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トピックス

中小企業における人事戦略と人事制度設計

「若手の早期離職が増えていて、どうしたらいいか分からない」
「どうやったら従業員みんなにやる気を出してもらえるのだろう」
本ページでは、人事担当者様の抱えがちなお悩みにお答えいたします。
 
中小企業にとっては、新時代を生き残るための戦略が必須といえる時代となりました。
中小企業は、資本金1億円以下の企業に代表される企業です。
そのような企業が人事の仕組みを整備するとき、どのようなポイントに気を付けるべきなのでしょう?
新しい人事の仕組みを導入するときは、ただセレクションアンドバリエーションのような人事コンサルタントに依頼して、ジョブ型人事制度やOKR、1on1などを取り入れれば良いというわけではありません。
 
本ページでは、資本金1億円以下の中小企業がどのような環境変化に直面しやすいのか、そしてその環境下でどのように勝ち残っていけるのかについて組織・人事戦略の観点からご紹介します。
本ページが、皆様の企業における人事制度改善や経営改善の方向性づくりに役立つことを願っております。

 

INDEX

  1. 中小企業に求められるこれからの人事
  2. 昇給と賞与のポイント
  3. 人事制度のポイント
  4. まとめ
  5. 中小企業の人事制度設計に関するお問い合わせ

 

中小企業に求められるこれからの人事

1990年代までは日本の評価報酬制度に対する考え方は、時間給や生活給、年功序列型、成果主義、といった考え方が中心でした。その後、能力主義を謳った職能給や職能資格制度が普及したものの、運用方法がどうしても年功的にならざるを得ず、大きな変革とはなりませんでした。

 

しかし、2022年現在において、給与体系は様々な変遷を経て多様化しています。年功制度だけではなく、仕事内容や能力、役職などに応じた給与体系が、企業ごとに定められ、運用され始めています。特に、勤続年数に応じて給与が上がっていく年功制度は徐々に排除される流れになっているといえるでしょう。
むしろ、これからは従来の日本型給与体系はますます変化を遂げ、業種、会社ごとの特質によって評価報酬制度を設計していく時代へ移行すると思われます。

 

まずは、中小企業で起こりやすい人事の課題からご紹介します。

 

(1)働かないおじさんの増加

 

Withコロナ、VUCA、70歳就業など、より厳しい環境変化に対応できなくなり、モチベーションが低下したシニアは、「働かないおじさん」と呼ばれています。その一方で、年功的運用がされやすい職能等級制度によって処遇されてきた彼らの給与水準は、確実に若い世代より高額です。
しかし、それに見合う仕事をしているかというと、そうではありません。働かないだけではなく、変に存在感を出そうとして、決まったことにいきなり会議で口を出してかえって混乱させることもあります。働かない「おじさん」が取り上げられるのは、背景に「能力と報酬の不一致」や「実績と期待値の不一致」があるからなのです。

 

そんな働かないおじさん問題は、以前より顕在化しています。

 

セレクションアンドバリエーションは、人事コンサルティング会社として、様々な企業に対して人事評価制度、報酬制度の改訂を行っています。そこで聞く声は、おじさん世代の働く意欲が、昔に比べて下がっている、というものです。新型コロナウイルスの感染拡大に伴うテレワーク・在宅勤務の浸透で、「働かないおじさん問題」の傾向は続くでしょう。

 

なぜ、日本型雇用のもとで、働かないおじさんが生まれるのでしょうか。背景には、以下の3つの変化が存在すると考えています。

 

中小企業の人事戦略~オーナー経営を前提とした変革ポイント~

 

IT技術の進歩、ビジネスライフサイクルの短期化といった社会的背景も一つの要因です。
しかし特に多大な影響を与えているのは、職務内容を決めず、組織の一員として、新卒一括採用後定年まで雇用する代わりに、会社の都合にあわせて仕事内容を決める「メンバーシップ型雇用」だと考えられます。
新卒入社後、管理職に向けて必死に働き、一定の年次になり、上に昇れない人たちは、軸となる専門性が身に付いておらず、報酬にみあった仕事ができない。
それでも、年功序列、終身雇用のもとで、年収があまり落ちず、クビにもならない。
すると、向上心がなくなり、やがて「働かなかないおじさん」となる。
このような構造があるのではないでしょうか。

 

(2)早期離職をする優秀な人材職

 

次の問題は、若者の働く意欲の低下です。特に早期離職に悩む企業は多くあります。
どんな企業にとっても、成長のカギとなる若手人材の早期離職は大きな痛手です。若者の離職率の高さが世間で取り上げられることもしばしばあります。

 

では、若者の離職率は本当に高いのでしょうか。
厚生労働省が2019年10月にとりまとめた調査(新規学卒就職者の離職状況)より、早期離職率の現状を確認しました。早期離職率は、2016年3月卒業者の就職後3年以内の離職率と捉えています。
調査の結果から、大学卒の3割、短大等・高校卒の4割が3年以内に離職をしていますが、直近10年の推移ではほとんど変化がなく、むしろ微減していることが分かりました。

 

中小企業の人事戦略~オーナー経営を前提とした変革ポイント~

 

ここから分かるように、離職率そのものは、実は変化しておらず、むしろ若者は辞めにくくなっていると言えます。
ただし、新規学卒就職者の早期離職率は3割以上で比率は変わっていませんが、離職する人のタイプ・質が大きく変わってきているのです。具体的には、企業がより必要とする優秀な人材ほど会社に見切りをつけるようになっています。せっかく入ってくれた優秀な人ほど、チャンスがあれば転職を考えているのです。

 

では、働かないおじさん問題、早期離職をする優秀な人材を引き留めるための解決策はあるのでしょうか。

 

(3)お金とモチベーション

 

働かないおじさん問題や早期離職をする優秀な人材を引き留めるための解決策として、真っ先に挙がるのは、給与水準の引き上げです。個人の職歴・スキル・業績によって支払われる「給与」や「賞与」は、社員のモチベーションを向上させます。高い給与は、それだけで、「価値の高い仕事をしている」という満足感を社員にもたらすことが可能です。

 

しかし、社員の給与水準を引き上げるだけで、社員は本当にやる気が増すのでしょうか。

実は、給料を上げても社員のモチベーションの維持には一時的な効果しかないという研究結果が出ています。給料は、一つのモチベーションを上げる要因ですが、長くは続かないのです。

 

例えば、あるX年の賞与が60万円で、X+1年目にA評価を取得し、賞与が100万円になったとします。そして、X+2年目の評価はBであり、賞与が60万であったとします。X+2年の賞与は60万円となり実際にはプラスなのですが、X+2年目の本人の心理状態としては、前年は40万円分多い賞与をもらうことができたので、X+2年目も+40万円(計140万円分)の賞与をもらって当然であると考えます。つまり、本人にとっては、「60万円分の賞与がもらえた」、のではなく、むしろ、「40万円賞与が減った」と捉えてしまい、結果的に本人の働く意欲・モチベーションが下がるのです。

 

このことから言えることとして、人は得をするとそれに慣れてしまい、以前よりも受け取る得が減ると損をしたと感じるのです。

 

中小企業の人事戦略~オーナー経営を前提とした変革ポイント~

 

これは2002年にノーベル経済学賞をとった、ダニエルカーネマン氏によって提唱された「プロスペクト理論(*1)」において証明されています。

ゆえに、働くモチベーションをお金で維持しようとするならば、半永続的に給料を上げ続けなければならないことになります。一部の大手企業では年功に応じて半永久的に給与を引き上げることも可能かもしれません。ただし、資本金1億円以下の中小企業においては、事業環境が不安定な上に外部環境の影響も受けやすく、安定した給与・賞与の支給は必ずしも確約できません。加えて、金銭など外部からの報酬によってやる気を引き出す「外発的動機づけ」は、「他社からの高額オファー」といったより魅力的な要因が発生した場合、すぐにとって代わられてしまう可能性が高いです。

 

では、働かないおじさん問題、早期離職をする優秀な人材を引き留めるために、お金を使わずにどうやってモチベーションを高めるのでしょうか。

大事なことは、どんな人に活躍してほしいのかという、自社にとっての「求める人材像」を明確にすることです。そのためには人事戦略を明確に定め、そのために必要な評価制度、報酬制度をはじめとする人事制度を改定しなくてはいけません。

 

(*1)プロスペクト理論とは、不確実性下における意思決定のモデルである。例えば、同額の利得と損失では、利得から得られる満足よりも、損失から生じる苦痛の方が大きいために、損失を利得よりも大きく評価する。また、利得を得ている場合は、その利得を確保するためにリスク回避的な行動をとるが、損失が発生している場合は、それを取り戻すためにリスク選好的な行動をとる、などがある。

 

昇給と賞与のポイント

 

(1)変革のポイント

 

働かないおじさん問題、早期離職をする優秀な人材を引き留めるために、必要な人事制度のポイントは以下の5つです。

 

  • 職務内容がはっきりしている等級制度
  • 会社と個人の成長を一致させる適正な評価制度
  • 行動と実績を反映した昇給・昇格、報酬制度
  • 等級制度・評価制度と連動した教育体制
  • エンゲージメントを向上させる非金銭報酬と運用設計

 

これらを総合的に考えることで、企業は持続的な成長を遂げていきます。企業は、社員それぞれに対し仕事を割り振り、達成させることで、経営目標を達成していかなければなりません。そのためには、経営にとって望ましい行動・パフォーマンスに対してより重点的に報酬配分を行い、社員の関心と努力を適切に方向付けていく必要があります。加えて、評価制度を通じて経営の方向性に合致した努力・行動や成果を認識し、より頑張って成果を上げた人に「戦略的に」報酬を配分する仕組みを備えておく必要があるのです。

 

しかし、いきなり詳細な人事制度設計に移るのではなく、まずは自社全体に危機感を抱かせることが必要です。なぜなら、企業を取り巻く環境が激変していたとしても、働く人たちはいつの間にか内向きになり、その変化の重大さや緊急性を感じられない場合もあるからです。
なぜ「今」変わらねばならないのかを納得できなければ、企業変革と行動変容は決して始まりません。そのために、「危機感の醸成」と「理想像の提供」をまず行うべきなのです。人の行動を変えるには、危機感を与え、理想像をイメージさせることによって変革を促します。

 

(2)変革の実装

 
従業員に危機感を持たせるための評価例を3つご紹介します。
【人事インフラにおける危機感醸成を促す評価例】

  • 1.洗替方式給与

毎年の人事評価に応じて給与を決定する方式です。評価が下がると給与が下がるという意識を与えることができるため、本人に対して危機感を与えることが可能です。

 

  • 2.個人業績と会社業績との区分

個人の業績と会社の業績を区分することによって会社の賞与と個人の貢献度を指標等で具体化することができ、個人の働き方にフォーカスされることとなるため危機感を醸成します。

 

  • 3.市場価値の反映

転職した際の市場価値を示すことで、自身の価値を明確にさせ、転職先がいつでもある状態を作るために学習意欲を向上させ、危機感を生み出します。危機感を反映する人事項目としては、①昇給方式、②平均昇給額、③賞与を決める評価、④年収水準調整の有無などがあります。これらの指標を世の中の平均や業界の平均と比べてどうなっているのかを確認し、危機感を醸成する指標となっているか、改めて自分たちの位置確認することが大切と言えるでしょう。

 

このように、給与が下がる可能性を示すことが、危機感を持たせるポイントになります。ただし、減る可能性だけでなく、増える可能性についても併せて示すことが必要です。その上で、今自分たちの現状を把握し、将来どれを反映すると危機感を与えられるか、という目線が大事になります。社員自身に希望をもたせるためにも、将来手にする金額を示すことも大切です。

 
危機感の醸成と併せて、成長可能性を示すことも大切です。
社員を成長させるためのポイントは、以下の3つです。
【成長ポイントの例】

  • 1.若者層給与立上

30歳時点での支給額を年収の絶対額で示します。一般的には、30歳時点で男女合わせて1000万円が望ましいです。30歳以降の給与設定や調整も考慮する必要がありますが、まずは、30歳時点での給与額を増やす重要性は大きいでしょう。

 

  • 2.管理職初任年収の市場水準化

ここでは管理監督者を部長級(全社員の10%程度)とします。管理職就任時の年収額で魅力を示すことで、優秀な若者の成長意欲を促します。

 

  • 3.専門性に対する手当

近年、専門性に対する論点がクローズアップされます。専門性の重要性はVUCA時代を生き残る上では必須と言えるでしょう。専門性を持った人材を採用し、育成するために、特別専門性に対する手当を設置します。専門性を伸ばせば手当が出るため、学びなおし意欲の促進にもつながります。

 

若者の離職、管理職の生産性低下は、いずれも転職可能性との対比で起きる問題です。上記のとおり、危機感を持たせながら、成長ポイントを促すことが、昇給と賞与のポイントです。

しかし、給与の仕組みだけを変えようとしても、他の人事の仕組みが連動していないと若者の離職、管理職の生産性低下を防止することは難しいことも事実です。

 

人事制度のポイント

 

(1)自発的に改善、成長するようになる評価制度

 

評価制度は、「自分で目標を立てて、その達成度を評価し、賞与や給与に反映させるもの」という理解が一般的です。しかし、評価制度をこのように理解すると、「目標の立て方によって不公平が生じる」、「頑張った努力が認められない」、「達成度には運がつきまとうので不公平だ」といった不満が生じ、不公平感が高まります。

 

本来の評価制度のあり方は、評価結果が何に使われるか、という観点で考えると分かりやすいです。評価制度は、「人を伸ばすために経験学習サイクルを伸ばすためのもの」であり、「上司が部下を育てる」ためにあるものです。ゆえに、本来の評価制度の目的は、「成果を出した者を評価する」というものではなく、企業・事業の目標を社員みんなで達成するためなのです。

 

そして、これらが処遇(給料・等級)、人材育成・能力開発に活かされます。
評価の仕組みとは、経営からの意思やミッションに応じて、社員への期待を明確にし、期中・期末の面談を設けて成長の創出を図ることです。みなさまの会社では、企業・事業目標を落とし込んだ評価制度の仕組みが構築されているでしょうか。今一度ご確認ください。

 

中小企業の人事戦略~オーナー経営を前提とした変革ポイント~

 

 

(2)やるべき仕事を明確にする等級制度

 

等級制度が人事制度の核となります。
なぜなら、社員に対して、何を期待するかを明示することが等級制度であるからです。

等級制度とは、企業のミッション(組織の存在意義、使命)から導き出された経営計画を、個人レベルの役割に割り振り、これを等級として設定し、その役割に基づいて目標設定、業務遂行と成果測定を行うです。

等級制度は何のためにあるのか?これは、等級制度が「ない」状態を考えるとわかりやすいです。

 

等級制度が「ない」状態を想定すると、以下のような不都合が生じるはずです。

  • 給与(特に基本給)を決めにくい。
  • 会社から、各人への期待(例えば、このグレードだからこれくらいやってほしい)が伝わりにくい。結果、育成もしにくい。
  • 社員から見て、給与含むキャリアプランが描きにくい。
  • 配置にあたっての公平感が出にくい。

 

社員が5人の場合、特に等級制度がなくてもこのような問題は発生しないでしょう。
ただし、社員が20人、30人を超えてくると、全社としての「基準」を明示しておかないと上記のような不都合が生じると考えられます。公正公平な人事のために、等級制度があるのです。

 

まとめ

バブル崩壊後の1990年以降、企業の継続的な成長が見込めなくなりました。また、急激に変化する経営環境に対応するための人事施策として、成果主義的要素を取り入れる会社が増えていきました。

 

しかし、成果主義的な報酬制度を取り入れた結果、短期的業績の過度な偏重や、中長期的な取り組みの軽視、チームワークの衰退などの課題が生じ、当初の目的を果たせないまま運用を続けているケースも多く見られます。
また、運用面でも、職務に求められる責任の曖昧さや評価能力の未熟さなどを理由に、納得感を得られずに上手く機能できていないケースが多く散見されます。その結果、年功的な報酬メカニズムが残ってしまい、過度な人件費の高騰に頭を悩ます企業も少なくありません。

 

このような実態を踏まえ、報酬制度改定においては、企業の経営・人事方針、人員構成と人件費増加の見通し、人事制度運用の背景、評価者の説明能力の実態、社員の成熟度などを適切に把握した上で、それに適した報酬制度を個社の事情に合わせて設計していくことが求められます。

中小企業の人事戦略~オーナー経営を前提とした変革ポイント~

 

さらなる成長に向けて

多くの会社では、既存ビジネスを伸ばすことが戦略の軸になっており、イノベーションが起きづらいという課題に直面しています。既存事業の成長が鈍化していく時代に、イノベーションを生み出す人事制度設計は重要です。

既存事業の利益拡大および、新規事業において新たなキャッシュ創出を図ることで企業の持続的な成長が期待できます。その時に、評価を適切に運用し、自社の経営戦略に応じた等級制度や報酬制度を設計していくことが大切です。

 

5.中小企業の人事制度設計に関するお問い合わせ

今、あらゆる経営改革の場面において、人事制度の改革は欠かせません。新しい経営戦略のフレームワークがどのような形であれ、実現するのは人だからです。
皆様も自社に当てはめて、イノベーションを生み出し、既存事業を回していく人事の仕組みを考えてみてはいかがでしょうか。今からでも行動に移すことが何よりも重要だと思います。

セレクションアンドバリエーションは特に売上高100億円~500億円規模の中小企業における人事制度改革を得意とする、組織人事コンサルティング会社です。
確実な行動変革による成長を実現するため、個別事情に合わせてオーダーメイドでご支援いたします。

セレクションアンドバリエーションでは、皆様の状況に応じた個別のご相談も随時受け付けておりますので、気兼ねなくご連絡ください。

 

>>中小企業の人事制度設計に関するお問い合わせはこちらから

 
 

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セレクションアンドバリエーション株式会社 代表の平康慶浩(ひらやすよしひろ)による、日本経済新聞社サイトNIKKEI STYLE連載でも企業における人事戦略について言及しています。

 

 

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