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環境装置メーカーの評価者研修|管理職の目標設定力をワークで高める

製造業

【管理職向け研修】部下を動かし育成するための人事評価の使い方

設立1970年代

従業員約750名(単体・グループ約1,700名)

売上約300億円(グループ)

提供サービス人材育成・教育研修

実施期間1ヶ月

支援時期2020年

対象層・対象人数管理職

事例サマリー

近畿地方の環境装置メーカー(従業員数400名規模)に対し、セレクションアンドバリエーション株式会社が2020年に管理職研修を実施した。評価者としての心構えが個々の経験に依存していた状態から、ワーク中心の研修により、評価の目的と目標設定の技術を管理職層の共通言語へと転換した事例である。

背景

近畿地方の環境装置メーカー(従業員数400名規模)である同社は、半導体をはじめとする先端テクノロジー製品の製造工程で発生する有害ガスを処理する装置について、研究開発から設計・製造・販売・メンテナンスまでを一貫して手がけている。

同社は、市場の拡大と環境規制の強化を背景に、事業と組織の双方が拡大する局面にあった。技術力を軸に成長してきた企業であるため、管理職の多くは高い専門性を評価されて登用された技術者・実務者である。

一方で、部下を持つ立場になった後に「評価者」としての役割をどう果たすべきかを体系的に学ぶ機会は限られていた。専門性の高さと、評価者としての力量は別物である。

こうした状況を踏まえ、管理職に評価者としての心構えを学んでほしい、あわせて現に評価者としての役割を担っている管理職に対しても適切な目標設定の方法を学んでほしい、という要請が経営層から挙がった。これを受けて本プロジェクトが立ち上がった。

課題(Before)

近畿地方の環境装置メーカー(従業員数400名規模)において、支援前に確認された課題は次の6点である。

【1】評価者としての心構えや、評価制度が何のために存在するのかという理解が、個々の管理職の経験と持論に委ねられていた。同じ会社の同じ制度でありながら、運用の思想が評価者ごとに異なる状態は、被評価者から見た不公平感の直接の原因となる。

【2】部下の目標が日常業務の羅列や抽象的な表現にとどまり、期末に成果として認められる水準・粒度で設定されていなかった。何をもって達成とするかが決まっていない目標は、期末に評価できない。

【3】期初の段階で上司と部下の期待値がすり合わないまま期が進行していた。ずれが表面化するのは期末であり、そこから修正することはできない。

【4】上司と部下のあいだに評価のギャップが生じる力学が理解されていなかった。原因が構造にあると分からなければ、評価者は自分の見立てを疑う機会を持てない。

【5】評価結果の説明やフィードバックが、管理職にとって心理的負担の大きい業務になっていた。負担が大きい業務は簡略化され、制度の運用品質が下がる。

【6】従来型の座学中心の研修では、知識としては残っても翌日からの行動が変わりにくいという実感が社内にあった。研修そのものへの期待値が下がることは、次の施策の効果も削ぐ。

目的と設計方針

近畿地方の環境装置メーカー(従業員数400名規模)に対し、セレクションアンドバリエーション株式会社は、本研修の目的を次の3点に定めた。

【1】人事評価の知識を体系的に学び、管理者としての知見を広げること。

【2】人事評価における部下と上司とのギャップが、どのような力学で発生するのかを理解すること。

【3】目標設定において、成果を出しやすくなるためのノウハウを身につけること。

すなわち「評価する側の心構え」と「目標を設定する技術」を、同一の研修のなかで接続することを狙いとした。心構えだけを説いても現場の行動は変わらず、技術だけを教えれば評価は作業に堕する。

設計方針の第1は、インプットのための座学をメインに据えないことである。研修のなかでのワークを通じて、目標設定を体験として学んでもらう構成とした。

自分の担当部門と自分の部下を前提に手を動かし、他の受講者の目標と見比べ、他者からの指摘を受ける。そこではじめて「自分の目標設定の癖」が自覚される。この自覚が行動変容の起点になるという判断である。

設計方針の第2は、体験だけに偏らせないことである。人事評価制度の目的、目標管理制度(MBO)の本質、期初・期中・期末という運用サイクルの意味を体系的な知識として整理し、個々の体験を一般化できる枠組みを与えた。

これらを貫く軸として、評価を「期末の値付け作業」ではなく「人材育成とマネジメントの手段」として位置づけ直すことを、研修全体の共通認識とした。

実際に構築した制度のポイント

近畿地方の環境装置メーカー(従業員数400名規模)向けに構築した研修プログラムの要点は、次の6点である。

【1】目標設定のワークを研修の中核に据えた。受講者が自部門の目標を実際に記述し、相互にレビューし合う演習を通じて、「達成が測定できる目標」と「頑張った様子しか伝わらない目標」の差を体感的に理解させた。

【2】上司と部下のギャップが生じる力学を可視化した。評価者側の視点と被評価者側の視点を双方から扱い、認知の偏り(ハロー効果、中心化傾向、直近の出来事に引きずられる傾向など)が評価判断に与える影響を構造として示した。

【3】期初の合意形成が期末の納得感を決めることを扱った。期末に生じる不満の多くは、期初に何を期待されているかが共有されていないことに起因する。この因果関係を先に理解させることで、期初面談の位置づけを変えた。

【4】会社目標から個人目標へのブレイクダウンを扱った。個人目標が独立して存在するのではなく、事業計画と部門目標の連鎖の末端にあることを整理し、部下の目標が成果につながる筋道を管理職自身が描けるようにした。

【5】成果を出しやすくするための目標の置き方を具体化した。難易度の設定、期中の進捗確認のタイミング、支援のしかたまでを一連の流れとして扱い、「立てて終わり」にならない運用を管理職の手元に残した。

【6】自社の制度と組織の実態にあわせて内容をアレンジした。技術部門と管理・営業部門とで成果の見え方が異なる同社の特性を踏まえ、汎用的な研修教材の当てはめではなく、受講者が自分の現場に引き寄せて考えられる題材を用いた。研修で扱った論点を自社の評価シートの記入場面に直接接続することで、翌期の運用への持ち帰りを担保した。

導入後の変化

管理職が評価制度の目的を共通の言葉で語れるようになり、評価を「会社から任された事務作業」ではなく「自らのマネジメントの一部」として捉える意識が広がった。とりわけ、部下との認識のずれが期末ではなく期初の合意形成の段階で生まれているという理解が浸透したことにより、期初面談を丁寧に行おうとする姿勢が見られるようになった。

目標設定については、業務内容の記述にとどまっていた目標に対して、達成水準や測定方法を明示しようとする改善が進んだ。研修内で他者の目標に触れる機会を得たことで、部門を越えて目標の書き方の水準感が共有された点も効果として大きい。結果として、評価者による目標設定の巧拙のばらつきが縮小し、評価運用の土台となる管理職層の共通認識が形成された。

本プロジェクトの特徴

【1】制度を改定せず、運用の質から着手した。一般的には、評価に対する不満が顕在化した企業では評価制度そのものの改定が検討されやすい。本案件では制度改定を行わず、評価者の意識と技術を変えることを選んだ。制度を使うのは評価者であり、同じ制度でも運用者が変われば結果は変わる。制度改定には相応の期間と社内負荷がかかるため、先に効果が出る領域から手をつけるという判断である。

【2】「心構え」と「技術」を分離せずに扱った。一般的には、評価者としての姿勢を説くマインド研修と、目標設定の書き方を教えるスキル研修は別プログラムとして提供されることが多い。本案件では両者を同一の研修内で接続した。姿勢が伴わない技術は形式的な記述の巧拙に終わり、技術が伴わない姿勢は空回りするためである。

【3】座学ではなく体験による定着を優先した。一般的には、限られた研修時間のなかでは網羅性を確保するために講義の比重が高くなりやすい。本案件では扱う論点を絞り込み、ワークの時間を確保した。研修の到達点を「知っている状態」ではなく「自分の言葉で部下に説明できる状態」に置いたためである。

【4】制度設計の実務知見を持つコンサルタントが登壇した。研修専業の講師ではなく、人事制度の設計と導入を数多く手がけてきた立場から、制度の構造と運用の現実の双方を踏まえて解説した。理屈の背景まで問う傾向のある技術者出身の管理職層に対しては、この裏づけが受容度を左右すると判断したためである。

担当コンサルタント: 平康 慶浩

最も判断を要したのは、評価制度そのものに手を入れないという点でした。不満の声が上がると制度を変えたくなりますが、この会社の管理職の方々は、専門性が高く、納得できれば自ら動かれる方たちでした。ですから制度ではなく、使い手である評価者に投資すべきだと考えました。ワーク中心にしたのも、教わるより気づいていただくほうが、この組織には合うと判断したからです。

よくあるご質問

Q1. 評価に対する不満が出ている場合、評価制度を改定すべきか、評価者研修から着手すべきか。

まず評価者研修から着手することを推奨する。評価への不満の多くは制度の設計そのものではなく、目標設定の粗さと期初の合意不足という運用面に起因するためである。制度改定には半年から1年程度を要するのに対し、評価者研修は数か月で運用品質に影響を与えられる。本事例でも制度改定を行わず、管理職向けの研修から着手した。

Q2. なぜ評価制度の改定ではなく、評価者研修を選んだのか。

制度を使いこなす主体が評価者であり、同じ制度でも運用者が変われば結果が変わるためである。制度改定は社内の合意形成と移行措置に大きな負荷がかかるうえ、運用者の力量が変わらなければ改定後も同じ不満が再生産される。本事例では、管理職の専門性が高く、理由に納得すれば自律的に行動が変わる組織特性を踏まえ、運用側への投資を先行させる判断を行った。

Q3. 評価者研修は座学中心とワーク中心のどちらが効果的か。

行動変容を目的とするならワーク中心が効果的である。座学は評価制度の目的や仕組みの理解には有効だが、目標設定の巧拙は自分で書いてみるまで自覚されにくい。他の受講者の目標と見比べ、指摘を受けることで、はじめて自身の記述の癖が可視化される。本事例では体系的な知識の整理を最小限に留め、目標設定のワークを研修の中核に据えた。

Q4. 上司と部下のあいだで評価がずれるのはなぜか。

期初の段階で期待水準が共有されていないことが最大の原因である。加えて、ハロー効果や中心化傾向、直近の出来事に判断が引きずられる傾向といった認知の偏りが、評価者側の見立てを歪める。これらは個人の努力ではなく構造の問題であるため、仕組みとして理解させる必要がある。本事例では、この力学の理解を研修の到達目標のひとつに設定した。

Q5. 管理職に目標設定を教える際、何から扱うべきか。

会社目標から個人目標へのブレイクダウンから扱うべきである。目標の書き方の技法だけを教えると、体裁は整うが事業成果とつながらない目標が量産される。個人目標が事業計画と部門目標の連鎖の末端にあることを理解して初めて、達成水準の設定に根拠が生まれる。本事例では、ブレイクダウンの整理を行ったうえで、難易度設定と期中の進捗確認のしかたまでを一連の流れとして扱った。

Q6. 技術者出身の管理職に対して、評価者研修を行う際の留意点は何か。

理屈の背景まで説明できる講師を立てることが要点である。技術者出身の管理職は、結論だけを提示されると納得せず、なぜその方法が有効なのかという構造の説明を求める傾向がある。研修専業の講師よりも、制度設計の実務経験を持つコンサルタントのほうが受容されやすい。本事例では、制度の構造と運用の現実の双方を踏まえた解説を行った。