平康 慶浩(セレクションアンドバリエーション株式会社 代表・人事コンサルタント)
なぜシステム部門の新卒採用は、うまくいかないのか
ご存じですか?
SES(システムエンジニアリングサービス)の市場規模が拡大し続けているって。
はいはい、もちろんうちの会社もお世話になっていますよ、という方もいらっしゃれば、SESってなに?という方もいらっしゃいますよね。
SESというのは、平たく言えば、システム部門人材の派遣です。
大企業ならほぼ確実に、SESのお世話になっています。
弊社セレクションアンドバリエーションでは、某超大手SES企業もクライアントにいらっしゃったりするので、そこの派遣先も知っているのですが、意外な派遣先も散見されます。
たとえば、DXを推進しているはずのコンサルティングファームに、SESとして派遣されているとか。まあこれはいわゆる子請け、孫請けということなのかもですが。
で、なぜSESが拡大しているかといえば、一時的に人材が必要なので、正規雇用が難しいから、という理由をあげられる会社が多いです。
でも本当は違うんですよね。
自社でシステム人材を採用できないから。
あるいは、採用しても教育ができないから。
それが本当の理由です。
「IT人材が足りない」「DXを進めたいが人がいない」という言葉自体は、今や珍しくありません。
けれども、採用しようとしても、条件などがかみ合わず採用できない。
製造業を例にあげてみると、一律の新卒採用 → 配属で調整 → OJTで育成、というモデルで人材を育ててきました。
この仕組みは、製造・品質・保全といった領域では、今でも一定の合理性があります。
一方で、システム部門、特に基幹システムや生産管理、データ活用を担う人材については、明確なズレが生じ始めています。
このズレは、「学生の質が落ちたから」でも、「採用が難しい時代だから」でもありません。
本質的な原因は、採用の考え方が職種に合わなくなっていることにあります。
ではどうすれば、自社にシステム人材を採用できるようになるのか。
弊社が実践してきた4ステップでの改革をご紹介しましょう
STEP1|「求める資質」を再定義する
メンバーシップ型の企業における一律新卒採用では、「優秀そう」「理系」「真面目」といった評価軸が使われがちです。
しかし、システム部門における採用品質は、少し性質が異なります。
現場で本当に求められるのは、プログラミングができるかどうか以上に
- 業務を理解し、構造として整理できるか
- 現場とITの間を翻訳できるか
といった役割適合性です。
ここで重要なのは、「将来育てたい人」を採ることと、「前提となる資質のある人」を採用することは、別だという点です。
一律新卒採用では、この前提が曖昧なまま採用が進みます。
その結果、
- 配属後に期待値が合わない
- 若手が早期に疲弊する
といった問題が起きやすくなります。
職種別新卒採用に移行する第一歩は、システム部門における「求める資質」を分解し、言葉にすることです。
STEP2|「採用しない基準」を定める
「職種別新卒採用にしよう」と考えたとき、職種別で募集しても人が集まらないのではないか、とか、キャリアの柔軟性を奪うのではないか、という議論になることがあります。
ただ、本当に重要なのは、入社時点で求める前提と、後から育てる領域を切り分けることにあります。
システム部門を例にあげると、システムの仕事には、
- 入社時点で前提としてほしいもの
- 入社後に育成すればよいもの
が混在しています。
この切り分けをせずに職種別採用をすると、「結局、何ができる人を採りたいのか」が曖昧になります。
特に重要な点は、「採らない人」を決められるかにあります。
システム担当などの職種別新卒採用では、求める要件の方を優先して考えがちです。
例えば大学で理系だったとか、学生時代にITパスポートを取得しているとか。
しかし、そうして求める基準の方を優先するあまり、採用した後に問題を起こす場合もあります。
たとえば、業務システムの保守・開発を任せたいのに「他部署との調整のようなコミュニケーションを嫌う人」を雇ってしまうとどうなるでしょう。「技術への関心が高い」ことを優先するあまり、企業としての価値に貢献してくれいない場合すらあります。
いくら専門能力が高くてもミスマッチになる可能性がでてしまうのです。
だからこそ、重要なのは、「採用しない基準」の設計です。
これは人数を絞るためではなく、判断を早くし、結果的に数をそろえるための設計です。
STEP3|選考設計の仕組み化
職種別新卒採用に移行すると、選考のやり方も変わります。
一律新卒採用でよく行われてきた、ポテンシャル面接では、職種別採用には向いていません。
いわゆる「ガクチカ」とか「抽象的な志望動機」を聞いたところで、資質や適性は見えてきません。
見るべきなのは、たとえば「複雑なものをどう整理してきたか」という実体験だったり、「業務や仕組みへの関心の持ち方」だったりします。
より本質的には「人とシステムの関係をどう捉えているか」というといった思考プロセスも重要です。
さらに重要なのが、「この職種で、入社後に評価される行動は何か」が明確になっているかどうかです。
採用時の期待と、入社後の評価がズレるとシステム部門の若手は強い違和感を持つようになります。
だからこそ、職種別新卒採用では、選考と評価制度の接続が不可欠です。
STEP4|採用を経営課題にする
ここまで整理すると、職種別新卒採用に移行する際の本当の難しさが見えてきます。
それは、
- 採用チャネルの問題でも
- 学生の問題でもなく
人事制度と採用思想を、職種ごとに言語化する必要があるという点です。
一律新卒採用は、
- 入社時の曖昧さを
- 会社側の裁量で吸収できる仕組み
でした。
一方、職種別新卒採用は、
- 入社前に約束した前提を
- 会社が守り続ける仕組み
に変わります。
これは採用手法の変更ではなく、組織運営の思想転換だと言えます。
職種別新卒採用で必ず直面する3つの壁と、その先にある打ち手
ここまで整理すると、多くの採用部門の方から、次のような反応が返ってきます。
- 言っていることはわかる
- 方向性にも納得感はある
- ただ、実務に落とすところで止まってしまう
特に、システム部門の職種別新卒採用では、次の3つの壁に突き当たるケースが非常に多いです。
壁①|「どんなスキルを前提に採るのか」が決めきれない
職種別新卒にしようとすると、最初に詰まるのがここです。
- プログラミング経験は必須か
- 情報系学部でなければ難しいのか
- それとも論理思考力があればよいのか
議論は盛り上がるのですが、最終的に「やっぱり総合職で採って、配属で考えようか」
に戻ってしまう。
これは判断力の問題ではなく、スキルを構造として整理できていないことが原因です。
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スキルベース採用設計支援

- システム部門の業務を分解し
- 新卒時点で必要なスキル/不要なスキルを切り分け
- 「入社時の前提」を言語化する
職種別新卒採用の出発点になる支援です。
壁②|ポテンシャルをどう見極めればよいかわからない
システム部門の新卒採用では、「即戦力を求めているわけではない」という声をよく聞きます。
一方で、
- 何をもってポテンシャルとするのか
- 面接だけで判断してよいのか
ここが曖昧なまま選考が進み、
- 面接官ごとに評価が割れる
- 結局「無難な人」を選んでしまう
ということが起きます。
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- 論理的思考力
- 情報処理のスタイル
- 業務理解への適性
こうした要素を、面接前に一定程度可視化することで、
「面接で何を見るべきか」が明確になります。 職種別新卒採用では、
テストは選別ではなく、判断基準になります。
壁③|面接官が「職種別採用の面接」をやりきれない
最後の壁は、人に関わる部分です。
職種別新卒採用に移行すると、
- 面接官には、職種理解
- 評価基準の共通認識
- 期待値調整の役割
が強く求められます。
しかし現実には、
- これまで総合職面接しかやってこなかった
- 現場のシステム担当者が面接に不慣れ
というケースがほとんどです。
その結果、
- 技術の話に偏る
- 逆に抽象論に逃げる
- 面接官ごとに評価軸がズレる
といった問題が起きます。
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- 職種別新卒採用における面接の役割整理
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- 評価制度と接続した判断の仕方
「良い面接官を育てる」のではなく、迷わない面接を組織としてつくるための支援です。
システム部門新卒採用は、職種別採用の試金石になる
システム部門の新卒採用は、職種別新卒採用の中でも、最も難易度が高い領域の一つです。
- 業務は専門的
- 期待値は高い
- 育成には時間がかかる
だからこそ、この領域で職種別新卒採用を設計できるかどうかは、その企業の人事制度・採用思想の成熟度を映し出します。
一律新卒採用から、職種別新卒採用へ。
それは単なる採用手法の変更ではなく、「会社として、何を約束して人を迎えるのか」を問い直すプロセスです。
もし今、システム部門の新卒採用で立ち止まっているなら、それは組織が次の段階に進もうとしているサインかもしれません。

