心理的安全性に対するよくある誤解―優しさだけでは成長しない、厳しさだけでは続かない―

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心理的安全性は、なぜ誤解されがちなのか

近年、「心理的安全性」という言葉は急速に広まり、多くの企業で取り組みが進んでいます。一方で、現場からは次のような声を耳にすることも少なくありません。

  • 「意見を言いやすくなったが、成果は伸びていない」
  • 「注意や指摘がしづらくなった」
  • 「職場がぬるくなった」

これらは、心理的安全性そのものが問題なのではありません。
多くの場合、心理的安全性が「優しい職場」「叱られない環境」と誤解されたまま導入されていることが原因です。

心理的安全性の本来の目的は、居心地の良さを高めることではありません。
学習し、成長し続けるための職場環境をつくることこそが真の目的なのです。

本記事では、「優しさだけでは成長しない、厳しさだけでは続かない」という視点から、心理的安全性を整理し直していきます。


よくある誤解① 心理的安全性=「優しい職場」

心理的安全性について最も多い誤解は、「否定しない」「波風を立てない」「厳しいことを言わない」といった“優しさ”と混同してしまうことです。

確かに、安心感のある職場では人間関係の摩擦は減ります。
しかし、そこに仕事の要求水準の高さが伴っていない場合、別の問題が生じます。

  • 課題や違和感が表に出にくい
  • フィードバックが曖昧になる
  • 成果や成長に対する期待が弱まる

この状態は、居心地は良いものの、学習が起きにくい状態です。

心理的安全性とは、「何をしても許される」ことではありません。
必要な意見や指摘を、関係性を壊さずに交わせる状態が重要なのです。


よくある誤解② 成長には「厳しさ」が重要

一方で、真逆の誤解も存在します。

  • 「甘やかすから成長しない」
  • 「厳しく指導しなければ人は育たない」

確かに、成長にはストレッチのかかる目標や、高い期待が不可欠です。
しかし、周囲からのサポートや信頼関係がないまま厳しさだけを強めると、逆効果になります。

具体的には、次のような状態が生じやすくなります。

  • 失敗を恐れて挑戦しなくなる
  • 指示待ち・防衛的な行動が増える
  • 本音や改善提案が出なくなる

この状態では、短期的に成果が出ることはあっても、長期的には人も組織も疲弊してしまいます。
結果として、成長意欲の高い人ほど違和感を覚え、静かに離れていくという事態を招きかねません。

厳しさは成長のために必要ですが、安心して挑戦できる土台がなければ、持続しないのです。


心理的安全性をマトリクスで整理する

ここまでを踏まえて、心理的安全性を次の2軸で整理してみます。

  • 横軸:仕事の要求水準(低い ⇄ 高い)
  • 縦軸:周囲の人からのサポート(低い ⇄ 高い)

このマトリクスで考えると、職場の状態は大きく4つに分かれます。

周囲の人からの
サポート
高いぬるい組織 成長する組織
低い守りに入った組織疲弊する組織
低い高い
仕事の要求水準

守りに入った組織:要求水準が低く、サポートも少ない状態

最低限の仕事だけをこなし、余計なことを言わずに自分を守る状態です。
主体性や改善提案は生まれにくく、組織としての活力も低下します。

疲弊する組織:要求水準が高いが、サポートが少ない状態

成果への期待は高いものの、安心して挑戦できないため、不安や萎縮が生まれます。
短期的には成果が出ても、長続きしません。

ぬるい組織:要求水準が低く、サポートが高い状態

人間関係は良好で安心感はありますが、仕事の基準が低いため学習が起きにくい状態です。
一見「心理的安全性が高い」ように見えますが、成長を生む条件は十分ではありません。

成長する組織:要求水準が高く、サポートも高い状態

高い期待や挑戦がある中で、失敗や意見表明が許容され、学習につながります。
この状態こそが、心理的安全性が機能している職場です。

重要なのは、心理的安全性は「サポートがあるだけ」では成立しないということです。
高い要求水準とサポートがセットになって初めて、健全な対話や自発的な挑戦が促され、個人と組織の成長が実現されていくのです。


心理的安全性を「機能させる組織」にするために

心理的安全性は、雰囲気や個人の優しさだけで生まれるものではありません。

  • 何を期待しているのか
  • どこまでが許容範囲なのか
  • 成果や成長をどう評価するのか

こうした前提が明確であってこそ、安心して挑戦できます。

「優しさだけでは成長しない、厳しさだけでは続かない」

この両立を実現するためには、マネジメントの関わり方だけでなく、評価制度や目標設定など、組織としての設計が不可欠です。

心理的安全性とは、目的ではなく結果です。
学習と成長を促す仕組みの先に、自然と生まれるものなのです。


ここまで読んで、「考え方は理解できたが、現場の管理職が実践できるのだろうか」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。

実際、多くの企業で心理的安全性がうまく機能しない原因は、考え方や理念ではなく、現場での関わり方が人によってばらついてしまうことにあります。

特に、次のような場面では、本来必要な対話が避けられてしまいがちです。

  • 期待や基準の伝え方
  • できていない点の指摘の仕方
  • 低い評価や厳しいフィードバックをどう伝えるか

セレクションアンドバリエーションでは、心理的安全性を「空気」や「個人の資質」に委ねるのではなく、運用として再現できる状態をつくることを重視しています。

たとえば、

  • 高い期待や基準を、納得感をもって伝えるための対話設計
  • 指摘をしても、学習と前向きな行動につなげるフィードバックの型
  • 管理職同士で評価や期待水準をすり合わせるための共通言語づくり

こうした観点から、安心して挑戦でき、かつ成長を促す関わり方を身につけるための支援を行っています。

心理的安全性を高めたいが、現場のマネジメントに不安がある。
あるいは、優しさと厳しさのバランスに悩んでいる。

そのような場合は、まずは現在の組織の状態を、ぜひお気軽にお聞かせください。

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