ー正社員から再雇用までー 「求める人材像」を起点に描く、持続的成長を支える人事制度設計
設立1980年代
従業員140名
売上30億円超
提供サービス人事戦略策定・人事制度設計(正社員対象)・再雇用制度設計・評価者研修・被評価者研修
実施期間18ヶ月(2023年6月~2024年11月)
プロジェクトのきっかけ
本プロジェクトは、特に人事部を中心に「自社の実態に即した人事制度を再設計すべき」という認識が高まり、制度改定に向けた検討が本格的に始動しました。人事部メンバーは、既存の人事制度が社員の成長や納得感に結びついていない現状に課題感を持っており、経営戦略と人材育成をつなげる仕組みづくりの必要性を意識されていました。
こうした中で、クライアント企業様より弊社にご相談をいただいたのは、弊社が企画段階からご提示した「現行制度の強みを活かしつつ、今後の経営戦略を踏まえた改定方針」が高く評価されたためでした。単なる抜本的な刷新ではなく、既存の仕組みを尊重しながら改善を積み重ねる姿勢が、クライアント企業様の社風や現場感覚に合致していると感じていただきました。
目的
同社の定める中期経営計画では、「2030年に売上高50億円を目指す」という経営戦略のもと、持続的な成長と働きがいのある職場づくりの両立を目指していました。
そのために、まずは経営戦略を実現していくために社員に期待する要素として、「求める人材像」を明確化しました。そして、「求める人材像」に基づいて等級・評価・報酬制度を再設計し、社員の納得感と育成力を高める人事制度を構築しました。
課題
弊社に最初にお声掛けいただいた際の課題感としては、大きく以下4点がありました。
①制度設計者の不在
2012年に策定した人事制度を長らく運用してきたが、設計当時の人事部長は既に退職。
現在は社内に制度設計をリードできる人材がいない。
②制度の親会社依存
制度自体が親会社をベースに設計されており、同社の実態や成長戦略に十分対応していなかった。
③賞与制度の機能不全
人事制度設計当時の業績基準を前提に設計されたままで、年の業績拡大に伴い賞与水準が年々増加。年収に占める賞与比率が高すぎる実態となっていた。
評価制度や給与体系との整合性が取れていない問題も生じていた。
④評価制度の課題
4段階の評価段階(SS、2A、A、B)で運用を行っていたものの、分布配分や相対調整の運用に課題が残っていた。
社員からは「評価制度の目的や、自分たちに求められている役割が分かりにくい」との声が多く寄せられていた。
以上4点を踏まえ、人事部を中心に「自社の実態に即した人事制度を再設計すべき」という認識が高まり、制度改定プロジェクトが始動しました。
実際に構築した制度のポイント
等級・評価・報酬の3つの人事要素ごとに設計を進めました。それぞれのポイントは以下のとおりです。
【等級制度】
■等級数・等級定義の見直し
・改定前:基礎等級とマネジメント等級の大枠のみで、等級間の役割定義が曖昧でした。等級数が少なく、昇格モチベーションが持続しにくい仕組みでした。
・改定後:基礎・専門性・マネジメントの3区分を整備し、等級ごとの期待役割も明確化しました。等級数を増やすことで、キャリアの見通しが立てやすくなり、昇格意欲を高められる設計としました。
【評価制度】
■評価軸の見直し・評価と処遇との連動性整備
・改定前:知識・スキル評価、行動評価、成果評価の3つの評価軸を実施していました。網羅的な評価項目が設定されていた一方で、評価項目が多すぎることで、結局何を頑張ったら良いのか分かりづらくなっていました。また、3つの評価軸それぞれの評価結果にウエイトを乗じて総合評価結果を算出し、昇給・賞与に結び付けていくという、複雑な仕組みも問題となっていました。
・改定後:成果評価と行動評価の2軸に統合しました。行動評価は昇給へ、成果評価は賞与へ反映させることで、評価と処遇の連動を明確にしました。
■評価段階数の見直し
・改定前:4段階の評価段階(SS、2A、A、B)では、分布配分や相対調整の運用が難しくなっていました。
・改定後:評価段階は5段階とし、アルファベット表記もSS、S、2A、A、Bとすることで、分かりやすい基準を導入しました。また、絶対評価を基本とすることで、評価の納得性向上を目指しました。
■育成・対話の仕組みの導入
・改定前:評価面談中心で、日常的な育成支援やフォローが十分ではありませんでした。
・改定後:年3回の1on1を制度化し、評価面談とは別に育成・対話の機会を増やしました。社員の成長を後押しし、評価の納得感を高める仕組みとしました。
【報酬制度】
■賞与制度の改定
・改定前:人事制度設計当時の業績基準を前提にしており、支給水準は増加していたものの、評価制度や給与体系との整合性に課題がありました。
・改定後:賞与を「固定部分+業績連動部分」に切り分け、支給基準の透明性と納得感を高める仕組みに変更しました。
さらに、人事制度設計後は、制度の理解を深め、自分ごととして活用していくために被評価者研修および全3回の評価者研修も実施しました。
加えて、再雇用制度も設計しました。再雇用人材に対して経験や知識を活かし、継続的な活躍を期待するとともに、個々人の健康状態やライフスタイルに合わせ、多様な働き方を支援できるような仕組みを構築しました。
特筆すべき課題や解決策の特徴
人事制度設計にあたっては、等級・役職・評価・報酬を一体的に整理することで、社員が自らの役割やキャリアステップを理解しやすくなりました。あわせて、評価と処遇の連動を明確にしたことで、制度全体の納得感が向上しました。
また、制度設計後には評価者研修だけでなく被評価者研修も実施し、会社全体で新制度への理解を深めました。その結果、現場からは「自分に求められていることが分かるようになった」といった前向きな意見が寄せられています。
さらに、正社員向けの人事制度設計をベースに、再雇用制度の設計にも弊社が継続して携わりました。その結果、正社員と再雇用社員の制度の一貫性が担保され、60歳以前の活躍を前提としながら、60歳以降の人材に対しても期待役割を明示しつつ柔軟な働き方を認める仕組みが整いました。
正社員対象・再雇用社員対象の2つの新人事制度は、中長期的な運用を前提としており、今後も社員の声を継続的に反映しながら、制度の定着と改善を進めてまいります。今回の制度改革を通じて、組織全体の持続的な成長と経営戦略の実現を力強く後押ししていけると確信しています。