「制度が先」でうまくいく:新規事業に効く人事制度の設計と運用

──泥臭い立ち上げ期こそ、先回りの設計が未来を変える

平康慶浩です。前回記事の後編です。より具体的な、創業期の制度構築について説明してみます。
前編をご覧になっていない方はぜひどうぞ。

目次

前編のおさらい:「人の課題」の正体は「制度の欠如」

前編では、新規事業や創業期で起こりやすい「人」の課題が、実は制度がないことによって生じている構造的な問題であることをお伝えしました。

  • 優秀な人が辞める
  • 採用した人が活躍できない
  • 管理職が育たない/機能しない

これらは、制度を「今すぐ導入しろ」という話ではなく、制度の設計図を持っておくことの重要性を伝えるものでした。

では、どうやってその設計図を描けばいいのでしょうか。今回の後編では、「グランドデザイン」「制度設計」「制度運用」の3つの観点から解説します。


グランドデザイン──制度を作る前に描く“人の設計図”

「制度をつくる前に、何を考えておくべきか?」

それがグランドデザインです。

グランドデザインとは、事業の将来像と組織の成長戦略に基づいて、

  • どんな人材に活躍してほしいのか
  • どんな組織文化を育みたいのか
  • どんな採用・評価・報酬がそれを支えるのか

といった問いに答える、人事の“骨格”です。

これがないまま制度設計を進めてしまうと、バラバラな制度が並び、運用段階で破綻します。


🔸グランドデザインの実務ステップ

  1. 現在の人事課題を整理する(例:採用ミス、評価が不明瞭、給与への不満)
  2. 活躍してほしい人材像を言語化する(例:自律型、チーム志向、スピード感)
  3. 求める成果や行動を明確にする(例:KPI達成、顧客起点の判断力)
  4. それを支えるための等級・評価・報酬の設計方針を検討する

この設計図が、人事制度を構築する上での「地図」になります。


制度設計──等級・評価・報酬をどう組み合わせるか

人事制度の設計には、「等級制度」「評価制度」「報酬制度」という3つの柱があります。これらをバラバラに考えるのではなく、一本の線でつなぐ設計思想が必要です。


🔸等級制度──役割や期待の可視化

新規事業では、「何をどこまで任せるか」が極めて重要です。そのためには等級制度が欠かせません。

  • 採用基準の明確化:どの等級の役割に合う人材を採るのか
  • 昇格/降格の基準:どこで期待が変わるのか
  • 退職判断(代謝)の基準:合わない人をどう見極めるか

等級制度は、単なる社内の“ランク付け”ではなく、事業戦略に基づいた「人材ポートフォリオ管理」のツールなのです。


🔸評価制度──フィードバックと成長支援の起点

創業期は「評価=査定」と思われがちですが、実は評価制度こそが人材育成とマネジメントの出発点です。

  • 短期の業績目標に対する達成度(KPI評価)
  • 中長期での成長行動に対する定性評価
  • 1on1や面談によるコミュニケーション設計

評価制度は「点数をつけるため」ではなく、「対話を促進し、成長を支援するため」に設計されるべきです。


🔸報酬制度──“納得”と“期待”のバランス

給与や賞与の設計は、モチベーションに直結する要素です。ただし、単純に“上げる/下げる”ではなく、「納得」と「期待」を同時に満たす設計が重要です。

  • 労働市場水準との整合性(外とのバランス)
  • 等級と連動した給与テーブル(内との整合性)
  • インセンティブと賞与の設計(成果と期待への報酬)

特に新規事業では「即戦力がほしい」と思いがちですが、そのためにも**制度としての“処遇の意味づけ”**が必要なのです。


制度運用──仕組みを機能させる“最後の一手”

制度設計がどれだけ優れていても、「現場で機能しない」のであれば意味がありません。

運用段階で重要なのは、以下の2点です。


🔸①評価者教育=現場マネジャーの“言語化スキル”を高める

新規事業では、評価者が「前職での感覚」でフィードバックしてしまうケースが多くあります。

  • 「うまく言えないけど、なんか違う」
  • 「結果は出してるけど、期待とは違う」

こうした“もやもや”を放置すると、評価の納得感が失われ、組織の信頼が揺らぎます。

評価者教育を通じて、

  • 評価基準の共通言語化
  • フィードバックスキルの標準化
    を行うことで、制度が現場で生きるようになります。

🔸②採用基準の制度連動=「どういう人を採るか」を制度で語れるか

制度運用と採用活動は別物に思われがちですが、本来は密接にリンクしているべきです。

  • 等級制度の定義を採用要件に落とし込む
  • 評価項目を面接評価にも活用する
  • 活躍人材の定義と“ズレ”を早期に検知する

これにより、「採ったけど活躍しない」「早期離職が多い」といった問題を、制度面から防止することができます。


親会社がある場合の“子会社型人事”の留意点

親会社の出向者や兼務者が多い新規事業部門では、制度設計と組織運営のギャップが生まれやすくなります。

  • 出向者と現地採用社員の期待がずれる
  • 権限や任用基準が不透明でマネジメントが混乱する
  • 本社制度に引きずられて独自性が出せない

これらを防ぐためにも、新規事業部門としての独自制度、もしくは**「独自ルールの補助線」**を設計しておくことが有効です。


まとめ:制度があるからこそ、新規事業は自由に動ける

新規事業において、制度は決して「硬直化」の象徴ではありません。むしろ、制度があるからこそ、

  • 採用に一貫性が出る
  • 評価に納得感が生まれる
  • 人件費が制御できる
  • 育成の方向性が定まる

という、「自由に動くためのフレーム」として機能します。

「人事制度はもう少し先でいい」と思っている方こそ、一度立ち止まって、未来から逆算した“制度の設計図”を描いてみませんか?


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