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トピックス

少子化時代に生き残りを実現したい学校法人のための人事戦略

 

セレクションアンドバリエーションではこれまで数多くの企業の人事制度設計に関わってきました。

人事制度を変えるきっかけは多種多様ですが、「ビジネスを取り巻く外部環境の変化と、自社の人事インフラとのギャップ」が問題化し、それを解消するために制度改定を検討されるケースがほとんどです。

我が国が少子高齢社会に突入して久しいですが、改善の兆しは見られません。

主に学生/生徒をターゲットとする学校法人は、今後ますますこのような環境変化の影響を受けるのではないか、と当社は考えております。

本ページでは、学校法人がどのような環境変化に直面し、その環境下でどのようにすれば勝ち残っていけるのかを人事戦略の観点からご紹介します。

 

 

AGENDA

1.学校法人を取り巻く環境変化

(1)購買者の動向

(2)市場内競争の動向

(3)供給者の動向

(4)新規参入者の動向

(5)代替品の動向

 

2.生き残りをかけた学校法人に求められる経営の方向性

 

3.生き残りを実現するための人事戦略

(1)学校法人の人事の特徴

(2)弊社が考える、経営方針を実現するための人事制度のあり方

(3)人事制度のスムーズな導入に向けて

(4)運用改善での対応

(5)事例紹介

 

4.まとめ

 

 

1.学校法人を取り巻く環境変化

学校法人を取り巻く環境は大きく変化しています。まずはその変化を整理して いきます。

外部環境分析では、5force(ファイブフォース)分析という枠組みで整理すると判りやすくなります。

5force分析は、マイケル・ポーターという経済学者が提唱したもので、企業に影響を与える要因として「購買者」「同業他社」「供給者」「新規参入者」「代替品」の5つに着目するという考え方です。

 

 

学校法人の人事戦略は欠如している危機意識の見直しから始めよう~学生に選ばれる学校になるために~

 

 

(1)購買者の動向

 

学校法人における購買者は、主に学生/生徒であり、人口減少・少子高齢化の影響を大きく受けます。

18歳人口は約105万人であり、1992年頃の182万人と比べると30年足らずでほぼ半減したと言えます。

この流れが止まることは予想されづらく、今後も更に減少することが見込まれます。

 

こうした学生/生徒数の減少傾向は、学校法人にどのような影響をもたらすのでしょうか?

 

<大学への影響>

大学進学率は、1992年時点の26%程度から53%程度まで上がっており、購買者=学生の数は47万人→56万人とむしろ増加しています。

しかし、大学進学率は2009年に50%を超えてからその成長率は鈍化しており、上げ止まりの様子も見せつつあります。そのため、今後は学生/生徒の減少の影響が顕著に出てくると思われます。

また、定数管理の厳格化、学費が高いことへの指摘、日本全体の所得が上向かないことなどから、従来のビジネスモデルでは経営状況は厳しくならざるを得ません。

 

 

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<大学以外の学校への影響>

一方で、大学以外の学校は、学生/生徒の減少の影響を大きく受けています。

その中で一番厳しい環境にあると言えるのは、短期大学でしょう。一時は13%程度あった進学率は、現在では4.6%と1/3まで低下。

1992年には22万人いた学生も4.8万人と1/5程度まで低下しており、非常に厳しい状況にあるといえます。

 

以上をまとめると、

  • 大学は「これから悪化に転じると思われが、これまで大きな問題が無かったために危機意識があまりないのが懸念点」
  • 短期大学や専門学校は「人口減少と進学忌避傾向があり、現在既にかなり厳しい状態」
  • 小中高校は「徐々に厳しくなってきており、今後も厳しい状況が続くことが予想される」

 

一方で、人生百年時代・大人の学びなおしへの興味・ニーズの高まりにより、リカレント教育に活路を見出す学校法人も増えつつあります。

こちらについては年齢問わず購買者を増やすことができることから、新しい市場としての期待値は高いでしょう。

しかし、こちらについても注意が必要です。

リカレント教育として注目されているのは「語学」「IT」「介護/健康/福祉」が主であり、比較的資格色が強いものだからです。

そのため、リカレント教育需要を掘り起こす際のライバルは「資格ビジネス」といえるかもしれません。

また、その他経営学や心理学などの社会・人文科学系の科目が挙げられますが、特定のジャンルに偏っているため、既に取り組みを進めている学校法人にキャッチアップするには多大な投資が必要となるでしょう。

 

 

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(2)市場内競争の動向

 

競争激化する市場の特徴に「市場成長率が低い状況」「競合他社が多数存在する」「数十%以上のシェアを持つような圧倒的な企業が存在しない」というものがあります。

市場内の競合他社が比較的多い状況で、学生/生徒数が伸びづらいことから、学校法人間の競争は、今後激化すると予想されます。

各校は少しずつ工夫を凝らして独自色を出そうとしていますが、「資格の取得支援」、「人間力を育てる」などの特徴を掲げる法人が多く、明確な差別化が図れていない状況といえます。

そのため、顧客(学生や保護者など)目線で見たときに、学校ごとのアピールポイントの違いが判りづらく、学校選択の意思決定に寄与しづらいという点が課題といえます。

 

 

(3)供給者の動向

 

学校法人における供給者は、設備供給業者・教材の供給業者や教職員があげられます。GIGAスクール構想への対応、英語教育・アクティブラーニングなど時代の変化に対応するためのコスト増は避けられません。

また、学校法人の多くが、給特法を参考とした「基本給の〇%をみなし残業代として支払う」という運用をしている中で、教員の残業代に関する訴訟は無視できない問題ではないでしょうか。

判決の結果、現在の運用が認められないとなると、大幅な人件費増が予想されます。

こうした諸問題に対応するため、サービスの取捨選択(例えば部活や補講を減らす)や、生産性向上施策(教員の主業務ではなく付随業務を可能な限り削減/省力化する等)が求められます。

 

※「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」

 

 

(4)新規参入者の動向

 

学校法人の業界に新規で参入してくる企業はあまり多くありません。上記の通り、経営環境が非常に厳しいためです。

ただ、大学運営が主であった学校法人が小中高を付属校として開校するなど、「高等学校業界」「中学校業界」などに限定すると新規参入はまだ存在するといえます。

 

 

(5)代替品の動向

 

学校法人の代替品はあまり存在しません。

学習塾は小中高の補講の補完的役割を果たすため、その点に限って言えば代替材であるともいえますが、完全に置き換わるということはあまりないでしょう。

大学についても、進学率が著しく下がるということはあまり考えられません。

しかし、留学生にとっては他国の大学が、リカレント教育受講者にとっては資格ビジネスなどが、代替品として挙げられる可能性があります。

そのため、「主に国内の学生/生徒を対象とした既存ビジネスに限ると代替品はあまり存在しない」が「対象を広げ、その他の収益源を狙おうとすると代替品が存在する」と言えます。

また、少し脱線しますが、昨今注目を集めているサービスに、オンラインサロンや動画配信チャンネルといったICTインフラを用いたものがあります。

こうしたサービスは、「実務に即効性がある(と思わせる)」「有名人が自身で集客している」「発信者/参加者が双方向コミュニケーションによりサービスを活性化させている」「参加しやすい価格設定や提供場所」といった点については非常に素晴らしい取り組みを行なっていると言えます。

学校法人は、こうした既存の枠組みにとらわれないビジネスモデルの新規参入を好機ととらえ、経営方針を再構築することで、ビジネスの勝機が見えてくると考えられます。

 

以上5つの要因をまとめると以下の形になります。

 

 

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2.学校法人に求められる経営の方向性

こうした外部環境を踏まえて、学校法人はどのように経営方針を考えればよいでしょうか。

検討するにあたり、まずは学校法人の主な収益源から考えていきます。

学校法人の収益源は主に学納金・補助金・寄付金・その他からなります。

 

<学納金>

学納金は、現状多くの学校法人で過半を占めている、非常に重視すべき項目ですが、少子高齢化・定員管理の厳格化などによって、増収は難しいと考えられます。

しかし、リカレント教育や留学生獲得に活路があるかもしれません。両者を実現するためのポイントは、サービス内容を充実させて学校の魅力を高め、広報していくことと言えるでしょう。

 

<補助金>

政府などからの補助金については、ウエイト自体は高くないものの、経営上は重要な存在と位置付けている学校法人が多いでしょう。

増加させるべきであるという世論はある一方で、政策の動向に左右されることが多く、継続的な増加は見込めません。

(総額は現状と変わりがなくとも、いわゆる上位校への重点配分はあり得ます)

また、外部環境変化によるものではありませんが、補助金支給要件(定員充足率など)から逸脱してしまうと補助金がカットされてしまうという点についてもケアが必要です。

そのため、日々進捗状況を把握しながら、着実に支給要件を満たすような業務コントロールが必要になってくるでしょう。

 

<寄付金>

寄付金については、欧米と比べると全体的に意識が低いとされており、実際の寄付金額もかなり見劣りします。そのため、伸びしろは大きいと言えます。

寄付があまり活発ではない理由の仮説として、寄付の意義が浸透していないこと、そもそも学校法人に対して寄付をするという発想が浸透していないことが挙げられます。

そのため、卒業生や財界等に対して継続的に働きかけを行っていくことが求められます。

 

<その他収益>

その他の収益については、学校法人ごとに異なります。

しかし、一般的にはここで大きな収益を見込んでいる学校はあまり多くないのが実態です。附属病院を持つ学校法人はかなり大きくなる一方、特に文系に特化した学校法人では殆ど無いと言っても良い水準です。

こうした状況を踏まえ、一部の学校法人では事業収入の増加を企図する流れも見られます。

収益拡大のポイントとして、市場のニーズを的確に捉えること、自学の保有する資源(特に知財)をどのように結びつけ、マネタイズするかということが挙げられそうです。

しかし、そのためには事業検討・事業開発や管理など、いわゆる一般企業でも求められる能力が必要となります。

業績に対してこだわりを持ってマネタイズできる人材というのは、学校法人の中ではあまりいないのが現実ではないでしょうか。

そもそも利益追求したいと考えている人材が入ってこず、そのような育成もなされていないのではないかと考えられます。

 

以上のとおり、収益を拡大していくための対応は大きく3つとなります。

  • 「時代の変化を機敏に捉えた企画・実行」
  • 「対外的に自学の魅力をアピールしていく広報」
  • 「教育品質の維持と向上」

 

一方で、経費については以下2つの対応が考えられます。

  • 「全学目線で要否を考え筋肉質な体制の構築」
  • 「既存業務をより改善して“学生/生徒から選ばれない理由”を無くす」

 

ここまでの整理を踏まえると、学校法人が外部環境に対応し、生存・発展を実現するためには、以下の3点がポイントになると考えられます。

 

 

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3.生き残りを実現するための人事戦略

(1)学校法人の人事の特徴

 

経営方針のあり方についてみてきましたが、実際に経営を支える学校法人の人事の仕組みや教職員にはどのような特徴があるのでしょうか。

学校法人の人事には、以下の特徴がみられます。

 

「年齢給の割合が非常に高く、同年代の個人間で給与差があまりない」

「能力や業績に対して公平な測定・評価を求める傾向が強い」

「非正規雇用者の割合が高い」

「労働組合の影響が強く、等級・評価・報酬制度で明確に序列をつける人事を敬遠する層が一定数存在」

 

上記以外にも教員・職員別に以下のような人事の特徴がありますが、それぞれ課題もあります。

 

<教員人事の特徴>

「スペシャリスト育成型」

教科間移動や教職員間異動がほぼないキャリアシステムです。

特定分野に特化した人材が育成され、分野を超えた全体視点や経営視点を欠く場合が多い傾向にあります。

 

「平らな階層構造」

ピラミッド型ではなく、校長を頂点として各教員がぶら下がっているという2層の組織構造となります。

2層構造のため、全体方針を個別の教員に漏れなく落とし込むことが難しく、個別の教育施策に反映させにくい特徴があります。

また、評価の段階では、個別の教員の行動を評価者である校長が個々の教員の行動を把握しきれず、的確な評価が難しく、教員の人事に対する納得感が低下しやすい傾向にあります。

 

「個別での目標設定とフィードバックの未整備」

教員が個別に目標を設定しても評価・報酬への反映が組織的に整備されていない場合が散見されます。

また、評価と報酬が連動していないので、意欲低下を招く恐れがあります。

 

<事務職員人事の特徴>

「ゼネラリスト育成型」

定期的な異動や部署間異動等があるキャリアシステムです。

定期異動により様々な部署や業務を担当することになり、全体視点をもった人材育成は可能ですが、専門性を伸ばしにくく前例踏襲に陥りやすい傾向にあります。

 

「厳格なピラミッド構造」

レベルに応じて複数階層に分かれた組織構造となります。

全体方針を階層ごとのレベルに応じた形で落としむことが可能ですが、評価の納得感を醸成するには業務目標を明確に設定する必要があることに注意です。

 

「主な評価基準が業務遂行力や調整力」

時代の変化を機敏に捉えた企画・実行力や広報能力など、外部環境の変化への対応力が今後新たに必要になります。

 

 

学校法人の人事戦略は欠如している危機意識の見直しから始めよう~学生に選ばれる学校になるために~

 

その他、人事ではありませんが学校法人の教員職員には以下の特徴が多く見られます。

「愛好精神・帰属意識が強い」

母校への就職意欲や出身者を採用する意欲がともに高く、愛校精神が強い傾向にあります。

「優しくまじめな人材が多い」

教育機関に就職しているということから、指導・育成意欲が高く、資格取得等自己啓発に関する目標を計画的に実行する傾向にあります。

「危機感が薄い」

従来の安定的な事業環境が長く続いたため、前例踏襲の意識が強く、経営層の危機感が教職員に浸透していない可能性があります。

 

 

(2)弊社が考える、経営方針を実現するための人事制度のあり方

 

先ほどもお話しした通り、少子化時代に生き残りを実現するための経営方針の達成には、時代の変化を機敏に捉えた企画・実行力、教育品質の向上に向けた取り組み、経営資源の重点配分が必要となります。

他方で、学校法人の教職員は「優しく真面目で、決められたことを確実に遂行することが得意である一方、保守的で差をつけることを敬遠する」傾向にあります。

経営方針の実現に向けて従来の教職員の意識や行動をどのように変えていけばいいのでしょうか。

そのカギを握るのが人事制度となります。

 

 

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人事制度を改定するにあたっては、「採用」「等級」「評価」「報酬」「教育」「退職」の6つの要素について、現状を踏まえながらあるべき方向性を検討することになります。

それぞれの要素の検討に先立ち、まずは「求める人材像」を明確に定義する必要があります。

求める人材像は、どのような人材を採用すべきか、採用した人材にどのような役割を担ってもらうのか、どのような基準で評価すべきかなど、上記6つの要素を検討するうえで重要な要素となります。

組織の現状を踏まえつつ、経営方針を実現できるよう前向きかつ慎重に検討しましょう。

 

 

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求める人材像を定義したのちに6つの要素について、主に以下の視点で検討することが考えられます。

 

「採用」

・コストを踏まえた採用計画の策定

・求める人材像を踏まえた採用基準の策定

 

「等級」

・ゼネラリストとスペシャリストを両立させる複線型の等級制度の構築

・求める人材像を踏まえ、行動を軸にした等級制度の構築

 

「評価」

・求める人物像を踏まえた評価項目及び評価基準の設定

・報酬との連動

 

「報酬」

・経費削減を実現しながらも教職員の意欲を向上させる報酬制度の構築

 

「教育」

・求める人材像から逆算した計画的な育成制度の実現

・特に等級や評価に連動

 

「退職」

・ミスマッチ教職員への早期退職制度の構築

 

 

(3)人事制度のスムーズな導入に向けて

 

制度を改定していく中で、検討チームのあり方や検討の進め方、意見の違いなどによってプロジェクトが思うように進まないことがあります。

そのような場合、以下の点に留意することで、スムーズな制度改定が実現できます。

 

 

<経営・人事・現場が一体となったプロジェクトチームを作る>

あくまでも全社プロジェクトであるという位置づけとし、各部署から関係者を集めて検討を実施します。

これにより、経営や人事など特定部門の独断を阻止し、作成段階から全社を巻き込んだ一体感を醸成できます。

 

 

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<制度改定の全体像から考える>

最初から各論に入ってしまうと相互調整が難しくなります。

まずは全体像を設計したうえで、各論について議論するようにしましょう。

全体像がはっきりしていると、各論における多少の意見の違いはオプションとして調整しやすくなります。

 

<あるべき姿と現在の姿を明確にする>

制度改定の全体像を設計するにあたり、まずは経営方針を実現するための人事制度をゼロベースで検討しながら、現在の人事制度や人員状況等を客観的に把握します。

両者のギャップを踏まえ、現状を維持する点・変えるべき点を明確にし、プロジェクトチーム全員で認識を共有しながら、コンセンサスをとっていくことが重要となります。

 

 

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<段階的な導入>

改定した人事制度を一気に導入しようとすると、機能不全を起こし、現場に大きな混乱が生じる恐れがあります。

段階的に導入していくことで、教職員に問題意識を徐々に浸透させ、人事制度に関するリテラシーを向上させることができます。

 

 

(4)運用改善での対応

 

人事制度を改定すると教職員に方針や覚悟を示すことができる一方、反対が多く改定できないことも多々見られます。

そのため、以下のような運用の変更を行うことも選択肢にいれるべきと思われます。

運用を変える場合でも、あくまで目的(経営方針達成に向けて人的成果をどう変えたいか)を達成するために、「現状運用されている制度のどこをどのように変えるべきか」という視点を持つことが肝要となります。

 

 

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(5)事例紹介

 

ここで、当社が実際にコンサルティングを手掛けた学校法人の事例を2つご紹介します。

 

<総合大学を経営する学校法人>

この法人が運営する大学は学生/生徒から人気が高く、現状経営は安定していますが、今後50年生き残れる大学への変革を目指して、プロジェクトが始まりました。

まず、上記経営方針を達成するためにどのような人材が求められるのかを検討しました。現状、まじめで優しく、総じて業務遂行力が高い人材が多い中で、「積極的な業務改善」、「外部環境を踏まえた企画・提案」ができる人材を求める人材像として定義しました。

次に、こうした人材への成長・育成を下支えする人事制度について主に以下の視点から提案しています。

 

「評価」

現状は「責任感」や「協調性」、「知識」、「判断力」など潜在的な能力に基づき等級が設定され、これらを基準として評価されてきました。潜在的な能力は表面的には判断しづらく、評価の納得性が損なわれます。

また、評価を人材育成に正確に反映させるのが困難になる恐れがあります。

今回のプロジェクトでは、「巻き込み・調整」や「学生ニーズの把握」、「アイデア検討」といった、能力を顕在化させた「行動」を評価基準に設定することで評価の納得性を高めました。

 

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「報酬」

現状は年齢給が給与の大半を占めていましたが、評価基準を能力から行動に変更した評価制度にあわせて、行動結果を給与に反映させる行動給の割合を増やしました。

これにより年功的な待遇が改められ、それぞれの教職員の「求める人材像に向けた行動を発揮する」ことを促せるようになりました。

 

 

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<中堅規模の女子高を運営する学校法人>

この法人は、独自の教育カリキュラムをもって他と差別化を図っていますが、今後激化が予想される市場内競争を勝ち抜くための強力な経営体制を構築したいという問題意識からプロジェクトが始まりました。

現状、明確な人事制度がなく、年功的な昇給やあいまいな評価が行われていたため、教職員間で能力や意欲に大きな差がありました。

現下の状況を打破し、市場競争を勝ち抜くには、「組織全体の能力・意欲を向上させて教職員一人一人の成長を促すことが必要だ」という結論に至りました。

こうした経営ニーズを受けて、主に以下の点に留意しながら制度化を進めました。

 

「等級」

等級の昇格ルールを設計し、従業員に明示しました。

また、昇格に関する意思決定プロセスの透明性を高めることで人事への不信感を払拭するとともに、昇格意欲を向上させました。

さらに、専門職・管理職といった職群ごとに求める行動水準を明確に打ち出すとともに、職群間の移行ルールを設計して個人のキャリアパスの選択肢を増やしました。

 

「報酬」

従来は年功的な報酬でしたが、評価により報酬差が生じるように改定することで、組織の活性化と意欲向上を図りました。

 

 

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4.まとめ

昨今の学校法人を取り巻く環境は厳しいものがあります。また、今後状況が改善するかどうかも見通せない状況です。

こうした状況下でも、人材こそが企業を成長させます。

そのための仕組みを見直すことが、環境変化に乗り遅れないための重要な取り組みであると当社は考えています。

今からでも行動に移すことが何よりも重要です。

より具体的な施策をセミナーでお伝えしております。また、皆様の状況に応じた個別のご相談も随時受け付けておりますので、気兼ねなくご連絡ください。

>>当ページについてのお問い合わせ、取材依頼、 具体的な戦略策定・制度改定のご相談は、こちらからお願い致します。

 
 

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セレクションアンドバリエーション株式会社 代表の平康慶浩(ひらやすよしひろ)による、日本経済新聞社サイトNIKKEI STYLE連載でも企業における人事戦略について言及しています。

 

 

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