ダンバー数で読み解く“社員数の壁” ― 5人、15人、50人、150人で経営のあり方は変わる

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セレクションアンドバリエーションの平康慶浩です。

「最近、社員の顔と名前が一致しなくなってきて……」
経営者の方から、そんな言葉を聞くことが増えました。 かつては全員と毎朝顔を合わせ、会議でも笑い合えた。
でも気づけば、同じ会社の中で「知らない人」が増えている。
経営者にとって、それが一番の不安ではないでしょうか。

私自身、小さなコンサルティング会社を経営する中で、この“見えなくなる瞬間”を何度も体感してきました。
創業当初5人ほどの時は、何もかもが感覚で通じ合っていました。
言葉にせずとも意図が伝わり、雑談の中で方針が決まる。まさに「信頼で動く経営」です。
しかし10人を超えたあたりから、空気が変わります。
役割が分かれ、情報がすれ違い始める。 経営者が最初にぶつかるのが、この“信頼の壁”です。


目次

ダンバー数とは?150という数の「構造的な意味」

ダンバー数とは、英国人類学者ロビン・ダンバーが提唱した「人が安定した社会的関係を維持できる上限=150」という理論です。
SNSが発達してもこの上限は変わらないと言われています。
ただし私は、この150という数字を心理的限界ではなく、経営構造の節目として捉えています。

150 = 3 × 5 × 5 × 2。 この分解を組織に当てはめてみると、実に納得感のある構造が見えてきます。

意味づけ(組織構造)経営上の特徴
5人プロジェクトチーム単位(直接信頼)顔が見え、暗黙知で動ける。
15人グループ単位(小ダンバー)リーダーが全員を把握できる上限。
50人部署・事業部単位(中ダンバー)社長の信頼がギリギリ届く範囲。
150人全社単位(大ダンバー)制度や文化がないと、信頼が拡散する。

ダンバー自身も「5人=親友、15人=親密、50人=仲間、150人=コミュニティ」と整理しています。 組織の中でも、関係性の濃度が段階的に薄まる。 これはまさに、経営における「伝わる・伝わらない」の構造に重なります。


🧭 ダンバー数で見る4つの経営フェーズ

ダンバー数を「経営フェーズの閾値」として整理すると、次のような構造が見えてきます。

フェーズ規模目安経営の主語経営の課題必要な転換
5人前後創業期社長全員が何でもやるビジョン共有
15人前後小成長期チーム役割が分化マネジメント導入
50人前後組織化期管理職層社長の声が届かない制度・仕組み整備
150人前後多層化期経営チーム経営の再現性が問われるCXO体制・分権化

5人の壁:情熱で動く段階

すべてが社長の視界の中にあり、判断も感覚で十分。
必要なのは「方向性の一致(ビジョン共有)」です。

15人の壁:役割分化の始まり

創業メンバーと新メンバーの温度差が生じやすく、マネジメント導入が不可欠になります。
業績を可視化する仕組みや、採用基準の言語化が求められる段階です。

50人の壁:社長の声が届かない

信頼が物理的に届かなくなり、「制度」や「仕組み」で信頼を補完する段階。
評価制度・会議体の整備が鍵です。

150人の壁:再現性の経営へ

マネジメント層の中での役割分担が求められる段階です。
私はこの段階で、CXO体制の構築が求められると考えています。
日本の伝統的な、常務や専務の体制とどう違うのか、という点については、また別の記事でご説明します。
いずれにせよ、150人を超えると、社長のカリスマではなく、「信頼の再現」を設計できる経営が問われます。


🧩 信頼の“量”ではなく、“単位”を変える

組織が成長するにつれ、信頼の範囲を広げるのではなく、信頼の単位を変えていく必要があります。

  • 5人の頃:「人」への信頼
  • 15人の頃:「役割」への信頼
  • 50人の頃:「制度」への信頼
  • 150人を超える頃:「経営チーム」への信頼

経営とは、信頼の構造を設計する仕事です。 社長が信頼を抱え込む経営から、信頼を分配する経営へ。 これが、企業が成熟するプロセスそのものです。


🔍 現場のリアリティ:制度は“信頼を形式化する道具”

「仕組み化すると人間味が失われる」と感じる経営者は少なくありません。
私自身もそう感じているところがありました。
しかし、15人を超えると、どうしても限界がくる。
極端な話、社長が全員に朝のあいさつを交わし、業務に関する雑談をするだけで午前中が終わることすらあります。
――そのとき痛感したのは、制度は信頼を継続させるための道具だということです。

制度があるからこそ、信頼を“再現可能”にできる。
それを実感してから、私の会社もようやく次のステージへ進みました。


🧠 経営の再現性=信頼の再現性

150人を超えた企業では、「社長の人柄」ではなく「経営チームの一貫性」が問われます。
経営理念、人事制度、評価基準、会議体――これらはすべて、信頼を再現する仕組み。
つまりCXO体制のようなチーム経営体制とは、「信頼の代理人」を配置する経営モデルなのです。


🎯 いま、あなたの会社はどの壁にいるか?

5人の情熱か、15人の混乱か、50人の制度化か、150人の分権化か。
経営の壁は組織の成長痛であり、それを乗り越えるには、信頼の“総量”ではなく“構造”を変える勇気が必要です。

というのは、私自身に対する戒めでもあるのですが。


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