セレクションアンドバリエーションの平康慶浩です。
グローバル化という言葉を聞くと、多くの人がトヨタやパナソニックのような大企業を思い浮かべます。
本社が司令塔となり、世界中の拠点が同じ制度とシステムで動く。
いわば「統合によるグローバル経営」という理想像です。
しかし、もしあなたの会社が数百人から千人規模の中小企業であれば――
そのやり方は現実的ではありません。
なぜなら、中小企業の海外展開は「統合」ではなく、「共創」でしか成り立たないからです。
大企業と中小企業、グローバル化の“構造的な違い”
私はこれまで、中小・中堅企業を中心に多くの企業の人事制度改革を支援してきました。
規模も業種もさまざまですが、海外展開を進める企業ほど、ある共通の悩みを口にされます。
「海外拠点は増えたのに、人事制度が国内のままで止まっている」
大企業のグローバル化は、「統治と統一」を前提としています。
本社のルールに合わせ、評価も報酬も一元化する。
その仕組みを支えるのは潤沢な資本と人員です。
一方、中小企業の現場では、人の配置も限られ、制度設計に割けるリソースも少ない。
だからこそ“信頼”で回す。
「この人なら任せられる」「あの国ならあの部長に」――それで会社が動く。
それは日本企業の強さであり、同時に弱さでもあります。
信頼に頼りすぎて、制度で支えきれていない。
そのために、赴任者の不安や、現地のモヤモヤが蓄積していくのです。
現場の声:「任されているのに、報われていない」
実際、私がコンサルティングの現場で耳にする声は、とても生々しいものです。
「タイ工場でラインを立ち上げて、3年で生産数を倍にした。でも日本に戻れば肩書はそのまま。評価も“よく頑張った”の一言で終わりです。」
「赴任時の加算はあるけれど、どういう根拠なのか説明がない。現地の人に聞かれても答えられないんですよ。」
「成果を上げても、昇格は帰任してからと言われる。海外で働くことがキャリアのブランクになってしまう。」
こうした声の裏にあるのは、制度の空白です。
本社としては「個別対応で済んでいる」と感じていても、現場から見ると「見えないルールの中で戦っている」状態。
これは単なる人事制度の問題ではなく、“経営がどう海外を見ているか”というスタンスの問題なのです。
現場と本社の“認識のズレ”
本社人事からは、こんな声も聞こえます。
「海外赴任者の給与をどう設定すればいいかわからない」
「国内制度に当てはめても無理がある」
「でも、新しい制度を作るほどの人員も時間もない」
つまり、本社側もまた、葛藤しているのです。
現場の努力を理解していても、評価・報酬に反映するための“翻訳の仕組み”がない。
これが、いま多くの日本企業が抱えるグローバル化の実態です。
日本企業のグローバル化が止まりやすい理由
この問題は、構造的にも説明できます。
多くの日本企業では、海外拠点が増えるにつれ、以下のような状態に陥ります。
- 人材の送り出しが“人事異動の延長”として処理されている
赴任が“挑戦”ではなく“配置転換”として扱われる。 - 赴任者の処遇が属人的に決まる
「前任者と同じでいい」「社長判断で加算を上乗せ」といった前例踏襲。 - 帰任後のキャリアが定義されていない
結果的に「行っても戻っても評価が変わらない」。 - 現地登用が制度上の想定にない
優秀なローカル人材がいても昇格できない。
こうした状態のまま、海外拠点だけが増えていく――。
これが、日本企業のグローバル化が「量的拡大」で止まってしまう典型パターンです。
現場から生まれた「共創型グローバル化の5ステップ」
こうした企業の支援を続ける中で、私は中小企業のグローバル化は、大企業とは明確に異なる、ということを理解しました。
中小企業のグローバル化には、5つの現実的ステップがある。
それが私たち、セレクションアンドバリエーションの定義です。
| ステップ | 名称 | キーワード | 実際の姿 |
|---|---|---|---|
| Step 1:ローカル連携期(Local Partnership) | 「つながる」 | 代理店・取引先との関係構築 | 海外を“販売先”ではなく“仲間”と見る第一歩。 |
| Step 2:協働展開期(Collaborative Presence) | 「共に動く」 | 共同開発・販売提携 | 一方的な輸出ではなく共創型へ。 |
| Step 3:限定的現地拠点期(Selective Localization) | 「現地化する」 | 小規模拠点の設立 | 出向者+現地スタッフのハイブリッド運営。 |
| Step 4:現地共創経営期(Co-Creation Management) | 「任せる」 | 現地幹部の登用と意思決定参加 | 本社が“支援役”に回り、信頼を制度で支える。 |
| Step 5:多拠点連携期(Multi-local Synergy) | 「つなぐ」 | 拠点間の横連携 | 拠点⇔拠点の知見共有・共同開発が始まる。 |
多くの中小・中堅企業は、Step 3で立ち止まっています。
人を送り出すところまではできた。
しかし、制度が追いつかない。
これが「信頼経営の限界ライン」です。
制度で信頼を支える――セレクションアンドバリエーションの実践
私が代表を務めるセレクションアンドバリエーションでは、
こうした現場の悩みに応えるために、
「海外赴任・出向者向け評価・報酬制度設計サービス」を提供しています。

このサービスの目的はシンプルです。
信頼で成り立っている海外事業を、制度という言語で支える。
🔹基本サービス(3か月パッケージ)
- 現状分析:出向者データと国内制度を比較し、報酬・評価のギャップを可視化
- 職務・等級の翻訳設計:海外赴任の職責を明確にし、帰任後もつながる等級体系を整備
- 赴任加算・地域手当設計:物価・生活指数を踏まえた加算テーブルを作成
- 評価制度アレンジ:成果+プロセス評価を両立したシートを設計(英語版対応)
- 昇給・帰任ルール整備:昇格・キャリア連続性を制度で保証
🔸オプションサービス
- 国別報酬レンジ調査(政府統計+口コミ補正)
- 制度導入支援・説明会運営
- 個別赴任シミュレーション
- 運用伴走支援(初回査定期まで)
この取り組みの中で最も大切にしているのは、
制度を経営メッセージにすることです。
制度は「ありがとう」を形にするもの
制度とは、冷たいルールではありません。
経営が人に伝えるメッセージの“器”です。
赴任加算や昇格基準の一文に、
「この会社はあなたの挑戦をちゃんと見ている」というメッセージを込められるか。
そこに、制度設計の意味があります。
私が支援したある製造業では、出向者の報酬テーブルを再設計し、帰任後の昇格条件を明示しました。
その結果、海外赴任の応募者が前年の3倍に増えました。
制度が人を動かすのではなく、制度が信頼を支えるからこそ、人が動く。
それが、制度設計の真の目的だと私は考えています。
「人を送り出す勇気」を持てる会社へ
海外展開のスピードを決めるのは、経営戦略でも設備投資でもありません。
それは、「人を送り出す勇気」を持てるかどうかです。
そして、その勇気を生み出すのは、赴任者が安心して挑戦できる仕組みがあるかどうか。
統合を目指す必要はありません。
信頼を制度で支えれば、共創は始まります。
セレクションアンドバリエーションは、
中小企業が現実的にグローバルを進めるための“実質的グローバル化”を制度設計で支援します。
制度の整備は、単なる人事業務ではなく、経営の再設計です。
人事制度が変われば、海外拠点の挑戦の景色が変わります。


