役職定年は、かつて多くの日本企業で合理性のある制度として導入されてきました。
しかし、65歳までの雇用確保が前提となった今、そのまま維持すべき制度なのかは改めて問い直す必要があります。
役職定年ができた背景
役職定年は、大手企業を中心に、主に二つの流れの中で広がったとされています。
1つは、1980年代に55歳定年制から60歳定年制へ移行した際に、組織の新陳代謝を促し、人件費の増加を抑えるために導入されたケースです。
もう1つは、1990年代以降、社員の高齢化によって管理職ポストが詰まりやすくなったことを背景に、若手・中堅層の登用機会を確保する目的で導入されたケースです。
つまり役職定年は、「高齢者の能力が落ちるから」というより、ポストの循環と人件費管理を両立するための仕組みとして機能してきたといえます。
しかし、その前提が定年制度の改革(下記図)によって変わる可能性があります。今後、65歳定年への移行が想定される中、役職定年制度は維持しておくべきなのでしょうか。

現在の役職定年の状況
現在でも、役職定年を導入している企業は一定数存在します。
とくに大企業では依然として一般的な制度ですが、設定年齢としては55歳が中心です。
これは、従来の60歳定年を前提に「5年前に役職を外す」という考え方が定着してきた名残でもあります。
一方で、近年は見直しの動きも進んでいます。厚生労働省によれば、65歳以上定年企業(定年廃止含む)は32.6%まで増加しており、シニア人材の活用が強く求められる時代に入っています。この流れの中で、「55歳で一律に役職を外す」ことの合理性は、以前より弱まっているといえるでしょう。
役職定年を廃止すべき企業/廃止すべきでない企業
まず、役職定年を廃止しやすい企業は、年功的な処遇が強くなく、役割や成果で処遇を決めやすい企業です。
たとえば、成長業界・専門職比率の高い企業・管理職不足の企業では、50代後半以降も十分に戦力であり、一律に役職を外すことはむしろ損失になりやすいでしょう。
一方で、廃止を慎重に考えるべき企業もあります。
たとえば、年功的な賃金カーブが強い企業、ポストが限られた組織、業界全体が成熟・縮小していて昇進待ちが起こりやすい企業です。こうした企業では、役職定年をなくすことで、若手登用や人件費コントロールが難しくなる場合があります。
重要なのは、役職定年を「あるか・ないか」で考えることではありません。
本来問うべきは、50代後半以降の人材にどのような役割を期待し、どう処遇するかです。
これからの人事制度では、年齢で一律に線を引くのではなく、役割・成果・専門性に応じて設計することが、より重要になっていくでしょう。


