転職が当たり前になってきた昨今、入社したばかり社員がすでに他の会社を見据えているということも増えてきています。
「どうせ辞める前提なら、まともに向き合うだけ損なのではないか」
そんな諦めや憤りを感じているマネジメント層も少なくありません。
しかし、この「退職前提」という流れを止めることはもはや不可能です。重要なのは、「辞めること」を前提とした上で、いかに自社での期間を密度の濃いものにし、組織と個人の双方にとってプラスの体験にできるかという一点に尽きます。
本記事では、今の時代に求められる「新入社員との向き合い方」についてご紹介します。離職を「損失」で終わらせず、組織の成長機会に変えるためのヒントを、人事コンサルタントの視点でお答えします。
辞めることを見据えた新入社員

日本人材ニュースによると「2025年4月に「dda」に登録した新社会人は前年比113%で、調査を開始した2011年比で約31倍となった。」そうです。
これは一つのプラットフォームのデータに過ぎませんが、他の主要な転職サービスを含めれば、新入社員の転職サイト登録が一般的であることは疑いようのない事実でしょう。
また、株式会社フロッグのレポートによると、第2新卒の求人件数は4年間で129.8%の増加傾向にあり、企業側の若手人材確保への意欲も高まっていることを示しています。
若い社員はいつでも転職を選べる状態で、現在の会社に勤めているということですね。
会社と社員の関係性変化

今の若手は雇ってくれている会社への恩義が無い、踏ん張る力が無い、と片付けてしまっては、新たな若手の確保は難しくなるでしょう。
このような状態に至る背景としてあるのは、終身雇用崩壊によってキャリアへの責任を自分が負わなければいけないという、若手社員の考える合理的な生存戦略です。
BUCAな時代において、ビジネス状況もめまぐるしく変わる中、会社が一生育ててくれる、食わしてくれるということはもはや信じられなくなってきています。会社が社員を雇用するという上下関係ではなく、会社と社員は互いに選びあう関係へと変わってきています。
他社に行っても活躍できる優秀な社員が、「ここで働きたい!」と思える環境を会社側は提供する必要があります。
社員が辞める理由

退職理由を考える際に用いられる理論として、ハーズバーグの二要因理論がよく知られています。不満足を招く「衛星要因」と満足を招く「動機付け要因」があります。
衛星要因には、給与や経営方針、人間関係などがあり、動機付け要因には、仕事の達成感や責任と権限、成長などが挙げられます。
先ほどの「変化に対応する」という若手社員の戦略を踏まえると、動機付け要因に焦点が当てられ、制御できないと感じるかもしれません。ですが、実際の退職の場面では、両方が関与します。改めていずれの要因についても、見返してみましょう。
ポジティブな要素をもちつつ辞めているかが重要
全く不満無く退職することはありません。給料や業務内容、将来への不安など、何かしらのネガティブ要素は必ずあります。
その一方で、ポジティブ要素の実感ももって送り出すことが重要です。
ポジティブ要素とは以下のようなものです。
- この会社で身につけたスキルがあったから転職できた
- この会社を離れていても、関わった人とはつながっていたい
- 自分は退職したけど、他の人には紹介したい
会社のファンであり続けながら退職となれば、若手社員の転職先と新たな取引ができたり、新たな入社希望者が生まれたりなど、会社として新たな利潤を享受することができます。
まずは仕組みから整える
では、どのようにしてポジティブ要素を感じてもらうかということですが、会社がまずできることとして、「仕組みを整える」ことがあります。
人事制度の見直し
仕事に対してきちんと評価し報いる、といった人事制度、評価制度を整えることで、仕事に対する方向性を最低限示すことができます。業務の遂行とフィードバックを往来しながら、会社業績に貢献していく、そして、その取り組みが評価されるという形になればベストです。
意外と見落としがちなのは、会社貢献に背く社員に対する対応です。こういった社員を放置すると、周りの頑張っている社員に対しても悪影響となります。評価や懲罰できちんと処遇することは重要なポイントです。
ハード・ソフトの環境整備
「衛星要因」の1つである職場環境などのハード面も最低限対応は必要でしょう。働きやすい環境、災害が起きにくい環境を作るのは会社としての役割です。
加えて、ソフト面での環境整備も対応が必要です。例えば、教育体制など、仕事をスムーズに行える手助けをしたり、時短勤務制度など、ワークライフバランスの観点での支援をしたり、などといったことも、会社のできる取り組みです。
最近では面白い制度を設けている会社もありますが、「衛星要因」は不満を招くものですので、「奇抜な制度のありなし」が退職の決め手になるということは少ないでしょう。
やっぱり関係性も重要
一般的な退職理由の中で大きな割合を占めるのが「人間関係」であり、やはり人との関係はポジティブ要素、ネガティブ要素のいずれにも関係してきます。
ネガティブだけでなくポジティブ要素も感じてもらうためは、経営層との関係と上司との関係で整理していきます。
経営層との関係
経営層と一般の社員が関わるかどうかは会社によって大きくことなりますが、共通することとして、トップからのメッセージ(経営方針・ビジョン)の伝達はあるでしょう。
経営層からのメッセージが浸透していない、共感していないとなると、衛星要因にも動機付け要因にも影響してきます。
自ら考え動く社員になることを求める場合でも、きちんと会社としての意思を示すことは大切です。年初には必ず、メッセージを伝えるようにしましょう。一般の従業員と対話の機会がもてたらベストです。
上司との関係
最も仕事で深くかかわる上司は、会社の印象を決めるといっても過言ではないでしょう。特に新入社員の担当となる上司は、これからの社会人人生の基準となります。
人事制度の見直しの中でも触れた、「業務の遂行とフィードバックを往来」の中で、上司が、褒めて認め、サポートするといったことができれば、会社そのものに好印象をもってもらえます。
人事制度の見直しと一緒に、管理職や評価者の研修も実施することにより、従業員の成長サイクルを加速することができ、結果的にエンゲージメントも高まります。
一方で、手塩にかけて育てた部下が退職となると、上司も疲弊を感じてしまうでしょう。ただこの育成の経験こそ、上司のキャリア資産となっています。今後の育成に役立てることもできますし、その部下から仕事でつかえる情報を提供してもらえるかもしれません。
長期的な視点で果実を得ていると考えるようにしましょう。
新たな採用戦略

ポジティブ要素ももったうえでの退職となる場合、また新たな採用機会が巡ってくることも近年増えてきています。その例として、会社の口コミサイトとアルムナイネットワークを挙げます。
会社の口コミサイト
良く知られているものとして、Openworkがありますね。こちら、自分の会社経験を記載すれば、他者の他の会社での経験を閲覧できるプラットフォームです。
もう予想がつくと思いますが、ネガティブ要素の割合が大きく退社する場合は、口コミに良いことを書くことはないでしょう。
転職が普通になった世の中で、選ばれる会社となるには、きちんと今いる社員に向き合うことは必須となっています。そして、この姿勢を次の求職者に見てもらえれば、新たな従業員獲得の機会となります。
アルムナイネットワーク
アルムナイとは英語で「卒業生」を表す言葉であり、ビジネスでは退職者や元社員を指します。一度退職した社員が出戻りで帰ってくることができれば、採用のコストを減らすことができます。また、他社で積んできた経験が自社に還元され、早期の活躍が期待できます。
実際に出戻りせずとも、外部の協力者(パートナー)としてプロジェクトに参画したり、知人を紹介してくれる「リファラル採用」の源泉になったりすることもあります。
退職してもまた働きたい、関わりたいと思ってもらえる会社であり続けることこそが、会社として取れる戦略です。
まとめ
「退職前提の新入社員にどう向き合うか」という問いに対し、考え方と取り組みを紹介してきました。
お読みいただいて分かったかと思いますが、会社が従業員に対して向き合う姿勢の本質はいつの時代になっても変わりません。
従業員が最大限成果を出せる環境を作ることができれば、たとえ退職に至ったとしても、巡り巡って新たな働き手が還ってきます。
まずは、会社の成果を上げるために仕組みから整えていきましょう。
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