職務記述書(ジョブディスクリプション:以下JD)とは、組織図における各職務やポストについて、求められる成果や行動、必要な能力を記載したものです。ジョブ型雇用における雇用時の契約書であり、昇進や異動時に会社と従業員とで合意するための基準でもあります。職務やポストに人をあてこむための基準ともいえるでしょう。
職務を具体的に定義する性質上、伝統的な日本企業では職務記述書は求められてきませんでした。人に職務やポストをあてこむメンバーシップ型雇用が主体だったからです。
しかし、人的資本経営が叫ばれる現代の企業運営において、スピード感の高い、タイムリーな人材活躍が求められつつあります。人に職務を当て込むメンバーシップ型は長期雇用を前提とした安定的環境で機能しやすいものですから、環境変化が激しい業種においては、JDはもはや必須と言えるでしょう。
単なる雇用管理ツールにとどまらない、組織の成長と個人のキャリア形成を支える重要な基盤として、JDを整備してゆくことが求められているのです。
本ページではJDの作成とその人事評価への展開、そしてセレクションアンドバリエーションがご支援するJD作成の特長について、以下のステップで詳しくご紹介します。
なぜJDを作成するのか?
JDは組織の成長と個人のキャリア形成の方向性を定める、いわば“羅針盤”です。JDを作成することで以下のような効果が期待できます。
1. 数値責任や行動量目標が定まり、評価の納得性を高める
2. 職務習得の網羅性と段階が明確になる
3. ミッションと連動するコンピテンシーとの整合性が確保できる
4. 一人一人の自律的な職務遂行を後押しする
1. 数値責任や行動量目標が定まり、評価の納得性を高める
JDには一般的に、職務ごとに求められる成果、行動、そして能力が定義されます。職務に対して普遍的に求められる成果目標に加え、行動基準や必須能力を盛り込むことで、短期的な成果創出だけでなく、長期的な成長の基準を明確に定義できるのです。
成果に加えてプロセス基準を明確にすることで、業務の進捗が測定可能となり、評価基準が明確化します。例えば、販売職であれば月間の売上目標、エンジニア職であればプロジェクト完遂までのスケジュール管理といった具体的な目標設定が容易になります。
これにより、期末に行う業績評価の納得性も高まり、円滑な事業運営に繋がります。
2. 職務習得の網羅性と段階が明確になる
JDは職務内容を網羅的かつ段階的に整理するため、従業員のスキル向上計画やキャリアパス設計に大きく寄与します。
特に、新人教育時はもちろんですが、キャリアアップを目指す際の、次のポストに求められる成果、行動や能力が明確になることで、自発的な学習も促せるようになるのです。もちろん、職務に必要な知識やスキルが体系化されているため、会社としての教育体系の設計もスムーズになります。
3. ミッションと連動するコンピテンシーとの整合性が確保できる
JDには業務内容だけでなく、企業のミッションやビジョンに基づく行動特性(コンピテンシー)を組み込むことができます。これにより、企業理念と従業員の行動が一致し、組織全体の一体感が強化されます。
たとえば、チームワークを重視する企業では、協働力やコミュニケーション能力がJDに明記され、採用や評価においてもこれらを重視できるようになります。
4. 一人一人の自律的な職務遂行を後押しする
JDは、従業員が自身の役割や期待される成果を正確に把握するための道標です。これにより、上司の指示待ちではなく、自律的に業務を進められる体制が構築されます。
特に、リモートワークの普及が進む現代では、従業員の自律性が重要視されており、JDの整備が組織の柔軟性を高める鍵となります。
JDの作成ステップ
自社にとって有効なJDを作成するためには、適切なステップを踏むことが不可欠です。自社の目指す方向や事業計画を踏まえながら、“どのような業務がある・必要なのか?”、“その業務にどのような成果・行動・能力を求めるのか?“を適切に定義していくことが重要です。
STEP1:事業計画と組織体制の分析
JD作成の第一歩は、事業計画と組織体制を詳細に整理することです。会社として達成したい目標や戦略を明確にし、それに応じた各部署や職務の役割を把握します。このプロセスにより、JD作成の方向性が具体化され、組織全体の調和を図る基盤が整います。
STEP2:組織体制に応じた職務内容の洗い出し
次に、組織体制に基づき、事業別、職種別、階層別に、各職務の内容を洗い出します。
各職務内容に洗い出しのためには、トップダウンアプローチとボトムアップアプローチがあります。組織がまだ小さい状況や、経営層が従業員に求めることが明確な場合には、経営層の想いを反映したトップダウンでの職務内容定義が可能です。
一方ですでに組織が大きくなっていて、各事業ごとに求める詳細な職務が把握しきれない場合には、現場の従業員や管理職へのヒアリングにより職務を定義してゆきます。具体的な業務内容や役割を整理することで、後続のステップでの詳細設計がスムーズに進む基礎が築かれます。
STEP3:職務成果の設定と必要なスキル・知識の特定
各職務に対して、求められる成果や具体的な行動を整理します。
また、成果を達成し、行動するために必要なスキルや知識を能力として特定し、それらを体系的に整理します。このステップにより、JDは具体的で実効性のある内容となり、評価基準としての信頼性が高まります。
STEP4:ドキュメント化と共有
最後に、作成したJDを文書化し、組織全体で共有します。JDが従業員全員に正しく理解されるよう、説明会で考え方を丁寧に浸透させなければいけません。特にこれまで職能やコンピテンシーだけで処遇をしていた場合には、管理職層における十分な理解を得られるまで、丁寧な対話を続けましょう。
この段階では、専門コンサルタントのサポートを受けることで、作業の効率と精度をさらに向上させることが可能です。
エンゲージメントを高めるJDと評価制度への展開
JDで方向付けを行った後は、そこに向けて努力し、結果を出した個人を会社として評価し、報いていくことが肝心です。評価制度と連動することで個人のモチベーション向上につながり、会社の成長や満足感の高いキャリア形成に繋がっていきます。
目標設定・評価
JDを活用することにより、個人やチームの目標設定が具体化・標準化され、達成度の評価がより透明で公平になります。たとえば、営業職のJDに基づいて月間売上目標を設定する場合、その目標は業務範囲や求められる成果に根ざした現実的なものとなります。これにより、従業員は自身の役割に応じた責任を自覚し、上司との評価面談時にも建設的な議論が可能になります。
月例給与・賞与
評価結果は、従業員の給与や賞与にも直結します。JDに基づく評価制度を導入することで、数値目標や行動目標の達成度が報酬に反映される仕組みが確立されます。これにより、成果に基づいた公平な報酬体系が実現し、従業員のモチベーション向上につながります。また、JDで基準を明確にしているため個人の能力の成長を月例給に反映、成果・行動の発揮を賞与に反映といったように、会社の方向性に応じた処遇設計の後押し、納得感醸成にもつながります。
昇降格
昇進や降格の判断においても、JDは重要な役割を果たします。JDに記載されたスキルや成果基準に入学基準や卒業基準の考え方を適用することで、昇降格判断が明確になります。この透明性のある仕組みにより、キャリアアップを目指す従業員は具体的な成長目標を持つことができ、組織全体の成長を促進します。たとえば、管理職への昇格には特定のリーダーシップスキルや業績基準を求めることで、公平で信頼性の高い判断が可能となります。
セレクションアンドバリエーションのJD作成支援の特徴
豊富なコンサルティング実績
セレクションアンドバリエーション社は、大企業から中小企業まで、これまでに300社以上のコンサルティング実績を持っています。この実績を通じて蓄積したノウハウを活用し、業種や企業規模に応じた最適なJD作成を提供します。これにより、どのような企業においても納得感の高いJDを作成することが可能です。
社内外の環境を踏まえた納得感の高いJD作成
セレクションアンドバリエーション社では、クライアントの社内だけでなく、業界や競合他社の環境との比較も行いながらJDを作成します。これにより、職務範囲や責任の適切性を客観的に評価し、従業員と経営陣の双方が納得できる内容を実現します。
人事マネジメント全体から見た全体最適なJD活用
人事制度設計を専門とするセレクションアンドバリエーション社ならではの強みとして、等級制度、報酬制度、評価制度との整合性を考慮したJD作成が可能です。これにより、JDが単なる職務記述に留まらず、組織全体の人事マネジメントと密接に連携した基盤となります。
運用までの手厚いサポート
JDの策定後も、報酬設計や評価制度の設計、さらにJDの定期的な更新に至るまで、運用面でのサポートを提供します。これにより、作成したJDが実際の職務において有効に活用され、継続的な改善が図られます。
JDの作成と人事評価への展開は、組織の透明性向上や従業員のモチベーション向上につながる重要な取り組みです。当社の専門的な支援を通じて、ぜひ効果的な導入を実現してください。