直間比率とは組織構造のどこを映しているのか
人的資本経営が注目される中で、
「自社の管理部門は何人が適正なのか」
「自社の人員構成は多いのか、少ないのか」
といった問いを持つ企業は年々増えています。
その際、比較軸としてよく用いられるのが直間比率です。
本記事では、産業別の標準値を整理したうえで、
この直間比率という指標をどこまで気にすべきか/どう使うべきかという実務的な視点まで踏み込みます。
【この記事でわかること】
- 産業別直間比率の目安
- 直間比率をどう読み解き、何に生かしていくべきか
- これからの組織設計に必要な取るべきアクションステップ
直間比率とは「効率性」ではなく「構造」を見る指標
直間比率とは、
直接人員(売上・付加価値を直接生む人材)と、間接人員(管理・企画・間接業務を担う人材)の構成比を示す指標です。
ただし、結論から言えば、
直間比率そのものを細かく気にしすぎる必要はありません。
直間比率は単なる「人件費の効率性」ではありません。
この比率は企業の、
- 管理部門の人員増減の説明
- オペレーションの複雑さ
- 管理・統制の強さ
- 権限委譲の度合い
といった企業の構造的特性を反映する指標です。
産業別・直間比率の全体像(大分類)
以下は、産業大分類ごとに直間比率を整理したものです。
全体を整理すると、次のような傾向が確認できます。
- 製造業・インフラ系(電気・ガス等)
→直間比率:おおむね80%台前半〜中盤
- 情報通信業・学術研究・専門サービス業
→直間比率:85%前後
- 小売業・飲食サービス業・生活関連サービス業
→直間比率:90%超〜ほぼ直人員構成

例えば、飲食サービス業や小売業などのサービス産業では、直接人員の比率が高く、これらの業界では、顧客接点を通じて価値を提供する現場人材が主力であり、まさに「人を介して収益を生む」構造が根幹をなしているといえます。
一方で、電力会社では、供給計画やインフラ保守、法務といった機能が現場を支えており、金融業でもリスク管理や商品開発、審査・監査などが組織運営の中核を担い企業の収益性と安定性を担保している。
このように、直間比率の高低は単なる効率性の尺度ではなく、企業がどこで付加価値を生み出し、どのように収益構造を構築しているかを反映する概念的な指標でもあり、
それぞれの産業が持つ
業務の標準化度合い/管理の必要性/現場裁量の範囲
が、そのまま数値に表れているといえます。
重要なのは、
「直間比率が高い=効率的」「間接人員が多い=ムダ」
ではないという点です。
読み取れるポイント
直間比率は「管理の重さ」を示す
直間比率が低い産業ほど、
- 多段階の意思決定
- 厳格な統制
- 高度な専門管理
が求められる構造にあります。
一方、直間比率が高い産業では、
- 現場完結型
- シンプルなオペレーション
- 権限委譲が前提
- 管理は最小限
という設計が合理的です。
つまり直間比率は、組織の“管理密度”を測る指標でもあります。
AI時代、直間の線引きはますます曖昧になる
さらに近年、AI・デジタル技術の進展により、
「直接部門」「間接部門」という区分自体が揺らぎ始めています。
たとえば、
- 人事・経理業務の自動化
- 生産管理・需給調整の高度化
- 営業支援・カスタマーサポートへのAI活用
これらは一見「間接業務」に見えても、
結果としてフロントの生産性や顧客価値を直接高める役割を果たします。
そのため最近では、
直間ではなく、以下のような区分で組織を捉える考え方も広がっています。
- フロント:真の顧客をターゲットにする組織
- ミドル:フロントを顧客にする組織
- バック:経営層・株主を顧客にする組織
直間比率は、この再設計の出発点として位置づけるのが現実的です。
同一産業内で自社がどこに位置しているか
その中でも確認しておきたいのは、「同一産業内で自社がどこに位置しているか」です。
同じ製造業でも、
- 直間比率が80%のA企業
- 直間比率が89%のB企業
では、
管理体制・人事制度・現場裁量のあり方が大きく異なります。
仮に、従業員数1,000名の企業を想定します。
- 管理部門(総務・人事・経理などを含む)の人員比率差(A-B):9.0%
- 管理部門人員数:90名
ここに、平均年収500万円(仮)を掛け合わせると、
管理部門の人件費総額差は約4億5,000万円にも上ります。
このズレは、
- 過剰な管理人員
- 管理職のスパン・オブ・コントロール
- 役割定義の曖昧さ
といった課題の兆候であることも少なくありません。
企業が取るべきアクション
「効率化」よりも「構造整合」が先
直間比率の議論は、
すぐに「間接部門を減らすべきか」という話に向かいがちです。
しかし本質は逆です。
- その管理は本当に必要か
- 現場に権限を渡せているか
- 役割と評価は構造に合っているか
構造が先、人数は結果です。
比率は“削減目標”ではなく、構造が歪んでいないかを確認する鏡として使うべき指標です。
そのうえで、企業が検討すべきアクションは以下です。
- 自社の直間比率を算出し、産業平均と比較する
- 管理職の人数・役割・評価制度と照らし合わせる
- 「管理が増えた理由」を構造的に言語化する
- 具体的な施策に落とし込む
(例:バック部門であってもフロント・ミドルとのローテーションを行う、部門の壁を越えたコミュニケーションを制度的に担保するなど)
特に製造業では、
- ライン管理/品質管理/生産管理
- 間接部門の専門化
- 現場の多能工化
が進むほど、直間比率は構造的に下がる傾向があります。
結果として、
「間接=コスト」「直接=価値創出」という単純な構図から脱却し、
組織全体で価値を生む設計に近づいていきます。
最後に
本質的な論点は「個人レベルの歪み」にある
最後に、最も重要な視点です。
直間比率は組織全体の平均値です。
しかし実際には、
一見“直接部門”に見える組織でも、個人レベルでは評価が大きく分かれる
というケースが少なくありません。
- 付加価値を生んでいる人
- 役割が曖昧な人
- 管理が目的化している人
こうしたばらつきが放置されるほど、
直間比率は「意味の薄い数字」になっていきます。
本質は、
個人レベルでの役割・価値の歪みをいかに最小化するか ということです
直間比率は、その問題に気づくための“入口”にすぎません。
データ詳細・分析支援について
本記事では、産業大分類レベルでの分析結果を開示しています。
一方で、実際の制度設計・組織改善においては、
- 中分類(業種別)
- 小分類(業種別)
- 自社事業特性に即した比較
まで踏み込むことで、初めて具体的な打ち手が見えてきます。

中分類・小分類レベルの詳細データ、
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※参照:経済産業省 2024年企業活動基本調査確報に基づき整理
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