組織設計と成長のリアル ― 正解のない中で“最適解”を追求する試み

目次

はじめに ― 組織づくりに「正解」はあるのか

「どうすれば理想の組織をつくれるのか?」
このテーマに正解はありません。
重要なのは、戦略、ビジネスモデル、メンバーの個性、事業フェーズ―どれ一つとして同じ会社はなく、会社の方針に合った形を試行錯誤しながら、「理想の状態」に近づけていくことだと感じます。

最近あらためて思うことは、生産性を重視する組織と、革新性を重んじる組織では求められる仕組みがまったく違うということです。
どちらを取るかではなく、どうバランスを取るか─ここにこそ、組織設計の面白さと難しさがあるのだと思います。


戦略と組織設計 ― 組織は戦略に従う

どんなに立派な組織図を描いても、戦略との整合性が取れていなければ機能しません。
「戦略 → 制度設計→人員配置 → 責任 → 行動規範」まで一貫していないと、現場が迷い、スピードが落ちてしまいます。
たとえば機能別組織は専門性を高める一方で、権限が上位職に集中しているため、意思決定が遅れる可能性があります。
事業部別組織は柔軟な顧客や業務対応ができる反面、他部門に対しては無関心になり、連携が薄れるといった特徴があります。
機能別と事業部別のマトリックス組織は柔軟性があるが、指揮系統複雑化し、混乱を招く場合もあります。
どの構造にもトレードオフがあり、正解はありません。

さらに、組織を過度に細分化すれば、各部門が部分最適に陥り、全体としてのガバナンスが効きづらくなります。
反対に、過度に統合された大規模組織では、いわば“中央集権型”のように意思決定が遅れ、経営のスピードを損なう恐れがあります。
したがって、組織の粒度をどのレベルで設計するかは、「統治のしやすさ」「意思決定の速さ」のバランスを踏まえて判断することが重要です。
そして、「現状の戦略に最も適した構造」を選び、環境変化に応じて柔軟に見直していく姿勢こそが、組織を持続的に成長させる鍵となります。


人材マネジメント ― 「誰を、どのように」活かすか

組織は人で動きます。
アサイン一つを取っても、「できる人で選ぶ」か「チャレンジしたい人で選ぶ」かで、チームの空気は大きく変わります。

さらに、人材マネジメントの観点からは、人材特性の観点だけでなく、“管理スパン”の観点で組織構造を捉えることも欠かせません。
一般的には、管理者1人あたりがマネジメントする人数は5〜8人が適正といわれています(参考:ジェフ・ベゾス氏「2枚のピザ理論」)。
ただし、実際の現場では、業務の専門性や組織構造、顧客対応範囲などの個別事情によって、この範囲に収まらないケースも少なくありません。
そのような場合には、管理体制を厚くしたり、サブチーフを配置して管理の行き届きを補完したりなどの対応が考えられます。
とはいえ、重要なのは管理の負荷や責任が特定の個人に過度に集中しないようにすることです。

そのためには、スパン・オブ・コントロール(管理スパン)の考え方を現場レベルまで浸透させ、各組織で適正なマネジメント体制を維持できるようにすることが大切です。
あわせて、管理部門が定期的にモニタリングを行い、偏りや過重負担を早期に把握・是正できる仕組みを整えることが、組織全体の健全な統治につながると感じます。

また、制度の観点からも、管理する立場のポストには結果責任を、メンバーには遂行責任を明確に分けて考えることが重要です。
この区分を実効性のあるものにするためには、全社横断的なポストごとに責任と権限の範囲を明確にしておくことです。

こうした設計を行うことで、従業員の視点からは公平性や納得感が高まり、経営の視点からは役職ごとのマネジメント範囲が明確になり、ガバナンスが効いた組織が実現されます。
その結果、従業員と経営の期待が一致し、組織全体が前向きに動き出します。


組織の「構造」と「関係性」 ― 衝突を成長のきっかけに

組織の中で衝突が起こるのは自然なことです。
大事なのは、それを避けるのではなく、“建設的な議論に変えること”です。

トップダウン型(ピラミッド型)の組織は指揮命令が明確で安定しますが、変化に弱いといった懸念もあります。
フラット型の組織は柔軟で創造的ですが、意思決定が遅れがちです。
最近では、両者の良さを組み合わせた“ハイブリッド型”の組織を採用する企業が増えています。

私自身、複数のプロジェクトを横断する中で、異なる文化のぶつかり合いから新しい発想が生まれる瞬間を何度も見てきました。
「衝突を恐れない文化」こそが、成長する組織の特徴だと思います。


組織を成長させる基盤 ― 生産性と革新性の両立

成長する組織には共通して「生産性」と「革新性」を両立させる工夫があります。

生産性の面では:
テクノロジーを活用したオンライン決裁や営業管理など、業務の自動化・省力化が進んでいます。
ただし、新しいシステム導入には「慣れない」「前の方が良かった」という声もつきもの。
ここに対話とトレーニングを重ねることで、ようやく組織としての生産性向上が定着します。

革新性の面では:
独立採算制などを取り入れて「小さな経営者」を育てることも、経営意識を高める大きな手段になります。
リーダーが増えることで、意思決定が早まり、組織が自ら動き出す“生きたシステム”へと進化します。


チームビルディング― 関係の質がすべてを変える

どんなに優れた制度も、最終的には「人と人との関係」に行き着きます。
チームビルディングでは、未来の組織像を語り合い、戦略と文化が一貫した施策を描くことが大切です。
その中でも、最近多くの企業で取り入れられているのが1on1ミーティング
これは単なる業務確認の場ではなく、信頼関係を築くための対話の場だと感じます。

私自身、1on1の導入支援をさせていただく中で、
「人は評価よりも理解を求めている」ということを強く実感しました。
相手の想いに丁寧に耳を傾けることが、チームを前へ進める最も確かな一歩なのだと思います。


まとめ

組織設計とは、単なる構造設計ではなく「人がどう動くか」をデザインする仕事です。
完璧な仕組みを追うよりも、戦略に基づいた生産性・革新性・心理的安全性─これらをバランス良く保ちながら、
「この組織で働いていてよかった」とメンバーが感じられる環境をつくること。

それこそが、これからの時代の“強い組織”の条件ではないでしょうか。

最後に、組織再編や制度見直しに、すべての企業に共通する“唯一の正解”はありません。
「自社に適した進め方を知りたい」と感じられた方は、ぜひ弊社セレクションアンドバリエーションの無料相談にお申込みください。
実績豊富なコンサルタントが、御社の状況に合わせて最適なアプローチをご提案いたします。

目次