた。制約になっていたのは、入社した社員が成果を出せる状態に至るまでの過程である。

その過程は、配属先の上司と先輩によるOJTに委ねられていた。指導の順序も密度も指導者ごとに異なるため、増員するほど育成の質が薄まる構造にあった。増員計画の実現可能性は、採用力ではなく育成の設計に依存していた。

課題(Before)

支援当時 従業員約50名の同社において、育成に関する課題は次の7点であった。

1.新入社員の育成が配属先のOJTに依存していた。指導の順序も基準も指導者ごとに異なり、成長速度が配属先の当たり外れに左右される状態だった。

2.営業の進め方が個人の経験知にとどまり、組織としての共通言語がなかった。指導する側とされる側が同じ現象を別の言葉で語るため、振り返りの会話が噛み合わなかった。

3.「一人前」の定義が存在しなかった。試用期間の合否を印象で判断せざるを得ず、判断が遅れるほど本人にとっても会社にとっても損失が大きくなった。

4.保険募集人資格の取得が営業活動開始の前提であるにもかかわらず、取得までの学習支援が個人任せになっていた。入社から稼働までの期間が事前に読めなかった。

5.研修を実施しても、翌週の行動が変わらなかった。座学の理解度は確認できても、それが実務の行動量に接続しているかを確認する仕組みがなかった。

6.増員計画に対して指導者の時間が不足していた。営業成績を負う管理職が育成も担うため、増員するほど指導が後回しになる構造だった。

7.入社後のキャリアの見通しが提示されていなかった。役職・処遇・資格取得の関係が示されないため、定着する理由が目先の収入だけになっていた。

目的と設計方針

セレクションアンドバリエーションが設定した目的は、増員計画に育成の供給能力を追随させることである。研修の質を高めることではなく、育成の速度と再現性を確保することを主眼に置いた。設計方針は次の7点である。

1.育成の進捗を、在籍期間ではなく行動実績で管理する。「3か月経ったから一人前」ではなく、「基準を満たしたから次へ進む」という判断構造にする。

2.教育体系を、入社準備期間・試用期間・正式採用後の3期に分割し、各期のゴールを1つに絞る。同時に複数の目標を置かない。

3.研修の単位を、営業プロセスの分解単位に一致させる。研修名と実務の工程名を一致させることで、学んだ内容がどの場面で使えるかを説明不要にする。

4.合格基準を数値で定義し、不合格時の再受講を例外処理ではなく標準動作として組み込む。

5.講師と評価者を、外部コンサルタントから社内の管理職へ段階的に移す。増員に比例して外部費用が膨らむ構造をつくらない。

6.キャリアパスと資格体系を、新入社員向け研修資料そのものの中で可視化する。制度設計側の資料に閉じない。

7.研修を「業務」として明確に位置づける。受講姿勢そのものを最初の研修項目として扱う。

実際に構築した制度のポイント

同社において構築した教育体系の骨格は、3期構成と数値化された合格基準にある。

1.3期構成の教育体系。入社準備期間は保険募集人資格の取得を単一のゴールとし、試用期間は結果を出せる営業への到達を、正式採用後は個人の成長と会社の成長の両立をゴールとした。

2.営業プロセスに対応した研修分割。顧客との接点を「アプローチ」「ニーズ喚起」「リサーチ」「送付実務」に分解し、営業スキルアップ研修を前3工程に一対一で対応させた。

3.営業の共通言語の定義。同意の積み重ね(YES取り)、承認、反論対応(アウト返し)の3つを全研修に共通する基本動作として置き、指導と振り返りの語彙を統一した。

4.テストと実績確認の二重判定。研修当日に理解度テストを行い、翌週月曜の時点で実務の行動実績を集計する。両方を満たして初めて次の研修に進む構造とした。

5.合格基準の数値化。1日あたりの通話件数、一定時間以上の会話が成立した件数、資料発送件数、発送後の再接触率と説明実施率など、工程ごとに先行指標を設定した。

6.不合格時の再受講ループ。基準に届かない場合は同一研修を再受講する。期間で区切って次工程へ送り出さない設計とした。

7.運用サイクルの固定。開催日を月初に決定して掲示し、週内の定曜日に講義とテストを実施、翌週初に実績を集計する。個別調整を発生させない運用とした。

8.正式採用後の実務研修。保険申込書研修は記入不備の連続ゼロ件数を、対面提案研修は管理職によるロールプレイ確認と同行営業での受注を修了要件とした。

9.キャリアパスと資格体系の可視化。営業社員から主任・係長・課長へ至る段階と、各段階で受講する研修、公的資格の体系を1枚に整理し、新入社員研修の初日に提示した。

10.移行と浸透。初期の講義は外部コンサルタントが担当し、社内の管理職を同席させた。あわせて研修期間を短縮した試行版を運用し、講師役と補習運用を社内へ引き継いだ。

導入後の変化

教育体系は2013年に稼働し、以降の増員局面で運用された。

1.組織規模が約50名から約120名体制へ拡大した。教育体系は、増員のたびに指導内容を組み立て直す必要をなくし、指導者の時間を営業活動側に残す条件を提供していた。

2.育成の合否判断が共通化された。試用期間中の判断が「印象」から「基準への到達」に置き換わったため、判断の時期と根拠が指導者間で揃った。

3.指導の担い手が現場の管理職に移った。講義と実技確認を係長・課長が担う運用としたことで、育成が外部依存でも人事部門依存でもない状態になった。

4.研修の所要期間を短縮する試行が行われた。標準の研修工程を1週間半に圧縮し、実践に時間を配分する運用が検証された。基準が数値で定義されていたため、期間を変えても到達水準を落とさずに済んだ。

5.その後、同社は中堅規模の生損保代理店による買収を経て、事業を継続・拡大している。育成の手順と到達基準が文書化されていたことは、営業組織を統合する局面において、指導方法を一から擦り合わせる作業を減らす条件となる。

人材育成の仕組みは、導入時点の網羅性ではなく、増員と組織の変化に耐えたかどうかで評価される。セレクションアンドバリエーションが構築した3期構成と数値基準の骨格は、同社が50名規模から120名規模へ移行する過程で運用された。

本プロジェクトの特徴

1.研修は内容の充実度で評価されがちである。本案件では、合格基準を研修翌週の行動実績に置いた。営業職の成果は行動量が先行指標であり、理解度テストだけでは実務への転換を確認できないためである。

2.新人育成は期間で区切られがちである。本案件では、基準に到達するまで同一研修を再受講する構造にした。期間で区切ると、到達していない社員がそのまま実務に出ることになり、結果として離職と教え直しの双方が発生するためである。

3.教育体系は完成させてから展開されがちである。本案件では、初版の段階で運用を開始し、短縮版の試行を並行させた。増員のスピードに追随することが目的である以上、体系の完成を待つこと自体が機会損失になるためである。

4.研修の講師は外部か教育部門が担いがちである。本案件では、初期から管理職を講師席に同席させ、実技確認の判定者を管理職とした。人員が倍増する前提の組織では、育成コストが人数に比例して増える構造を残せないためである。

5.キャリアパスは制度設計側の資料になりがちである。本案件では、役職・処遇・公的資格の関係図を新入社員向け研修の冒頭に置いた。先の見通しを最も必要とするのは入社直後であり、定着の判断がその時期になされるためである。

担当コンサルタント: 平康 慶浩

最も判断を要したのは、合格基準をどこに置くかでした。テストの点数で区切るほうが運用は楽ですが、それでは翌週の行動が変わりません。そこで通話件数や会話が成立した件数といった、その日のうちに本人が確認できる指標を基準にしました。厳しい基準に見えますが、達成の可否が自分で分かることは、新入社員にとってはむしろ安心材料になります。

よくあるご質問

Q1. 新入社員研修の修了基準は、テストの点数と実務の行動実績のどちらで決めるべきか。
両方を条件とすべきである。テストは理解度を確認できるが、理解が行動に変わったかまでは測れない。営業職の場合、行動量は成果に先行するため、翌週時点の行動実績を併せて基準に置くことで、実務に転換されたかを判定できる。本事例では、研修当日のテストと翌週初に集計する行動実績の両方を満たすことを、次の研修へ進む条件とした。

Q2. なぜ外部研修会社のパッケージ研修ではなく、自社専用の研修体系を構築したのか。
研修の単位を自社の営業プロセスに一致させる必要があったためである。パッケージ研修は内容の完成度が高い一方、研修名と実務の工程名が一致しないため、学んだ内容をどの場面で使うかを受講者が自分で翻訳しなければならない。本事例では顧客接点を4工程に分解し、研修をその分解単位にそのまま対応させることで、翻訳の手間をなくした。

Q3. 従業員50名規模の営業組織でも、教育体系を整える意味はあるか。
増員を計画している場合には意味がある。人数が少ないうちはOJTで足りるが、OJTの供給能力は指導できる管理職の人数と時間に上限がある。増員の速度が指導者の増加速度を上回った時点で育成は破綻する。本事例では、倍増以上の増員計画があった段階で教育体系の構築に着手した。

Q4. 研修の講師は外部の専門家に任せるべきか、社内の管理職が務めるべきか。
立ち上げは外部、定常運用は社内管理職とするのが現実的である。体系の設計と初期の講義は外部の知見が有効だが、外部に固定すると育成コストが受講人数に比例して増え続ける。本事例では、初期の講義に管理職を同席させ、実技確認の判定を管理職が担う運用へ段階的に移した。

Q5. 増員局面で育成が追いつかないとき、まず何から着手すべきか。
研修の追加ではなく、到達基準の定義から着手すべきである。基準が定義されていないと、育成が遅れているのか、判断が遅れているだけなのかを切り分けられない。基準が数値で定義されていれば、研修期間の短縮や配分の変更を、到達水準を下げずに検討できる。本事例でも、基準を先に定義したことで研修工程の圧縮を試行できた。

Q6. 教育体系は何年くらいで作り直す必要があるのか。
体系の骨格と個々の研修コンテンツを分けて考えるべきである。等級・キャリアパスと連動した骨格は5年から10年の耐用年数を持たせられるが、商品知識や法令に関する内容は毎年の更新が必要になる。本事例では、営業プロセスの分解という変わりにくい軸で骨格を組み、商品知識は別枠の勉強会として分離した。