社員一人一人のプロフェッショナルとしての成長と、会社としてのさらなる成長を両立させる仕組みを目指し、2023年から人事制度改革に着手した。
当時の課題としては、人事の仕組みが整っていないことによる給与への不満や、若手社員の成長の道筋が見えづらい、などがあった。
では、それをどのように解決していったのか。
制度改定の経緯やプロジェクトとして進める中での苦労、運用開始後の変化について、オーガスタスラボ株式会社の代表取締役 竹迫 昭吾 氏に詳しくお話を伺った。
1.人事制度設計の背景
--まず、2年前に人事制度設計を実施しようと思った背景と、その当時抱えていた課題について、改めてお聞かせいただけますか
竹迫 氏:
当時は、いわば個人事業主の集まりのような組織で、人事制度や給与テーブルといった仕組みも整っていない状態でした。 その後、新規採用を積極的に進める中で、未経験者や若い世代の社員が加わり、既存メンバーとの間にギャップが生じました。 これにより、公平性や透明性を確保する観点から、人事評価や給与改定の見直しが課題となりました。 こうした背景を踏まえ、新たな人事制度を導入するに至った経緯があります。
2.制度改定の苦労
――実際に制度を導入された当時を振り返ってみて、私たちも3か月ほどご一緒に制度設計を行いましたが、「特にここが大変だった」と印象に残っている部分はありますか。
竹迫 氏:
やはり、等級の違いに応じた給与テーブルの設計には苦労しました。 また、等級ごとの定義づけも難しかった部分です。
――制度導入以前は、個人単位でおおよその給与を決定されていたと記憶しています。制度移行の際には、「役割」や「技術レベル」といった考え方を整理し直し、それらを体系的にまとめて等級として再構築した上で、新制度へと移行しました。
3.人事制度の設計と運用
――人事制度を導入されてから、現在まで、人事制度や運用の見直しはどのように行ってこられましたか
竹迫 氏:
その後は目標管理などの仕組みも取り入れていきました。 また、制度や運用に対する率直な意見を収集するため、外部カウンセラーによる面談の機会を設けるなど、フィードバック体制の充実にも努めています。その中で「あまり厳密に管理されたくない」といった声も寄せられたことから、制度は柔軟に運用する方針を採っています。 給与テーブルについては、昨今の賃金・物価上昇の動向を踏まえた見直しを実施しました。基軸となる制度を整備したことで、昇給判断が容易になり、透明性や公平性も高まりました。
――給与テーブルについては、評価に基づいて運用されているとのことですね。評価によっては給与が上がる場合もあれば、下がる場合もあります。賞与もその評価に連動して決まるということですが、この運用自体はうまく機能していると感じますか。
竹迫 氏:
はい、この給与テーブルは非常に有効に機能していると感じています。ベースアップもやりやすいと思っています。
――ここ2年ほどでインフレが進み、いわゆるベースアップの必要性が高まっています。この給与テーブルについても、その影響で改定を行われたのでしょうか。
竹迫 氏:
はい、変更しています。実は、来期にも再度見直しを予定しています。 というのも、ここ最近、業界全体として給与水準の上昇傾向が一層強まり、中堅層の独立や転職も相次いでいます。各社において昇給幅が拡大している状況を踏まえ、当社としても一定程度はその動向に追随する必要があると考えています。
――それは、業界全体としての動きということですね。
竹迫 氏:
ご指摘のように、業界的な傾向です。給与水準が上がっている企業と、そうでない企業の差がはっきりしてきています。 現在、当社として特に重視しているのは、個人で活躍可能なP2等級(註:同社の等級制度に基づく)と呼んでいる中堅レベルの層で、この層を重点的に引き上げる方針を取っています。 給与テーブルがあることで、どの層をどの程度ベースアップするかといった議論がしやすくなり、強弱をつけた調整が可能になりました。その意味では、制度を導入して本当によかったと感じています。
――なるほど。現場で活躍する中堅層――いわゆるP2等級の拡大を意識されているということですね。 その中で、この仕組みは顧客単価との連動という点でも機能しているのでしょうか。
竹迫 氏:
この点については、担当するお客様の状況が多様であり、また会社側で担当を采配するケースも少なくないため、公平性の観点から顧客単価との連動は行っていません。 ただし、将来的には自身の営業活動によって顧客を獲得した場合など、一定の条件下で評価項目に組み入れる可能性を検討しています。
――弊社でも、人材派遣や業務委託を行う企業様のご支援をさせていただく中で、「顧客単価と報酬を必ずしも連動させない方が良いのではないか」という議論が出ることがあります。というのも、お客様によって契約単価が高い場合もあれば、そうでない場合もあり、その差が必ずしも社員のスキルレベルや貢献度と一致しているわけではないからです。
竹迫 氏:
そうですね。ですので、単価ベースで報酬を決定しているわけではありません。 管理シートと業績の両面で評価を行っていますが、業績についてはお客様によって単価の高低があります。そのため、まず予算のレンジを設定し、その範囲で成果が上がった場合には、プラスアルファで評価を加えるといった形で運用しています。
4.人事制度の効果
――今回の制度設計・導入支援を通じてのご感想をお聞かせいただけますか。
竹迫 氏:
まず率直に言うと、とても感謝しています。人事制度を導入して本当によかったと思っています。 特に良かったと感じる点は、採用活動の場面で、自社の求人媒体などに「人事制度が整っている会社」として掲載できることです。 これによって、候補者に対して安心感や信頼感を訴求できるようになりました。 また、当社は若手社員が多いのですが、自分の現在のレベルや成長段階が明確にわかるようになり、目標設定もしやすくなっています。 意欲のある社員にとっては、長期的なキャリアビジョンを描きながら成長できる環境になっています。 若手の成長を後押しできる制度として、確実に機能していると実感しています。
――ありがとうございます。もともとはグロービスでのご縁からお付き合いが始まりましたが、今お話しいただいたポイントは、まさにこれからシードラウンドを超え、成長していくベンチャー企業にとって、「なぜ人事制度が必要なのか」を明確に打ち出すうえで非常に重要な視点だと感じます。
5.今後の展望
――では最後に、今後の会社としての方向性についてお聞かせください。
竹迫 氏:
シンプルに言うと、会社を大きくしていきたいと思っています。 それは人数や売上の拡大という意味でもそうですし、事業としての成長を実感できる組織にしたい、という気持ちがあります。 DXの流れもあり、業界的にはとても恵まれていると感じています。 だからこそ、チャンスをしっかりと掴んでいきたい。そのためにまず必要なのは、人材の確保と定着です。 採用活動の強化、パートナー企業との連携拡大も含めて、人を増やし、人を活かすことが今の課題だと思っています。 IT業界は技術の進化が本当に速いですし、領域もどんどん広がっています。新しい技術を常に習得し続けることが求められますが、一方でどこに注力するのかを見極めることも大事です。 その意味で、人事制度は人材の定着だけでなく、技術的な成長や方向性の明確化を促す仕組みとして活用できると思っています。
――変化に対応していくために、人事制度自体も適宜見直しながら、社員の成長と会社・事業の成長を実現していく。そのための踏み台として制度を活用できれば、ということですね。
本日はありがとうございました。
- 企業名
- オーガスタラボ株式会社様
- 発足
- 2015年7月
- 資本金
- 1,000万円
- 社員数
- 約20名
- 事業内容
- Webシステム開発、保守管理・改修