急成長を目指すベンチャー企業に必要な人材マネジメント(分析から考察~実施策まで公開します) | 人事制度設計と人材育成の人事コンサルティング会社 セレクションアンドバリエーション
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急成長を目指すベンチャー企業に必要な人材マネジメント(分析から考察~実施策まで公開します)

 

当社ではこれまで100社以上の企業の人事制度構築を支援してきました。

それらの企業を一定の群に分けると、共通した人事課題が見えてくることがしばしばあります。

特に最近では、上場を目指す小規模企業や急成長し上場を果たしたベンチャー企業の人事制度設計に携わる機会も多く、「ベンチャー企業の人材マネジメント」に関するお悩みを聞くことが増えました。

このページでは、急激な成長を目指すベンチャー企業がどのような課題に陥りやすいのか、それに対してどのような打ち手が必要なのかを考察していきます。

また、当社ではインターン生を中心にベンチャー企業調査も行っており、note記事でその考察結果をまとめています。分析から得られたデータなども参照にしながら、令和時代のベンチャー企業の人材マネジメントの指針として参考になればと思います。

 

INDEX

1. ベンチャーが急成長するために必要な5つの機能
・ベンチャー企業が急成長した先にある課題
・ベンチャーが急成長するために必要な5つの機能

 

2. ベンチャー企業における取締役の影響
・ベンチャー企業の役員体制
・ベンチャー企業の役員体制の傾向

 

3. 急成長企業が見落としがちな3つの落とし穴
・「採用しっぱなし」問題
・「モチベーション無視」問題
・「社内人材の多様化」問題

 

4. フローとストックをバランスさせた成長期の人材マネジメント
・ストック型人材マネジメントとフロー型人材マネジメント
・ベンチャー企業における人材マネジメントの成功事例①
・ベンチャー企業における人材マネジメントの成功事例②

 

5. ベンチャー企業に必要な人材マネジメントとは
・ベンチャー企業にこそ必要な人事の視点
・IPOを目指す某企業の人事制度全体像
・等級制度
・評価精度
・報酬制度

 

ベンチャーが急成長するために必要な5つの機能

ベンチャー企業が急成長した先にある課題

 

企業成長の先にあるゴールが何かを定義するのは難しいですが、今回はベンチャー企業の成功を「上場」と仮置きして話を進められればと思います。

そもそも、企業が上場を目指そうとするときにはいくつかの基準をクリアしなければなりません。日本では上場するために複数視点で審査基準が定められています。

●企業の継続性・収益性

●企業経営の健全性

●企業のコーポレートガバナンス及び内部管理体制の有効性

●企業内容等の開示の適正性

など。

 

特に、1つ目の項目である「企業の継続性・収益性」は株主が強く要望する項目でもあるため、会社としても重要度も緊急度も高く、取り組む項目です。

そのためベンチャー企業では、特に売上の拡大・利益の確保が一層求められることになります。そのため人材獲得も積極的になります。

しかし、成長だけに目を向けてしまうことで生じる「ヒトの問題に関するほつれ」があるのです。しかも、そのほつれは会社が財務的には成長しているため、気づきにくいのです。

 

ベンチャー人事マネジメント

 

 

このような「成長に伴う社内のほつれ」が顕在化した問題となったときに、「人材マネジメント」を考える必要が出てきます。

もちろん上場に向けて、上記に示した4つの項目をクリアするためにコンプライアンスや従業員の定着率、個別人事労務問題への対応、制度整備はしています。ですが、「社内のほつれ」に対する人材マネジメントが意識されることはどの程度あるのでしょうか?

 

ベンチャーが急成長するために必要な5つの機能

 

それを判断するために、「売上倍増」と「人材不足」の課題をもう少し因数分解して考えます。

売上倍増にしろ、人材不足にしろ、お金が必要です。つまり【資金調達する】機能が急成長を目指す会社には必要です。

「売上倍増」の視点では、良いモノ・良いサービスを開発しても多くの売り先がなければお金になりません。【商材を拡販する】機能も必要です。それに加えて、急激に拡販するためには【売る仕組みを作る】ことも同様に大切になってきます。

「人材不足」の視点では、まずは人手が必要なので【人の採用】は言わずもがな必須です。それと同様に考えなければならないのは【人の定着】です。

ここからわかるように、ベンチャー企業が「売上を倍増させ」「人材不足」に陥らないためには、以下のような5つの機能を備えることが必要だといえます。

 

ベンチャー人事マネジメント

 

どの企業であっても、成長を目指すのであればこの5つの機能は必須です。それは、ベンチャー企業であっても同様のことが言えます。

では、ベンチャー企業が5つの機能を備えているかどうかはどのように見ていけばよいでしょうか?

優良ベンチャー企業の社内機能を分析するために、取締役スキルを調べてみました。そこから見えてきた結果と考察を次の章で紹介していきます。

 

ベンチャー企業における取締役の影響

 

ベンチャー企業の役員体制

 

昨今の優良ベンチャー企業がどのような体制を敷いているかを分析してみました。

小規模な組織では取締役が発揮する影響力が大きく、どのようなスキルを持つ人物かによって、組織の方向性が決定づけられることも多いです。今回は「どんなスキルを持った取締役を配置しているかが見えれば、その会社の機能整備状況が見えるのではないか?」という仮説の下、検証をします。

たとえば、当社では以下のような項目で、取締役のスキルマトリクスを用いて分析しています。

 

ベンチャー人事マネジメント

 

大項目としては2つで「透明性」「リスクテイク」です。透明性とは、企業が健全な経営をして、かつそれをオープンにしているかどうかということです。

一番わかりやすいのが社外取締役の存在です。内々の取締役だけで経営していれば「利益を自分たちだけで分け合おう」であったり、「法的にグレーなことであっても内部で隠蔽しておこう」といったこともしやすくなります。

それを避けて、外部の視点から指摘が入る余地を作ることが必要になり社外取締役の存在感が高まってきたことも事実です。また、似たような取締役が集まれば、反対意見が出にくくなってしまうので、多様な取締役が関わっていることも重要になります。

加えて、ベンチャー企業に求められるのが「スピード感ある成長」であり、それを実現するために必要なのがリスクテイクの姿勢です。

要するに、儲けた利益を留保するのではなくて、さらなる利益を獲得するために、積極的に投資をしていくことが求められるということです。

例えば、そのためには取締役の中でも「過去に新規事業の開発経験があるかどうか」や「自身が主となって、起業をした経験があるかどうか」は重要な判断基準になります。

一方で、急成長時にリスクになりうる課題をコントロールできるスキルがあるかどうかも重要です。そのためには、取締役の中に、法務や財務といったスペシャリストがいるのかどうかも大事な基準になります。

実際に最近の優良ベンチャーがどうなっているのかを調べるために、本ページの分析では直近IPOを狙っていると考えられる、あるいは直近IPOに成功したベンチャー企業41社をピックアップして分析してみました。

 

 

ベンチャー企業の役員体制の傾向

 

ベンチャー人事マネジメント

 

調査対象は計248名の取締役ですが、そのうち21.4%は「マーケティング・事業開発経験」を持つ取締役を設置しており、25.0%の会社は「財務・ファイナンス」スキルを持つ取締役を設置しています。

ここから言えるのは、「成長のための事業開発を実行しつつ、軍資金を作るためのファイナンスを行う」ことに重きを置いている企業が多いことが見えてきます。

これらはベンチャー企業が成長拡大していくにあたって、必須のファクターともいえるでしょう。

では、一方で人材マネジメントはどのくらい意識されているのでしょうか?

こちらも実際に調査をしてみたところ、人事・労務に強みを持つ取締役を設置しているのは全体の7.7%でした。マーケティングやファイナンスと比べると、見劣りする数字となっています。

 

導入パートでもお示しした通り、急成長を目指すには【資金調達する】【商材を拡販する】【売る仕組みを作る】【人の採用】【人の定着】の5つの要素が必要です。

とすると、【人の採用】【人の定着】に関するスペシャリティの高い取締役も、「マーケティング・事業開発経験」を持つ取締役と「財務・ファイナンス」スキルを持つ取締役と、同等程度重要視されるべきだと当社は考えます。

急成長にフォーカスが当たっている間は、なかなか人材マネジメントの課題に目を向けることができません。かつ、人事の課題はすぐに顕在化しないこともあって、やはりスペシャリティの高い取締役を置いておく必要があるのではないでしょうか。

 

急成長企業が見落としがちな3つの落とし穴

では、ベンチャー企業が見落としがちな人材マネジメントの課題は具体的にどのようなものがあるのでしょうか。

事業の成長だけに気が向くと、気づけば大きな課題として出てくるのが人事マネジメントの問題です。さらにいえば、この問題は「気づきにくい」のです。

目先の売上・利益は伸びているがゆえに社内でも課題認識されにくいケースが多いのです。では、どんな兆候があれば、深刻な問題として認識していくべきなのでしょうか。

 

①「採用しっぱなし」問題

 

ベンチャー人事マネジメント

 

創業期は少数メンバーであっても、事業の急成長期には従来とは比べ物にならないスピードで人員増加させることが必要です。

そのため、よくよく考えればミスマッチかもしれない人材や採用後に手をかけた育成が必要なメンバーが入ってくることも頻繁にあります。そのため、入社後にミスマッチを感じて早期の退職に繋がります。

その逆もしかりで、採用したものの期待する成果を発揮せずに、居残る社員も発生します。会社としては、このような社員を辞めさせることはできないので、実はベンチャー企業が人事マネジメントの悩みでも早期段階から頭を抱える問題だったりします。

このような採用しっぱなしの問題は得てして起こりやすいのです。

 

 

②「モチベーション無視」問題

 

ベンチャー人事マネジメント

 

これもベンチャー企業ではあるあるの問題として挙がります。

人件費が上がればコスト負担が増えるので、昇給はさせない。平日はもちろん、休日もフル稼働して労働から離れられない。成果主義が強ければ、「詰める」文化が横行し、社内で連帯感が生れない。などなど、挙げれば多々出てきますが、売上・利益最優先の状況ではこのような状況が起こりがちです。

これらの問題はベンチャー企業に限った話ではないものの、人材確保も必要なベンチャーにおいては致命的なダメージに繋がりかねません。

また、よくあるのがマネジメント経験の浅い人材が成果に繋がらない誤ったマネジメントをしてしまうことで、組織化が図りにくいような状況も生まれやすいことも相まって、社員のモチベーションが無視されがちになってしまうのです。

 

上記で紹介した2つの問題は連動しており、どちらも簡単に解決できるものではありません。いわゆる、「ニワトリが先か、タマゴが先か」のような話に近いのです。

実は、このような問題が発生するのはもっと根源的な問題があるのです。

それが3つ目の落とし穴であり、最大の落とし穴でもあるのです。

 

 

③「社内人材の多様化」問題

 

ベンチャー人事マネジメント

 

一見すると、人材の多様化というのは良い響きに聞こえます。しかし、大事なことは多様化のあとに協調して成果を出していくことです。

この図でも示している通り、古参メンバーと新しく入ってきたメンバーの間にある意識やマインドの隔たりが、実はベンチャー企業の人事マネジメントにおいて一番メスを入れるべきポイントなのです。

例えば、当社が人事コンサルタントとしての立場で聞いてきたホンネに以下のようなものがあります。

古参社員は「会社が大きくなってから入ってきた連中は、やっぱり創業の想いがわかってないからね。だからもっと苦労させないといけないよ。」と主張します。

一方で新しく入ってきた新卒メンバーや若い中途メンバーは「資金も商品も人材も不足してた時代には根性論で生き延びたかもしれないけれど、ちゃんと科学的経営をしなきゃ。でも古参の人たちはそれが理解できないから、みんな辟易してますよ。」と主張します。

このような問題に対して、双方の意見を尊重して丸く収めるのは至難の業です。優秀な新卒・中途メンバーを優遇するようなことをすれば、古参社員がそっぽ向いてしまいます。すると、組織的な成果が出ないのは明白です。逆も同様に、古参社員を尊重すれば、新卒・中途メンバーは早々に退職をするでしょう。

しかも今の時代、もっと恐れるべきなのは「就職サイト・転職サイト」の存在です。早期に辞めていった新卒・中途メンバーがその掲示板に悪評を立てれば立てるほど、さらに人を集めることに苦戦してしまうのです。

 

では、このような「人事のほつれ」の問題に対して、どのような考えをもって、どのような打ち手を検討していくべきなのでしょうか?

 

フローとストックをバランスさせた成長期の人材マネジメント

 

ストック型人材マネジメントとフロー型人材マネジメント

 

人材に対して会社が行うマネジメントには2種類の考え方があります。
1つはストック型の人材マネジメントです。

ストック型人材マネジメントとは、かみ砕いていえば、「採用した人材は人財であるので、人財には投資し、育成し、活躍してもらえるようにしなければいけない」とする考え方です。

これはある程度、型の決まった勝ちパターンがあり、かつ業界全体が右肩上がりの時に有効に働きます。過去の成功パターンを多く知っている人材を蓄積していくことが組織全体の成長につながるからです。

しかし、VUCAの時代において、一朝一夕的に変化が求められるベンチャー企業が決まった勝ちパターンを確立するのは困難です。「人財が蓄積される」という前提でマネジメントをしていては破綻してしまうのは明らかです。

そこでもう一つの考え方であるフロー型の人材マネジメントを見ていきます。
これは入社してくる人数と退職していく人数で考えるマネジメントであり、一定の離職率を前提とした人材マネジメントなのです。そして、「会社を辞めるのは互いにとって良いことだ」と定義してしまうのです。

この考え方は上記の章で紹介した3つの課題にも適用できます。

辞めることを前提ならば、「すぐに活躍できそうな人を徹底して選抜」するようになりますし、辞めてほしくない人がはっきりすることで上司や会社からターゲットを絞ったモチベーションマネジメントも可能です。社内における対立問題についても、会社の成長に合わせて必要な人材は残り、不要な人材は淘汰されていくことを許容できます。

 

 

さて、一見するとフロー型の人材マネジメントはベンチャー企業にとって最適解ではないか、と思いたいのですがフロー型にも問題点があります。

それは「自律したヒトでなければ組織についてこれない」という点です。

いくらポテンシャルが高い人材でも入社直後のキャッチアップや周囲のフォローがなければ潰れてしまいます。必要なことは「社員の自律性も育みながら、選抜と淘汰の仕組みを作り出していく」ことなのです。

 

ベンチャー人事マネジメント

 

 

ベンチャー企業における人材マネジメントの成功事例①

 

ここで、最近のベンチャー企業で人材マネジメントが上手く機能したと考えられる成功事例を紹介します。今回は2社を事例として挙げています。

 

1社目は株式会社Voicyです。2016年に設立され、音声プラットフォーム事業や音声ソリューション事業を展開されている企業なのですが、人材マネジメント施策の成功例紹介として他のメディアでも取り上げられています。

急成長フェーズにある同社では2019年には離職率67%と、社員の3分の2が離れてしまうような危機的状況であったといいます。それが人材マネジメントの見直しをかけたことで、翌年には離職率を9%まで改善させたといいます。

その施策とは、具体的に「エントリーマネジメント」と「オンボーディング施策」です。

 

ベンチャー人事マネジメント

 

 

では、具体的にそれぞれどのようなものだったのか、中身を見ていきます。

 

まず、エントリーマネジメントとは人材採用する際に、求職者と企業のマッチングの精度を高めることで入社後のギャップをなくすためのマネジメントです。
求職者のスキルだけではなく、経営理念や価値観に共感できる人材なのかどうかを見極めていくことが大きな目的として捉えられています。

同社の場合は、エントリーマネジメントの中でも特に注力したのが「選考フェーズで求職者と企業における情報の非対称性をなくす」ことだったと言います。要するに「入社したら思っていたのと違った」をいかに減らすかに注目しました。

手法としては、急増する退職者に対してヒアリングを徹底し、組織課題や不満要因を抽出したといいます。社内メンバーへのヒアリングも重要ですが、退職の道を選んだ人々の声を聞くことでより根深い問題にアプローチできると考えたようです。

そこから見えてきた「退職理由に多く見られる入社後のミスマッチ」を採用選考フェーズで候補者にオープンにしていくことで、長期的な人事の安定性を確保しようと試みたものでした。

加えて、入社後スムーズに組織に馴染んでもらうためのオンボーディング施策にも注力をしています。

「内定承諾後~入社前日」「入社当日」「入社後」の3つのステップに分けて、新しく入ってきたメンバーに対して、施策を打つことで「入社者にとってストレスや緊張感を感じさせず心地良い状態を作り、内定承諾後、気づいたら半年が終わっている」状況を作ることに成功したといいます。

 

 

ベンチャー人事マネジメント

 

これは、ストック型のマネジメントとフロー型のマネジメントをうまくバランスさせた良い事例ではないかと考えます。

 

 

ベンチャー企業における人材マネジメントの成功事例②

 

次に紹介するのは、株式会社サイバーエージェントです。
こちらは今や言わずと知れた大企業ですが、ベンチャー時代からIPO後に「利益が出ない、人もどんどん辞めていく」という危機的な状況があったといいます。

当時あったネットバブルの崩壊という外的要因によって受けたダメージに加え、急速な成長によって生まれた社内メンバー内での歪みもあったといいます。前段でも紹介した古参メンバーと上場後に入社した優遇された中途メンバーとの間で軋轢がますます大きくなってしまったのです。これが原因で創業メンバーは次々と退職し、そして中途メンバーもベンチャー風土にフィットせず辞めていくという負のループでした。

それを変えたのが、「ビジョンの明確化」とそれに連動する人材マネジメントの見直しでした。

結果として、今では100社以上のグループ企業を抱えるメガベンチャーの筆頭格となったのです。

ベンチャー人事マネジメント

 

では、具体的にどんなことをしたのか?

一言で言えば、従業員にとって「安心と挑戦」がセットになった人事制度改革でした。

一番の改革のスタートとなるのは会社のビジョンや存在意義を見つめなおすために実施した「役員合宿」だったといいます。そこから人事施策を打ち、人事本部を設立するようになります。

人事本部を設立してからは、社内公募制度、役員を軸とした事業コンペ、2年に1度役員の入替えを行う制度等といった「社員に挑戦を促す人事の仕組み」を整備しました。

それに加えて、「一生働ける環境の会社づくり」を実現するために、福利厚生制度の改善や家賃補助制度の導入、退職金制度の導入なども行われていった。最も注目すべきなのが、ミスマッチ制度というものです。

もちろん大前提として、「がんばっている社員にはきちんと報酬を支払いたい」というのが根本にありました。一方で、人事考課で最下位評価を2回とれば部署移動あるいは退職勧奨のどちらかを選択してもらうという制度でした。これは、仕事の成果のみならず価値観や、会社の文化に合わない人が対象とされるものであり、該当者がいなければ最下位評価はつけなくてもよいものでした。

この例もストック型マネジメントとフロー型マネジメントをうまくバランスさせて、機能させた良い例だと思われます。

 

ベンチャー人事マネジメント

 

 

ベンチャー企業に必要な人材マネジメントとは

 

ベンチャー企業にこそ必要な人事の視点

 

以上で見てきたように、急成長したベンチャー企業では人事の視点から課題の打ち手を検討していくことが必要です。

ここまで見てきたように、ベンチャー企業では創業メンバーと会社の目指す方向性は合致しやすいですが、規模が大きくなるにつれギャップが生じやすくなります。では、このギャップを埋めるものはあるのでしょうか。

きれいごとに聞こえるかもしれませんが、このギャップを埋めるものは「思い」なのです。

「このビジネスを成長させたい」「高い利益を出したい」という創業者の思い、経営陣の思いがあれば、一方で「仕事を通じて成長したい」「たくさん稼ぎたい」という個人の思いもあって会社は成り立っています。

 

ベンチャー人事マネジメント

 

「思い」は目に見えません。それを可視化し、会社の成長を支えるツールこそが「人事制度」だと当社は考えます。

人事制度と聞くと、一般的には「お給料を決める仕組み」と捉えられがちですがそうではありません。会社がどんなビジネスを実現しようと思っていて、そのために「どんな人に、どんなことをしてほしいのか」という思いを可視化するものです。

事業戦略からブレイクダウンし、必要な組織を描いたあとに理想となる「求める人物像」「求める行動」を明確にすることで「うちの会社で何にコミットするのか」をはっきりさせることにほかなりません。

 

ベンチャー人事マネジメント

 

 

ですので、まずは「自社がどうありたいのか」「そのために、従業員に何を求めるのか」を明確化することから始めます。それはつまり、どんな従業員はいてほしいか、どんな従業員にはいてほしくないかを線引きすることでもあります。

例えば、当社が手掛けたベンチャー企業の人事制度導入の一例をご紹介します。

5~10年後にIPOを目指したいが、そのための人事インフラを作りたい、そんなニーズからお声がけ頂いたときの事例です。

 

IPOを目指す某企業の人事制度全体像

 

ベンチャー人事マネジメント

 

人事制度を作るときに、まずは大枠のグランドデザインを描きます。

「そもそも人事制度を作る目的」から始まって、その目的達成のために必要な要素は何かを描くのです。

人事制度は一般的に、「採用」から始まって「等級制度」「評価制度」「報酬制度」「教育制度」があり、そして卒業していくフレームワークで説明がなされます。

このグランドデザインのフェーズで、経営層との議論を重ねて各制度の連動性を持たせて、しっかりとディレクションしていくことが重要です。その方向性がまさに、「会社から従業員に何を伝えたいか」のエッセンスとなります。この企業では、「成果を挙げた人材に報償したい」「成果だけでなく、社長の理念を体現した人材を評価したい」「公平な成果配分を実現したい」といった思いが強かったので、上記のような方向性で進めることで合意し、プロジェクトが進捗していきました。

 

等級制度

 

ベンチャー人事マネジメント

 

グランドデザインが決まれば等級制度から作りこんでいきます。

等級制度は人事制度の柱ともいわれることがあるくらい、重要なファクターです。求める人物像からさらにブレイクダウンして、各人に対して「どうなってほしいのか」を明確に定義したもので、個人の成長指針にも直結するものだからです。

特に、これまで人事制度を取り入れていなかったベンチャー企業では、等級定義の議論に時間を使うこともしばしばあります。等級の定義においては、何を軸にして等級を定めるのかによってもその会社の思いが表れます。職務を軸とするのか、能力を軸とするのか、役割を軸とするのか等々、何に基軸を置くかによってもメッセージは変わります。このあたりをしっかり等級制度の設計時に詰めていくのです。

 

 

評価制度

 

等級制度が決まれば、次に評価制度の議論を進めていきます。

日本の企業ではよく目標管理制度(MBO)を活用して、評価制度を運用しているケースが多く、「決めた目標を達成すればお金がもらえる仕組み」として認識されていることが多いようです。

しかし、これから人事制度の導入を検討されているベンチャー企業の人事の方、経営層の方にはぜひ違った捉え方をして頂きたいと考えます。

「従業員の努力を一つの方向に向かわせるツール」として活用されることをお勧めします。目標管理制度しかり、最近だとOKRといった手法も注目されていますが、大事なことは組織目標にみんなを向かわせることなのです。

 

ベンチャー人事マネジメント

 

併せて、上記の図のように同社の人事制度では「所属の達成度」で評価するようにもしています。がんばった個人を評価するのはもちろんですが、たとえば営業部とIT開発部では、そもそもミッションも異なれば業務内容も異なります。そんな中で、個人を一律に評価しても、成果主義だけが横行してしまうリスクもはらむため、所属部署のミッションがどうなったのか、を指標としてみることで、連帯感を生ませる狙いも持たせます。

 

報酬制度

 

給与の決め方も同社ではこれまで、前職時の給与額と社長の都度判断を考慮して決まっていました。ですので、年次昇給はもちろん一律です。さらに厄介だったのが、「入るときには高額で入ってきたものの、入社後は活躍できず、また意欲も低い」人材を生み出してしまったことです。

人事制度がない以上、その人物の給与をさげる根拠はありませんし、代謝を促すこともできなかったのです。なので、人事制度の導入時には「評価によって給与に差が出る」、つまり「頑張った人にはしっかり払う」「頑張ってもない、意欲もない人には払わない」設計にしました。ただし、ここで注意すべきなのは、大きな評価差をつける場合には、再チャレンジの仕組みを併用しないと、残したい人材すらも流出してしまう可能性が出てくるので、その点には留意して設計しています。

 

ベンチャー人事マネジメント

 

上記のように、若手であっても優秀な人材であれば早期に高い年収を目指せるようにカーブを作ることで、企業が求める成長スピードに個人が合わせようとする狙いも持たせることが可能です。どんな評価要素と連動させるかによっても変わってきますが、たとえば同社では、長期的な活躍を期待して、行動評価は基本給に反映させ、短期的な活躍への還元として、業績達成評価は賞与に反映させる立て付けにしました。

このように、評価と報酬をどのように連動させるかによっても、会社が従業員に何を期待しているかを伝達する有効なツールとなりうるのです。

 

まとめ

 

ここまでで多くのことを説明してきましたが、お伝えしたいことは「成長を目指すベンチャー企業こそ、人材マネジメントに注目をして頂きたい」ということです。

そのためには、成長を急ぐ過程であったとしても「自社に問いかける」ことが必要です。

「自社が実現したいビジネスは何なのか?」

「そのために、必要な人材はどのような人物なのか?」

「その人材が、自社に残りたいと思える状態であるのか?」

IPOを目指す企業ならではの苦悩はたくさんあるかと思います。資金面、事業運営面、コンプライアンス面等々、休日返上で対応せねばならないことや考えておかなければならないことが山積みです。その考えなければならない項目の一つとして「人材マネジメント」がスタンダードになることを願ってやみません。

その先に、企業の成長とそこで働く従業員の方々の成長があって、社会にインパクトを残されるベンチャー企業がどんどん増えていくことを当社は支援しております。

 

さいごに

 

セレクションアンドバリエーションは、企業と個人の成長をあたりまえにする人事制度の設計と運用を支援しています。
淘汰と多様性を生み出すための人事マネジメントの改革で企業とビジネスの進化(成長と発展)をお手伝いしたい。
それがセレクションアンドバリエーションの願いです。

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